どうやったらこんな高校生男子が育つんだ!!

スーッとはしない気がするが聞いてほしい。
…思い返すと自分の行動にイライラするけど。

仕事帰りの夕方。駅に向かう途中。
盲目らしい男性が白い杖で点字ブロックを辿りながら勢いよく歩いていた。
俺は見えてないのに確りした足取りで凄いなとか思いながら眺めてた。
そして、少し行ったところの信号。この時は赤になったばかりだった。
この信号は音が鳴る仕様。点字ブロックも続いている。

そこで急に男性の前に割り込んだ高校生らしい男子。当然、ぶつかる。
男性が軽く謝罪し、男子もボソリと謝罪はしたようだった。
しかし、俺はイラっとした。急に出てきて点字ブロックを塞ぐなよって。
でも、男子の前を見てみると母親と小さな子供がいた。
母親と手を繋いでるとはいえ、子供は点字ブロックに乗ってしまっていた。
このまま男性が進んでいたら子供に勢いよくぶつかってしまっていたと思う。
イラっとする行動だが、偶然にぶつかったのが男子でよかったと思った。

更に、この信号を渡った先の信号も無い短い横断歩道。
高校生は故意に盲目男性の前を歩いているようだった。
この時もビビリな俺は進行妨害すんなよと心の中で悪態をついていた。
そして横断歩道に辿り付いた時。男子が片腕を守るように広げた。
盲目の男性は再び男子にぶつかって、先程と同じように謝罪していた。
男子も先程と同じようにボソリと謝罪していた。

俺は何が起きたか分からなかったが、徐行しないで曲がってきたトラックで理解した。
男子はさっきから、盲目男性に嫌がらせをしていた訳ではなかったっと。
子供にぶつかりそうな盲目男性の前に割り込んだのも、前を歩いてるのも不器用な手助けだ。
結局、男子は駅の構内まで盲目男性の前を歩いて障害物とかから守ってた。

男性は進行妨害されてたと思ってしまったかもしれないが、違うから!
トラックの時は本当に危なかったし、男性が
男子の不器用な優しさに気づいてると良いなと思う。

ついでに、この件があってから。
同じような時間に男子を見かけるようにようになった。
同じ路線を使ってるみたいだし。
以下、他に目撃した事例。
駅の階段でヨタヨタと歩く高齢者がいれば後ろからゆっくり上ったり。
たぶん、転んでも支えられるように。
よろけた時に抱きとめようとしてたのを見かけた。大丈夫だったけど。
あと、ホームでハシャいでる小さな子供が落ちないようにハラハラしながら見てる。
その時も無言で自分の体を割り込ませて線路の方に行かせないようにしてたし。
親もそれで気づいて子供を叱ったり男子にお礼を言ったり。
危なくなる前にちゃんと見とけと思うが。


まあ、結局、何が言いたいかと言うと。


どうやったらこんな高校生男子が育つんだ!!
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脳梗塞になった

5年前に脳梗塞になった。
仕事が忙しく3か月間1日もや休みを取っていなかった。
元旦も出勤し、成人の日に3カ月ぶりの休みを取った、理由は会社で昇進試験がある日だからだ。
その試験は俺は外されていたんだ、その日に脳梗塞で救急車で運ばれたんだ。

自分でいうのもなんだが、若い頃の俺は幹部候補正だったんだ。
主任にも同期では俺1人が特例で昇進出来たし、社内で一目おかれる存在だった。
しかし大失敗をして会社に4000万円の損害を与えた。
それからというもの冷や飯を食う日々が続いていたんだ。
俺は挽回の為必死で働いていた、そして損害額よりも遥かに大きな利益を出しもした。
しかしいつの間にか同期には抜かれ、かつて面倒みた後輩が上司になる始末。
こうなると会社で自分の出世できる目はない、飼い殺し状態になる。
だが他の者より仕事をしている分(サービス残業だけど)出来るわけで、仕事は全部自分に回ってくる。
でも試験を受ける意気揚々な連中の前だし、その日まで出て仕事はしたくなかった。
そんな日に脳梗塞になって左半身が不全になった。

それ以降は会社は労災で訴えられるのがが怖いから、腫物を扱うような感じで俺に接してくる。
部署も移動になって事務処理ばかりだ、大学出てから15年間仕事しかしてない人生だったから生きる意味を無くしてたんだ。

そんな日々が数年過ぎたんだが、しばらくして部署が変わったんだ。
新しい上司は社長の親戚で駄目な男、責任のある部署につけたら出来なくて、ノイローゼになってしまい毎日うつ病の薬を飲んでいる。
だから責任のある部署は任せられない、しかし社長の親戚だから無下に出来ない。
そこでそいつの為に新しく部署を作ってやり、俺が面倒を見ろという事らしい。
毎日うつ病の薬を飲んでる奴が隣の席、しかも彼の承認がないと会社の決済が下りない。
気分の悪い日はその日は全ての案件を承認しない始末。
俺は我慢出来なかった、会社を退職した。

体が健康じゃない男、無職の男、妻は子供2人を連れて出て行った。
少し前になるがバイクは脳梗塞のリハビリを兼ねて買った、最初は原2のスクーター。
そしてその後、当時憧れだった2stレプリカを買った。
つまり最後に残ったのは2000万ローンの残っている家と2stレプリカだけになった。

なにもやる気のおきない日々、金が無いから毎日300gで100円のスパゲティを食べた。
しばらくして前の会社で世話になった下請け会社の社長から連絡があった。
A社で人材を探してるみたいなんですが、○○さんどうですか?
俺はやることも無いし、飯を食う為にA社に面接に行ったんだ。
面接の部長は俺と同じ歳でぜひ一緒に若い社員の教育をしてくれって頼まれた。
年収も前の会社の3割増しで雇ってもらえたんだ。
その部長は20歳の時スパーダに乗っていて、俺も20歳の時スパーダに乗っていた。
不思議と縁があった。

今、世間は高齢化で空洞状態だ。
団塊世代が辞めると中堅がいないから若い社員が入ってきても教える者がいない。
中堅だって若者に弱いところは見せたくないし、愚痴だってこぼせない。
その部長は若い社員から嫌われている、でも改善したいと考えているんだ。
若い社員は部長がバイクに乗ってることすら知らない、でも若い社員だってバイク乗りは結構いた。
俺は歳食ってるけど、新入社員だから若い人も話しやすかったと思う。
俺は今、その部長と若い社員の架け橋をやっている、春になったらみんなでツーリングに行く予定だ。

俺は思うんだ、決していい人生とは言えないけれど、一生懸命やってれば自分で納得出来るとせめて自分自身を嫌いにならない様に生きたい。

マトメール

昨日の夫。

いつもどちらかが先に仕事へ出るときは玄関まで見送るのが通例だけど、今日はバタバタして夫が玄関までこれなかったので玄関から行ってきます!と叫んで会社へ。
数分後

「いってらっしゃい!いってきます!気を付けて!気を付けます!」とメールが来た。

どっちかにしろw

友人が飼い始めた犬を見せてもらった

友人が飼い始めた犬を見せてもらったら、何かとても不思議な姿だった。
「これ何の種類?」
と聞いたら「ミックス。でもかっこいいよ」と言われた。
「お父さんがミニチュアダックスでお母さんがゴールデンレトリーバー」
その答えに「お父さんがんばった!」と拍手してしまった。

俺「ただいまー」

俺「ただいまー」
向井理「むかいりー」

盛れ!

