法治コック

「オラオラー! 味力(いい味の料理を作る力)の足りねえヘボコックはこの町から出ていけー! ケハハハハ!」

「ひ、ひいいー! やめてください! 小さいけれど大切な私の店なんです!」

「うるせー! この三流コックがあー!」

「やめてー! お父さんのお店を壊さないでー!」

「ああ~ん? なんだあ? このガキは? ソテーにしちまうぞ!」

「あ、ゆ、ゆうこー! やめてください、ゆうこだけは!」

「うるせー! こうしてやるぜー!」

「キャー!」

「刑法261条……器物損壊罪、及び刑法204条、傷害罪……」

「ああ~ん?」

「それが貴様らの罪状だ」

「なんだぁ貴様? 俺たち味竜会に逆らおうってのか?」

「坐れ……お前らに、本当の料理ってやつを教えてやるぜ」

「クソ生意気な野郎だ! もしマズい料理を持ってきたら、そんときはこのガキ、どうなるかわかってんだろうな!?」

「大将、厨房借りるぜ……」

「は、はい、あ、あんた、は……?」

「通りすがりの……コックだぜ……!」

「あ、兄貴、アイツの持ってるアレ……」

「はぁ~~ん? 六法全書ォ~? ケッ! かっこつけやがって!」

シュバッ ザンッ!

厨 房
開 廷

「第一審! 食材を裁くッ!」

「な、なぁにぃ!? アイツ、六法全書をまな板代わりに!?」

「サバは頭を落とし、内蔵を抜き、血を綺麗に洗い流す!」

「す、すごいっ! 大胆かつ、鮮やかな手付きで捌いていく!」

「目、目にもとまらねえ包丁捌きだ……」

「そして筒切り! 同時に薬味のしょうがも刻む!」

「なんて心地いいリズムだ……とん、とん、とん、とん……」

「あ、あの悪党どもが……なんておとなしく……」

「俺の『法』丁のリズムは、腹が減ってるヤツを静粛にさせるのさ。そして第二審! サバを煮付ける!」

「鍋に昆布としょうがを敷き、そこへさっき筒切りにしたサバを敷き詰めていく……そしてう、うわああー!」

「ど、どうした!」

「わ、わからねえ、わからねえが何か光の三角形みたいなものがヤツの手から!」

「あ、あれはっ!」

「この国の法は、民法、刑法、憲法の三法によって成り立っているが……それは煮物も同じ!煮物の三法、すなわち『酒』『みりん』『醤油』これを俺独自の黄金比で、調合し、そしてッ第三審! 隠し味!」

「そ、袖から! ヤツの袖から黄金が出てますぜ兄貴!」

「ば、馬鹿野郎、あれは黄金なんかじゃあねぇ~、あれは、あ、あれは!砂糖だぁ~~!」

「少量の砂糖は味をマイルドにし、同時に満腹中枢を刺激する効果を持つ辛さの中に少量の甘さ……これが俺の、情状酌量だ!」

「う、うまそうな匂いがぁ、理性と本能をかき混ぜやがるぅぅうう!」

「落し蓋をして煮詰め……完成……!真サバの煮付け、勝訴!」

「う、ううう……」

「も、もう駄目だ、俺は食うぜ! いただきむぁ~す!」

「う、うめぇえぇええ! 醤油の辛さが! 砂糖の甘さが! 磯の香りが! 身のしまったサバの歯ごたえが!う、ううう……ううう…」

「ど、どうした、てめぇ、なんで泣いてやがるんだ!」

「あ、兄貴も……」

「お、おおおお! 生まれてこの方涙なんぞ流したことのない俺が! うおおおおお!」

「それが貴様らの、良心の呵責だ……よくぞ改心した、飯決を下すッ!

最 終
審 飯

貴様らに情状酌量の余地、有りッッッ!」

「うおおおおお! もう悪いことはやめるッ! すまねええええ!」

「あのどうしようもない悪党どもが、涙を流して改心した!そ、そういえば聞いたことがある……研ぎ澄まされた『法』丁で食材を『裁』き、悪党を改心させる料理を作るさすらいの料理人のことを……
あ! あ、あんたはまさか! 伝説のっ『法治コック』!!?」

「ふっ……俺はただの、流れの料理人さ」

「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

「何、いいってことよ。昼の定食は好きだが、法に抵触するやつがゆるせなかっただけさ」

「せ、せめてお名前を!」

「名乗る名など、住民票に置き忘れてきたぜ!じゃあな!」

「法治コック……、ありがとう、ありがとう!」

「これにて、閉廷!」
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