嫁にプロポーズした時、後ろから抱きしめて「結婚してください」だった。今思うと恥ずかしいw
家帰ったら唐突にそのことを思い出してさ、「ただいま」って玄関を開けて、
「おかえりなさい」と迎えに来てくれた嫁を先に歩かせて、後ろから抱きしめて「愛してる」って言ったら
「あら!弟よ!見なさい!お父さんが…!お父さんがーーーー!」
「見ました、姉上!お父上は玄関で愛の言葉を!」
と後から帰ってきた娘と息子に騒がれた。

そのあと夕飯食べ終わった後に息子から冷静に
「年だからわからんけど、盛るとしたら俺たちが寝てからにしてね」
と言われた…。盛らないのに。
嫁さんの機嫌がすこぶるいいので明日の弁当が楽しみだ

羽田→成田間の交通手段

ずいぶん前の海外旅行板で、千歳から羽田経由で成田からイタリア行く人が、羽田→成田間の交通手段聞いて来て、夜中なのにスレ住人総動員で調べて教えてた。
結局チェックイン時間ギリギリになるし遅れた時に困るから、朝一で1便早いのに変更してもらえということになった。
そいつは無事早い便に変更出来て、成田から余裕の書き込み&スレ住人に盛大に見送られてイタリアへ飛び立ったが、約二時間後、機体トラブルで飛行機ごと引き返して来て、また成田に居たw

肝っ玉母ちゃん

昔住んでいた家の近所に、片目で肝っ玉母ちゃんと呼ばれてた野良猫がいた。
うちの庭にもよく来ていたが、ある日生後一ヵ月ほどの子猫を玄関前に連れてきて、そのままおいてった。
仕方ないので子猫は収容したんだが、翌朝、玄関の階段下にトカゲの贈り物が。
家族で「養育費じゃないの~w」と言っていたが、それから肝っ玉母ちゃんを見なくなった。

後で近所のおばちゃんから、そこの家の庭の隅で死んでいたと聞いた。
病死らしい。
死んでたのは、トカゲの贈り物があった翌日だったんだよ。

ねこって、意外と考えてるよな。

ムジナ

田舎が茨城なんだけど、自分が子供の頃は夜になると街灯もなくて真っ暗だった。
都心に住んでた自分にとっては、恐い所って印象しかない。

そこの家から海まで歩いていけるんだけど、ルートがふたつあって、ひとつは田んぼの横の道、もうひとつは小さな山の雑木林を行く道。
雑木林の道はムジナが出るから、ひとりで歩いちゃいけないって言われてた。

ムジナってなあにって聞いても、そりゃムジナはムジナだわって答えしかしてくれない。
ただ、ムジナは人を騙すって言うのは聞いていた。

882 : 本当にあった怖い名無し[sage] : 投稿日:2013/01/03 09:02:49 ID:iTj60m5w0
伯父さんって人は怠け者で、呑んだくれで毎日のように、家から2km位の所にあるスナックに呑みに行ってたらしい。

夜遅くなっても( 10時とかね)、伯父さんが帰って来ない時があって、そういう時は帰り道の何処かで爆睡してたらしい。

長男が自転車で伯父さんを探しながら、スナックへ向かう。
道の端っこで寝てる伯父さんを回収して帰る。
時々、近所の人が回収してきてくれることもあったそうだ。

ある日、いつものように長男出動したのはいいけど、伯父さんは何処にもいなくて、とうとうスナックまで辿り着いてしまった。

883 : 本当にあった怖い名無し[sage] : 投稿日:2013/01/03 09:09:26 ID:iTj60m5w0
スナックのママが言うには、7時頃には店を出た。
長男は取り敢えず駐在所に寄って、協力してもらうことにした。

駐在所だけでは人手が足りないという事で、市の警察にも協力依頼して大騒ぎになった。

伯父さんの家のある町の自警団も出動して、田んぼにはまっていないか、雑木林の道の何処かで寝ていないかと探し回ったらしい。

この頃には、みんなムジナが出たって確信してたんだと。

夜が明ける頃、伯父さんは見つかった。
雑木林の道から250m位外れた所。

誰も行かないので、道すらないような所に古井戸がある。知らない人の方が多いその古井戸が、いつまで使われていたのかも定かではない。

884 : 本当にあった怖い名無し[sage] : 投稿日:2013/01/03 09:25:01 ID:iTj60m5w0
伯父さんはその枯れた古井戸に落ちて死んでいた。

雑木林のある山はスナックから来ると、家を通り越して行く事になる。
古井戸への道はないし、真っ暗闇の中、辿り着くのは不可能だ。
何故伯父さんがそこへ行ったのか見当が付かない。

ムジナ説は確実となった。

伯父さんの死因は、古井戸の中に発生したガスによる中毒死で、怪我はしていなかった。
顔は土気色に変わり、身体の至る所に、ヒルがへばりついていたそうだ。

長男が三歳になったばかりの春に再婚した

かれこれ12年前。
私は、長男が三歳になったばかりの春に再婚した。

入籍する前に挨拶に行く予定だったが、お義母さんが突然訪問してきて「孫になる子に会ってみたい」と言われ、私も息子も初めてお義母さんと顔合わせ。

幼い長男が庭の脇で遊んでいたので、近寄り、連れ子と初めて会ったお義母さん。

「こんにちは」と言うと「こんにちは!」と返し、色々と話し掛けられてニコニコの息子。

室内に入り、話をしている間中、庭の端っこでゴソゴソと遊んでる息子を窓からチラ見。

「何してるんだろうねw」

と終始和やかに。

お義母さんが「孫にも会えたし、そろそろ帰るわ」と家を出た時、長男が駆け寄り、こそこそ話しながらお義母さんに何かを渡してた。

「ちょ!バッタか何かじゃ?!」と思ったら、お義母さんが嬉しそうに
「おばあちゃんの宝物にするね」と抱っこしてくれた。

「四つ葉のクローバーをくれたんだよ。やっと見つけたんだよって。一生懸命探してくれてたのね。かわいい孫で嬉しいわ」

と行って、帰って行った。

お義母さんは押し葉にして、栞にして未だに大事にしてくれてる。

そんな長男は今、憎ったらしい中学生なんだかw

痴女退治

満員の電車に乗ってると隣の子がずっともじもじてるから、痴漢か?とちらっとみたら男が女に痴漢されてた。
痴女?そういうプレイ!?とヒヤヒヤしたのが第一の修羅場。
でも男の方の表情がなんかおかしく、目が合うと涙目でこっちを見るので痴漢だと確信。
女に出来るだけ近寄って、さわさわしている手の甲を思いっきりつねってやった。
イタッて小さい悲鳴が聞こえたあとに、急になにするんですか!と大声で叫ばれ、しかもその女がわりかし美人だったもんで、こっちが悪者っぽい空気になったのが第二の修羅場。

痴女「手をつねるなんて酷いじゃないですか!」
(周りの人達からの白い目が向けられる)
私「確かに手はつねりました、でも私痴漢してる人の手をつねったんですけど」
男「痴漢されました…(女の子みたいにしゃくりあげながら泣いてた)」
男の人がカミングアウトするのはとても勇気のいる行動だったと思う。
女は顔を真っ赤にして震えてて、何より否定しなかったんで真実味があった。

電車が止まってドアが開いた瞬間に逃げ出そうとした女の足を、ドア際にいた男の人が引っ掛けてたw
駅員にそのまま渡すも、こけてタイツが伝線し涙目の女と泣きじゃくる男じゃやっぱり女に分があるみたいだった。
半信半疑の駅員に被害者の男と、もう一人の目撃者の男(女をこかした人)とで抗議した。
目撃者の男はプレイだと思ってたらしい。
女は結局色々と自爆してドナドナされていった。(欲求不満だとか、前から可愛いと思ってたとか)
被害者の男は高校生くらいでかわいそうだった。

私は目撃者の男とそのまま意気投合し、なぜか付き合うことになった。
そして今月結婚した。

バカだと思われる節がある

セールスの電話があって子供が出た。お母さんに変わってと言ってるよ、と俺に渡した(うちは父子家庭)。

「お忙しいところ恐れ入ります。○○化粧品と申しますが、奥様ご在宅でしょうか?」

「あ、うちは妻はおりません」

「何時頃お帰りでしょうか?」

「いえ、恥ずかしながら父子家庭なのもので、いないのです」

「そうですか、本日は何時頃お帰りでしょうか?」

「ですから、父子家庭ですので、妻というものがいないのです」

「・・・明日はいらっしゃいますか?」

バカなのか?バカなのか?

夫はバリバリの理系の人

先日ニュースになっていた

「生まれ変わっても今の配偶者と結婚したいか?」

に触発されて、夫に聞いてみた

夫「そうだな~、君と一緒だったら、何回人生をやり直しても、うまくやっていけるだろう」

夫はバリバリの理系の人なので、質問を馬鹿にされるか、それともはぐらかされるかだと思っていたのに、予想外w

中で魔女が暴れておるんじゃ。

リビングで弟と一緒にハウルを見ていて、ジュースをズボンに溢したので
「イヤアアア、見ないでええ」といいながらズボンを脱ぐと(私は24才、似ている有名人はサンドイッチマンの金色の方)
弟は「クワッ、こ、これが噂の見せる暴力ッ」
と大袈裟に苦しむ真似をして、なぜかすごい勢いで足を滑らせテーブルに頭をぶつけ、新年早々病院に運ばれたこと。

弟は無事だったが母は情けないと泣き、父にはお年玉を没収された。

真珠のネックレス

朝、妻が夫に言った。「バレンタインデーに真珠のネックレスをもらった夢を見たわ。どうい うことだと思う?」
「今夜、分かるよ」と、夫。 その日の夕方、夫は帰宅すると、小さな包みを妻に渡した。
大喜びで開けると、中には一冊の本----「夢解釈」

ノストラダムス

ノストラダムス「貴様らに分かるか?黒歴史ノートを世界レベルで詠まれた揚句、ただの厨二文章を真面目に考察され、あまつさえ世界を滅ぼす悪人のような扱いを受ける人間の気持ちが」

厨二製薬の提供でお送り致します

「お前何処から来た?俺はヴェン。ヴェン・ザ・ブロック」

「この聖ロガン、喇叭の紋章にかけて誓おう」

「私は"速眼"のルル…貴方の動き、止まって見えるわ」

「こちらパブロン。状況は聞いている」

「エスタックの蹴りを舐めるな!」

「バファリンはあんた達に半分だけ優しさをあげる。後の半分は死よ」

山祭り

久しぶりに休みが取れた。たった2日だけど、携帯で探される事もたぶんないだろう。
ボーナスも出た事だし、母に何か旨いものでも食わせてやろう。そう思って京都・貴船の旅館へ電話を掛けてみた。川床のシーズン中だが、平日だったから宿が取れた。

母に連絡を取ると大喜びで、鞍馬も歩いてみたいと言う。俺に異存はなかった。
京阪出町柳から叡山電鉄鞍馬駅まで約30分。その間に景色は碁盤の目のような街中から里山を過ぎ、一気に山の中へと変化する。また、鞍馬から山越えで貴船へ抜けるコースは、履き慣れた靴があればファミリーでも2時間前後で歩く事が出来るし、日帰りなら逆に、貴船から鞍馬へ抜け、鞍馬温泉を使って帰る手もある。

その日もさわやかな好天だった。荷物を持って歩くのも面倒なので、宿に頼んで預かってもらい、それから鞍馬山へ行った。堂々たる山門を潜った瞬間、いきなり強い風が吹き、俺を目指して枯葉がザバザバ降って来る。落葉の季節ではないのだが、母とくれば必ずこういう目に遭う。天狗の散華だ、と母は言う。迷惑な事だ。途中からロープウェイもあるが、母は歩く方を好むので、ところどころ急な坂のある参道を歩いて本殿を目指す。

由岐神社を過ぎると、先々の大木の中程の高さの枝が、微妙にたわむ。毎度の事だが。
鞍馬寺金堂でお参りした後、奥の院へ向かって木の根道を歩く。
魔王殿の前で、一人の小柄で上品な感じの老人が、良い声で謡っていた。

“…花咲かば、告げんと言ひし山里の、使ひは来たり馬に鞍。鞍馬の山のうず桜…”
言霊が周囲の木立に広がって行くようで、思わず足を止め、聞き惚れた。
最後の一声が余韻を残して空に消えた時、同じように立ち止まっていた人たちの間から、溜め息と拍手が湧き起こる。老人はにっこり笑って、大杉権現の方へ立ち去った。

鞍馬山を下り、貴船川に沿って歩く。真夏の昼日中だと言うのに、空気がひんやりして気持ちがいい。流れの上には幾つもの川床。週末は人で溢れているのだろうが、今日はそうでもない。少し離れると、清冽な流れの中、カワガラスが小魚を追って水を潜り、アオサギがじっと獲物を待つ。もう備えの出来たススキが揺れる上を、トンボたちが飛び回る。

貴船神社へお参りに行く人は多いが、奥宮へ参る人は少ない。その静けさを楽しみながら、奥宮の船形石の横の小さな社に手を合わせる。弟たちも連れて来てやれればよかったが、何分にも平日の急な事。学生時分ならともかく、社会人がそうそう手前、勝手な事をする訳にはいかない。母とそんな話をしながら振り返ると、さっき魔王殿の前で謡っていた老人がこっちへ歩いて来るところだった。軽く会釈すると、向こうもにこっと笑って片手を挙げる。

「先程は、良いものを聞かせて頂いて、ありがとうございました」
「いやいや、お恥ずかしい」老人は首を横に振り、俺と母を見やりながら
「親子旅ですか、よろしいなぁ。ええ日にここへ来はった。今日は“山祭り”や」
「まあ、お祭りがあるんですか」祭りと聞いて、母の気持ちが弾むのがわかる。
老人が教えてくれる。
「今晩、川床の灯りが消えた時分から、この先の方でありますねん。“山祭り”は時が合わなんだら成りませんし、ほんまの夜祭りやから、知らん人の方が多いんや。もし、行かはるんやったら、浴衣着て行きはった方がよろし。その方が、踊りの中へも入りやすいよって」

母は既に行きたくてワクワクしている。一時、『盆踊り命』だった人だから。
ま、いいか。俺は盆踊りは嫌いだが、仕方ない。付き合うか。

川筋の道沿いに、黄桃のような丸い灯りが、ぽつりぽつりと点いている。俺たちの他に、歩いている人はほとんどない。
奥宮へ近づくにつれ、笛の音がどこからともなく風に乗って流れて来た。山祭りはどうやら、思っていた盆踊りのようなものとは、全然違うものらしい。
奥貴船橋の袂をくっと左へ折れ、山の中へ入る細い道をたどると、笛の音はますますはっきり聞こえる。曲目はわからないが、ゆったりとしたメロディを、複数本の笛で吹いているようだ。

やがて、木立の間からたくさんの白い提灯と、その灯りが見えて来た。そこは体育館程度の広さの空き地になっていて、笛の音に合わせて数十人の人たちが踊っていた。
衣装は白地に紺色の流水模様の浴衣。女は紅の帯、男は黒字に金の鱗模様の帯。
踊るというより、舞うと言った方がいいような優美な動きで、普通の踊りの時のような賑わしさや、テンポあるいはノリは全く感じられない。
俺たちより先に来て、これを眺めていた隣の人がいきなり駆け出し、踊りの輪の中へ入って中の人と手を取り合った。知り合いがいたらしい。
前の方から、あの老人が笑みを浮かべながら、静かに俺たち親子に近づいて来た。

「ああ、来はりましたんやな」
「こんばんは。不思議なお祭りですね」
老人は不思議な言葉を口にした。
「あの中に、逢いたい人がいたはりますやろ」
逢いたい人?訳がわからず、ぽかんとする俺。
母が突然駆け出した。
「母さん!?」

伸ばした手の先に、よく知ってる人がいた。
実家にいる頃いつも見ていた人。写真立ての中で笑っている、俺と面差しのよく似た青年。俺が2歳の時亡くなった父だ。
まっしぐらに父に向かって進む母を、踊り手たちは空気のようにするりとかわし、何事もなかったかのように踊り続ける。
一足ごとに母の時間が逆戻りする。わずか3年余りの妻としての日々と、その何倍もの母としての時間。今、父の手を取りながら、母は堰を切ったようにしゃべり続け、父は黙って微笑みながら、時折相槌を打っている。二人の間に涙はない。何を話しているか、俺には聞こえないが、きっと言葉で時間を溶かしているのだろう。

時を越え、両親は恋人同士に戻っている。初めて見る両親の姿。ああ、父はあんな風に笑う人だったのか。母はあんな風にはにかむ人だったのか。これだけの歳月を隔て、まだ惹かれ合う二人に、思わず胸が熱くなる。
父に誘われ、母が踊りに加わる。なかなか上手い。本当に楽しそうに踊っている。
俺の頭の中で太棹が鳴り、太夫の声が響く。
“…おのが妻恋、やさしやすしや。あちへ飛びつれ、こちへ飛びつれ、あちやこち風、ひたひたひた。羽と羽とを合わせの袖の、染めた模様を花かとて…”両親の番舞をぼーっと眺めていたら、ふと俺の事を思い出したらしい母が、父の手を引いてこっちへやって来た。ほぼ初対面の人に等しい父親に、どう挨拶すべきか。

戸惑って言葉の出ない俺を、おっとりとした弟と雰囲気の良く似た父は、物も言わずに抱きしめた。俺よりずいぶんほっそりしているけれど、強く、温かい身体。父親ってこんなにしっかりした存在感があるのか。
「大きくなった…」万感の思いのこもった父の言葉。
気持ちが胸で詰まって言葉にならない。ようやく絞り出せた言葉は「父さん…」
「うん」
優しい返事が返って来た。もう限界だった。俺は子供のように声を放って泣いた。

母の事を笑えない。気が付けば、俺は夢中で父に、友人の事、仕事の事を一生懸命話していた。今までは、そんな事は自分の事だから、他人に話してもわかるまいと思い込み、学校での出来事さえ、必要な事以外は母に話さなかったのに。
父の静かな返事や一言が嬉しかった。子供が親に日々の出来事を全部話したがる気持ちが、初めてわかったような気がする。
俺の話が一段付いた時、父は少し寂しそうな顔をした。

「ごめん。もっと一緒にいたいけど、そろそろ時間みたいなんだ」
時は歩みを止めてくれなかった。でも、嫌だと駄々をこねたところで詮無い事。
大事な人に心配をかけるだけ。ああ、わかっている。笑って見送ろう。
「口惜しいよ、おまえたちの力になってやれなくて…」
「大丈夫、任せろよ。俺がいる。」
長男だもの。俺は親指を立て、父に向かって、偉そうに大見得を切った。
安心したように頷く父に、母がとても優しい眼差しを向け、父が最上級の笑顔を返す。
「…じゃあ、そろそろ行くよ」父は、踊りの輪の方を向いた。

「父さん」呼びかけずにはいられなかった。
父が振り返る。
「俺、二人の子供で良かった」本当に、そう思った。
父は嬉しそうに笑い、そのまま煙のようにすうっと姿を消した。
母はしばらく無言で父が姿を消した辺りを見つめていたが、やがて諦めたように首を振り、「帰りましょう」と俺を促した。

翌朝、まだ眠っている母を部屋に置いて、奥貴船橋の袂まで行って見た。
昨夜の、橋の袂をくっと左へ折れ、山の中へ入る細い道は、やっぱりなかった。
あの老人が言っていた。“山祭り”は、時が合わねば成らないのだと。
それは俺たち親子が見た幻だったかもしれない。
でも、逢いたい人に会え、伝えたい事を伝えられた。幸せな旅だった。

金は働いて自分で稼げ

昔、風呂に入っているときによくニートの兄貴に財布からお札を抜かれていたので、ある日、財布に札を入れずに、「金は働いて自分で稼げ」と書いて入れておいた。
風呂から出たら、兄貴が鬼の形相で、「俺を疑いやがってよぉぉぉぉ」とつかみかかってきた。

偽りの神が宿りし呪念傀儡

うちの祖母が亡くなる直前の話。
祖母は介護が必要で母が介護していたのだけど、介護って相当疲れるらしく、だんだん母の方がノイローゼみたいになった。

ある日、母が珍しくニコニコしながら帰ってきた。
祖母におみやげと言って人形を買ってきた。
母が言うには神様が宿る人形らしいが、私はそれを見て気味が悪い人形だと思った。
それでも母の機嫌が良いので放っておいた。

その日から祖母が夜中になると「ヒーッ、ヒーッ」と苦しそうな声を出すようになりその度、母が起きて看病していた。

ある日、夜中にまた「ヒーッ、ヒーッ」と祖母の苦しそうな声が聞こえ、祖母の部屋を覗いて見ると祖母の隣で、母が、例の人形の首を絞めてた。

それから1ヶ月くらいで祖母は亡くなった。
母は今、精神病院にいる。

エクソシストな奥様

夜中、ふと目が覚めたら旦那が私の頭をよしよししてくれていたってのがあったけど、私にも同じことしてくれた♪

ナデナデ中、眠気と闘いがんばってにっこりしてみたが、

白目を剥いてにっこりしたらしく、その顔が旦那のトラウマとなり、その後、ナデナデをリクエストしても、二度と寝てるときのナデナデはしてくれませんorz

正月の餅詰まらせて死ぬニュース見る度に

うちの祖父さんと婆さんは正月の餅詰まらせて死ぬニュース見る度に
「うめえもん食ってしぬたぁ幸せだべ」
「んだ、わしらも詰まらせて死ぬべ」

とか言いつつ毎年雑煮食ってるのに全然死ぬ気配がない(´・ω・`)

そうだ・・・これが『異能者の無意識領域に棲む大いなる意志の繋がり』だ・・・

どうでもいいけど。
泥酔して、記憶をなくした朝、ひどい渇きを覚えて目を覚ましたんだ。
冷蔵庫からパックのお茶を取り出し、流し込むように飲んで少し落ち着いてから、おもむろに携帯をみたんだ。2ch開いて、いつも通りオカ板覗いて、適当なスレに適当なレスをしようとしたらさ、なんか変なんだ。

変換候補の文字がなんだかおかしい。
『世界を』だとか、『粛正』だとか、『レコンキスタ』だとか、なんだか電波な感じの言葉が出て来る出て来る。明らかに俺が普段使わないような文字達。
嫌な予感がして、メールの送信履歴を見たんだ。やめときゃよかった。
母と、こんなメールのやり取りが交わされていました。

23:12 俺『母よ。米がない』

23:42 母『来週でいいですか?私も忙しい』

23:44 俺『飢えてしまう。コロスキか?』

00:01 母『バイト代出たばかりでしょう。少し我慢して下さい。』

00:02 俺『裏切り者め。薄情者め。憎しみが噴き出る』

00:31 母『酔っ払ってるの?早く寝なさい。お米は来週、少しだけどおこづかいと一緒に送ります。』

00:34 俺『寝れん。寝れぬぞ我は激しく憤慨している噴き』

00:47 母『明日早いので寝ます』

00:50 俺『まるでゴミのように打ち捨てられた。今しがたまでここにあった安らぎは残酷にも土足で侵略されたのだ』

母、返事なし

01:20 俺『沈黙、それが答えか。悲しみに打ち奮えし我が魂の慟哭が貴様には聞こえぬと言うのだな』

01:36 母『お話なら明日お昼休みに聞きます。電話下さい。』

01:39 俺『我をこの世に召喚せし契約者よ、今その契約に従い貴様に命ずる米食わせ。』

02:02 母『馬鹿な事ばかり言ってないで早く寝なさい。お前明日仕事でしょ』

02:04 俺『世迷い言と言うか。我が警告を世迷路迷い言というのだな。』

母、返事なし

02:30 俺『愚かなる衆生よ、この世界を暗澹たらしめたる立ち込める雲よ、我はこの世に光りを取り戻すため、ここに名乗り出る一発の銃声なり。失われた楽土を取り戻さんとすレコンキスタの志なり
我はこの雲を打ち払う。一切の曇りなき青空市。これは粛正なり、あめーん』

あめーんて。。

そして母からのこんなメールでクライマックス。

東京はどうですか?
寂しくなったらいつでも帰ってきなさい。
変な事件事故には気をつけてね
おかしな人についていったりしてはだめです。
お母さんはお前が元気で帰ってくる事を祈っております。
お米はもう少し待ってね
出来るだけ早く送るから。
おやすみなさい

これに対する俺の返事。『ポウッ』
もうすぐ母は昼休み。生まれて来てごめんなさい。

奈良の鹿はよく訓練された鹿だ!

奈良の鹿はよく訓練された鹿だ!
鹿せんべいを売っている店には突撃しないのに、せんべいもった観光客には包囲突撃を行ってくる……!

捨てる神あれば

妖怪人間ベムの
「早く人間になりた~い」
という番宣とセットで、ジョジョの奇妙な冒険の
「俺は人間をやめるぞジョジョオオ~ッ!!」
という番宣を流すアニマックスは、なかなか悪趣味だと思う。

東京駅の女の子

さっき東京駅のホームで4歳くらいの女の子

子「バイバイ!!バーイバーイ!!バイバーーーーーイ!」
母「ほら、電車出るわよ 危ないわよ」
子「バイバイするの!バイバーーーーイ
さようならー!サヨーーーーナラーーーー」

出発した電車の車掌さんがニコニコしながら手振り返してて和んだ。
東京のJRって冷たい印象だったのに、女の子はその後も来る電車去る電車向こうのホームの電車、全てに別れを告げていた。

マガガミさん

うちの母方の婆ちゃん家がある村での話。
申し訳ないが俺自身にも真相?的なものはわからないから、すっきりしないし、オチみたいなもんはない。

本題に入るけど、婆ちゃん家の村には山があるんだけど、その山の中に凄いキレイな緑色の池がある。限りなく青に近い緑色ってゆうか、透明気味なパステルカラーつうか、とにかくめちゃくちゃキレイなんだけど、そこには近づくなって村の子どもは言われてた。
なんでか聞いても、答えはお決まりの「子どもは知らなくていいこと。だけど決して近づくな」だった。
でも子どもだからやっぱり気になるし、婆ちゃんや村の大人から池の特徴は聞いてたから、そんなキレイな池なら見てみたかった。
村の子もそれは同じだったみたいで、村に行って遊ぶ度に行ってみようって話にはなってた。ただやっぱり大人たちがあれだけきつく言うし、子どもの中だけの噂話だけど「あの池は行ったら二度と帰れない」とか
「底無しだから落ちたら確実に死ぬって聞いた」とか言われてたから、実行には移せてなかった。 でも中学生になって帰省したとき、小さい頃から遊んでた村の子(以下、太郎、二郎、花子。太郎と花子は双子の姉弟。二郎はその従兄弟)たちが、
「二度と帰ってこれないならなんでみんな池の特徴わかんの?」

「底無し池なんて、こんな時代なんだから本当にそうなら埋め立てられてる」と、なんか現実的に思える意見を言ってて、俺もそれに賛同した。
そして最終的には「本当にそんな池あんの?作り話かもよ?」ってなった。
そんでお決まりの「確かめにいこうよ」になってた。

結果、俺ら三人は朝早くから待ち合わせして、山に向かった。山自体は低い山だし、迷っても夜までには出られるだろうとタカをくくってた。
特に俺と太郎と花子は中学生になりたてだけど、二郎は二年生だし、柔道やってるから最悪クマとか野犬が出ても巴投げして倒してやんよwwとか言ってて、安心しきってた。無理に決まってんのにな。

そんな話しながら、結局三時間近く歩き回って疲れてきた頃、なんかやけに木が密集してる変な場所を見つけた。うまく説明できないけど、そこだけ本当に木の量がやたら多くて、無理矢理木を埋めたみたいなかんじで、獣道すらない。
「絶対ここだよ、見るからに怪しいし」先頭きったのは花子で、もともとお転婆だったけど男三人が微妙に躊躇ってんのに、木の隙間をずかずか進んでいく。
仕方なく俺らも花子について進んだ。そしたら、案の定そこに、池があった。
センターオブジアース?だっけ、あの映画の、世界を発見したシーンみたいな感動があった。
実際、池は想像以上に透き通ってて、めちゃくちゃキレイだった。
でも、木のせいでなのか薄暗いし、池の横にある汚い小屋?が景観を台無しにしてた。

最初はみんなはしゃいでたし、花子は用意してたらしい空のペットボトルに池の水を汲んだりしてた。
けど、やっぱり隣の汚い小屋が気になってきた。
小屋は小屋というより長屋みたいな、ちょっと小屋にしちゃ横長な建物で、見るからに汚いし怪しい。
山姥でも住んでんじゃねえの?って感じ。
そしたら二郎が、お得意の「山姥がいたら巴投げで~」を始めて、小屋に入っていった。
俺らも後に続こうとしたが、ここまで空気だった太郎が、「やや、俺は行かへん。ここにおる」と言い出した。

花子は太郎のヘタレ具合にキレていたが、太郎は頑として譲らなかった。
「行きたかったら花ちゃんと二郎ちゃんとで行ったらええやん。梅ちゃん(俺)は僕と一緒におろ。な?」
と、なぜか俺だけは引き留めた。
俺は正直、怖いながらも小屋に興味があったんだが、のび太を地でいくようなひ弱な太郎を置いてくのも、なんかあったら嫌だったので残ることにした。
小屋に入ってった二人を見送りながら池の縁に座り、太郎と話をした。
「なんであそこ入るん嫌なん、怖いんか?」
「あっこは嫌や。怖い」
「ほな、なんで花子と二郎ちゃんは行って良かったんよ。」
すると太郎は、
「花ちゃんは僕にいけずばっかりしよるし嫌い。二郎ちゃんは乱暴やのに口だけやから嫌い。やからええねん。死んでもかめへん」

「やって花ちゃんはいつも偉そうにうるさいし、僕をミソカス扱いしよるし、二郎ちゃんはすぐシバく。ふたりとも嫌いや。死んでもええねん、死んでくれたらええねんよ。やから来たんや、マガガミさんに殺してもらいたかったんや」
悪口のなかに聞き慣れない言葉が出てきて、聞き返した。
「マガガミさんて、なんやねん」
「村の子らはみんな知らんよ。花子も二郎も知らん。アホやから知らんねん。僕は知ってたんや、ここには、マガガミさんがおるねん。キチヅの婆ちゃんがマガガミさんのことを僕には教えてくれたんやで、それは僕が賢いからやで。」
「せやから、マガガミさんてなんや!」
「梅ちゃんは僕に優しいから助けたる。けど、花子と二郎はあかん。アホでイキリで愚図やからな、死んでもええねん。マガガミさんに殺してもらうねん」

だんだんと、ただの悪口から呪詛になってきた。いつの間にかふたりとも呼び捨てになってるし。
太郎は口から唾を飛ばしながらずっとしゃべりまくっていたが、そのうち
「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」
と、変な笑い声を上げだした。

「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアひねヒョアヒョアひね
ヒョアヒョアひねヒョアヒョアヒョアひねヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」

気持ち悪かった。三角座りをしたまま、顔だけこちらに向けて笑っている太郎は気が触れたようにしか見えなかった。
その時、花子と二郎がいくらなんでも遅すぎることに気がついた。太郎からも離れたかったので、俺は小屋に向かった。
「そこにおれよ!二人みてくるから!」
そう声をかけると太郎は

「もう  遅いでェ 」

と言って笑った。
その顔が気持ち悪くて吐き気がしたが、無視して中に入った。そこは、真っ暗で変な匂いがした。
なにか焦げたような、腐ったような匂い。さらに吐き気がしたが中を進むと、突き当たりの部屋から
「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」
と、変な笑い声がした。
躊躇いながら中にはいると、そこには、床に座り込んでいる花子と二郎がいた。

「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア
ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」
「ヒョアヒョアヒョアヒョアひぬひぬひぬひぬヒョアヒョアヒョアヒョア」

ふたりとも、太郎と同じ笑いかたをしていた。気持ち悪くて仕方なかった。
とりあえず誰か呼んでこなきゃ、俺は振り返った。そしたら、目の前に白目が浮かんでいた。
失明した人のような、黒目に白い膜がはったような、白目。二つの白目だけが、ぽかんと浮かんでた。

意味のわからん悲鳴を上げて、俺は壁に後ずさった。するとなんだか、壁がネチャネチャしてた。さわってみると、壁一面がネチャネチャしてる。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!すぐに逃げ出したくてしかたなかったが、白目は微動だにしないし、動いたら追いかけてきそうで怖い。
白目はじっとこちらを見てた。呪い殺されるんか俺、と思った。目をこれ以上合わせたくなくて、顔を右に反らした。そしたら

「やケ 遅いて ゆうた
 やんかァ 」

窓から顔を半分だけ出した太郎がいた。
太郎の両目は、浮かんでる白目と同じになっていた。

「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア
ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒィヒィヒィヒィひゃははははははは
ひゃはははははははひゃはははははははヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」

太郎が笑ってた。花子も二郎も笑い出した。白目は浮かんでるまま。もう耐えられなかった。
半狂乱になりながら、俺は走って小屋を出て山を降りた。ずっと後ろから「ヒョアヒョアヒョアヒョア」
って聞こえてきてた。涙と鼻水を撒き散らして逃げた。
山を降りたら、まだ昼間だった。とっくに夜になってると思ったのに。
山を降りて村に出て、最初に会ったのは太郎と花子のじいちゃんだった。
「梅!なんや、お前、お前は!お前はあぁぁァア!」
いつも優しかった姉弟のじいちゃんは、口から泡みたいな唾を吐きながらすごい勢いで俺に近づいてきた。
「いったんか!いったんか!いったんか!」
キチな形相で俺を揺さぶり問い質すじいちゃんに、俺はすべて伝えた。
山に入って池と小屋を見たこと、太郎のした話、白目とネチャネチャの話、三人が狂った話、まだ山にいる話。
何度も舌を噛みながらも喋って、三人を助けてくれ、白目は何や、俺も呪われたんか、あそこは何なんや、と叫んだ。じいちゃんは
「もうええ、もうええ、梅だけは大丈夫や、梅は助かった、大丈夫や」
と言いながら俺を抱きしめてくれた。

俺だけは、って、それじゃあ太郎たちは?じいちゃんの孫は太郎たちで、俺じゃないのに、なんで心配しない?
色々パニックになったが、なぜか俺は、じいちゃんに俺の体についたネチャネチャがついちゃダメだ、と急に思って、じいちゃんを引き剥がした。
そして、自分の体についたものをみた

それは、すごくマヨネーズに似ていた。ただし色は黒と赤のまだら。ネチャネチャ具合がマヨネーズなかんじ。そして、とても臭かった。鼻をツンとさせる匂い。
とりあえずそのあたりで記憶が途切れた。次に気づいたら、俺は婆ちゃん家の広間で寝てて、まわりには大人がたくさんいた。
両親は号泣しながらも俺に話かけず正座してて、他の人たちもそれは同じ。
太郎たちの両親もそこにいたけど、泣きながら俺を見ていたが黙ってた。そこで俺は自分の体が動かないことに気づいた。縛られてたわけじゃないのに、何故か動かない。
声も出せない、ただ目が開けられるだけの状態。なんだこれ?と、またパニックになってたら、太郎の婆ちゃんがやっと話しかけてきた。
「梅ぼん、婆ちゃんの右の目、見てみい」
太郎の婆ちゃんの右の目は昔事故でなくしたので、義眼がはまってる。それは知ってたし、今さら見て何になるんだろう、と思ったが言われるままに見た。

「どしてん、別にいつもとおんなじや、焦点は変やけど、婆ちゃんの目や」

先程まで出なかった声が出た。
とたんに大人たちはワアッと歓声を上げて、良かった良かった、梅は助かった、と抱き合って泣きだした。

両親は俺を抱きしめて泣いたし、太郎たちの両親まで泣きながら「良かったなあ梅ちゃん、良かったなあ」と喜んでた。
でも、それが気持ち悪かった。自分の子どもは気が狂ったかもしれないのに、なんで恨み言も言わずに喜んでんだか、そう思った。
「他の三人は?太郎やらはどしてん」

俺は聞いた。けど大人たちは、
「なにゆうてんねん、朝からずっと家におるがな。梅ちゃん、これに懲りたら二度と『ひとりで』山いったらあかんよ」
と言った。
なんだ、そう言うことになったんか。
俺は『ひとりで山に入った』ことになったんか。太郎らは婆ちゃん家の蔵かどっかに閉じ込められたんやなあ。気が触れてたもんな。
そう理解したから、何も言わなかった。

それから二、三日して、俺は両親と地元に帰ることになった。あれ以来、太郎たちには会わなかった。

村の人たちが見送ってくれたなかにも、太郎たちはいなかった。
俺が二十代半ばになった今も、婆ちゃんは健在で、季節ごとに俺は村に行くが、村人たちは相変わらず優しいし、太郎たちの両親も変わらない態度だが、太郎たちは相変わらずいない。太郎たちのことをまわりに尋ねると、花子は嫁いで東北、太郎と二郎は二人で同じ会社に入り、揃って海外にいるとのこと。
学生のときは三人とも東京の学校にいったと言っていた。本当かどうかは、あれから会ってないから知らない。

白目やネチャネチャの正体も、マガガミ様が何かも、太郎たちの行方も、太郎が言っていた「キチヅの婆ちゃん」なんてひとは村にはいないので、誰のことなのか、もわからないが、あれから何年も過ぎた今に至るまで俺には何も害はないし、変化もない。
白目やネチャネチャも、あれ以来見てない。両親や村人に詳しいことを尋ねてみたこともあったが
「夢でも見たんだろう。お前は山にひとりで入って、熱射病になって山から降りてきた」「池?そんなもの知らないよ、初耳だ」
と言われた。あの時散々池について噂しあった子どもたちに同じことを尋ねても、「池なんて知らない」と平然と言われる。

毛束

俺が体験した話。
当時はすごく怖かったんだけど、今考えてみると何か不思議な体験だった。
美容師になって4年目、新人の技術指導で休日出勤してた日だった。
その日は本来休みじゃなかったんだけど、店長が里帰りするっていうので、1日だけ臨時休業になった日だった。

技術を競い合う様々な競技のコンテストが間近に迫ってて、俺の勤めてる店は新人もベテランも皆強制参加しなければならない。
そこで良い成績を取れれば店からちょっとしたお小遣いが貰えたりするので、自主的に休日出勤をして練習を繰り返していた。

といってもたかが数ヶ月~1年休みに練習したくらいで新人が入賞出来るわけもなく、だいたいがベテラン達の新人いびりみたいなものだから1時間もすればベテランは全員帰ってしまって、残ってるベテランは俺一人。
先輩が一人でも残ってる限り新人は帰れない暗黙のルールがあったんだけど、ただでさえ休みが貰えない新人を見て可哀想になったので、さっさと帰らせる事にした。

俺は昨日確認するのを忘れてた発注書を書く仕事が残ってて、新人全員を見送った後、店の中をぐるりと見渡して、足りない物をリストアップしてた。

いつもはBGMを流しておく店内も、今はシンと静まり返り、照明も俺だけだから必要最低限。
勿体ないからと空調を切った後は、じめっとした空気が店内に篭ってる。
天井近くまである大型の商品棚を見上げながら、店販のシャンプー、雑誌…とチェックしていき、しばらくは足りない物をメモ帳に書く音だけが聞こえたんだけど、それが終わってボールペンを止めた瞬間。
ズルっと、足下で何かが擦れる音がした。

反射的に目線を向けると、散らばった髪の毛の束を踏んでいた。
誰かが掃除中に掃き忘れたのかな、なんて思ってまたメモ帳に視線を戻したけど、すぐにそれは有り得ないことに気付いた。
この場所に立ち止まってから少なくとも2~3分は経過してて、なおかつ一回も足の置き場所を変えていない。なのに何で音がするんだ。

焦って再度視線を下に向けると、最初に見たときは無かったはずの毛束が増えていた。
慌てて一歩後退すると、ズルっと音を立ててその毛束がついて来る。
二歩三歩と後退してもズルズルとついてきて、加えて髪の毛をためておくゴミ箱から毛束がドサドサとこぼれだし、それに続き始めた。

絶対にこんなこと有り得ない、これは夢だと思いながらどうにかして逃げようと踵を返し、出口まで走り出そうとした瞬間目に入ったのは、髪の毛に覆われ、照明に照らされぬらぬらと真っ黒に光ている出入り口の扉だった。
本来だったら外が見える筈の大型のガラス窓も、全部真っ黒だった。
あ、これはもう駄目なんだ、と思った瞬間右足首をギュッと掴まれる感触がして、そのまま勢い良く引倒された。とっさに出た両腕で、顔面から床に激突するのは回避出来たものの、グイグイ引っ張られる右足の痛みがもの凄くていっそ強かに頭を打ち付けて気を失うくらいだった。

ああもうこれで死ぬんだ!と思った瞬間、ゴッという音と共に地面が揺れた。

遠目に見える商品棚からシャンプーや雑誌が勢い良く転がり落ちてて、そこでようやくこれは地震なんだって気付いたんだけど、未だ足は引っ張られて店の奥に連れて行かれてるし、地震だしで大パニック。
必死で祈りながら地震も怪奇現象も収まって欲しいと目を瞑って耐えてた。
ガラスが割れる音や、何かが転がってく音がやっと収まった…と思ってそっと目を開けてみると、その怪奇現象以上に信じられないことが起きてた。

俺の周りだけ、何も無かった。
出入り口のガラス、大型のガラス窓は砕け散ってる、観葉植物の鉢は割れてるし、店販の商品なんか至る所に転がってた。さっきまで俺が立ってた場所は商品棚が倒れてる。
でも俺の周りだけ、俺を避けているみたいにガラスも何も無くて、俄には信じられなかった。

気付けば髪の毛に掴まれてた足は自由になってて、これ幸いとばかりに割れたガラス窓から逃げ出した。それが3/11、東日本大震災の日。
店から逃げた後は周りの惨状に圧倒されっぱなしで、深く考える事も出来なかったけど、今考えるとあの髪の毛は俺を助けてくれたんじゃないかと思ってる。
死ぬかと思うくらい怖い思いをしたし、俺をどっかに連れ去る途中で地震があって、結果的に助けたみたいになったかもしれないけど。

不幸の指輪

俺の長男が軽の中古車買って何年かして運転席を掃除かなんかしてたら、名前が彫ってある指輪があったらしい…。んで俺の兄はそれみて「うわ!気持ちわり!」つって窓から外にその指輪を投げ捨てた。

それだけでも罰当たりというかなんか不運起こりそうだけど実際に不運が起こった。
まずバンパーぶっ壊れ、その次に軽い接触事故。最後に猛吹雪の中の車半分ぺしゃんこの衝突事故。
と不運続きだったんだか衝突事故は10:0であっちが悪いんで保険おりて「ラッキーw」とか言って、その金で新車買ってた。しかも事故る前に次男と乗ってたんだがその次男と
「もうすぐ車検切れるからこういう猛吹雪ん時とかに事故起きねーかなー」
って言った後に後ろから衝突されたらしい。
まさか不幸の指輪までも利用してくるとは指輪の持ち主も思っても見なかったと思う。

葬る

津波の時に俺を10年ほど虐待したバアさん葬った話需要ある?

まあ書いたことそのままなんだけど、俺は11歳頃まで父方の実家で、父・母・祖父母(+数年後に弟)と一緒に暮らしてた。
で、この祖母と母の嫁姑仲が最悪に悪かった。そこから恐らく全て始まったんだけど、まずババアは母の出産自体気に食わなかったらしく、生まれたばかりで退院して間もない俺の額を指で凹ませて殺そうとしたことが二度ほどあったらしい。

んで当然ながら時間が経つにつれて和解。おばあちゃんは優しくなりました。
なんてことはなく、まあ虐待じみたことを10年ほど我慢してたんだが、ついに母親が切れて父と離婚→俺と弟連れて引越しし、ババアとの縁は切れた。
かに思われたんだけど、その日、去年の3/11の時には丁度爺さんの命日で、爺さんには何かと世話になったということで、実に9年ぶりに父方の実家に戻っていた。
その時家にいたのは俺、弟、ババアの三人。(母と父は仕事で夜に来ることになっていた)
丁度出前の昼飯を食い終わり、コタツで週間ナントカという女性向け雑誌見てる時だった。

バキン!ととてつもない音がなり、家全体が持ち上げられて落とされたような衝撃。
それからバキバキと家全体を鳴らしながら本当に身動きが取れないほどの縦揺れが続いた。
俺は四つん這いでコタツから這いでて玄関に向かい、高速自動ドアと化してる扉を抑えつけて大声で弟を呼んだ。

爺さんの書庫で、官能小説漁ってた弟が同じく四つん這いで生まれたての子鹿みたいに這って出てきた。
その時、ババアは仏間。完全にババアのことは頭になかった。
なんとか弟を家から出し、降ってくる瓦を避けながら庭で2人蹲っていると、ガラス越しに仏間で蹲るババアの姿が確認できた。
その頃には揺れがだいぶ収まっていて、他の家々から人が出てきて安否確認なんかをしていた。
俺は何を思ったか再び家に、ババアを救助しに入った。

ババアは半分泣きながら爺さんの位牌と経典?のようなものを抱えて、何かぶつぶつと念仏のような独り言のようなものをつぶやいていた。
俺は硬直してるババアの腕を取って「ばあさん危ないから家出よう」とかなんとか言った。
ここでババアまさかの「やんた(嫌だ)」発言。
家の中はめちゃくちゃ、瓦もガラスも散らばっていて、外では防災無線がガンガン鳴り響いている中、
「えさ居ればいい!おは居る!(家に居ればいい!私は逃げない)」

俺パニック。家は高台にあったが海に近く、津波はとてもここまできそうにないが次揺れたら家は潰れそうなくらいのギシギシっぷりだった。
ババアの両肩を掴むと羽交い締めのように抑えつけ、比較的ガラスが飛び散っていない縁側からババアを連れて脱出した。
ババアは発狂していた。外では防災無線がますます鳴り響き、海抜の低い下の方の家の住民が喚きながら坂を登ってきたり、糞狭い小道を軽トラがギチギチに占領していたりでえらい騒ぎだった。

ババアは庭に出してもまだ尚何か叫んでいて、家は誰が守る?とか、通帳はどこだ?とかあとはほとんど訛りが強くて聞こえなかったがとりあえず大いに取り乱していた。
弟だけは冷静に携帯を開き、電波が全く通じないこと、恐らく津波が来ること、車で逃げると死ぬかもしれないこと、母と父は内陸部にいるので恐らく無事であろうことを淡々と俺に説明した。
この時点で恐らく15:00ころ。
家の脇の道路を見ると車がありえないほど渋滞していて、車の隙間を縫うように下から人が避難してきていた。
ここでババアがまた大声を出す。

「遺影もってこ!!(遺影を持って来い)」
その後、通帳とタンスの金もだ!とまくし立てるように言うと俺に指を差した。
俺「そんな時間ない!山に上がるぞ!」
弟「裏から行こう。ばあちゃん俺が担ぐから兄は道確保して」
ババア「おらはいかねえ!爺さん置いてくのか!?財布も忘れだ!!」

ババア、頑として譲らない。
そこで俺もちょっと油断した。うちは高台にあるから津波なんてここまで来ないだろ。
ババアを黙らせるためには仏壇の写真をとってくればいいんだ。
俺は弟に先にいけ、ばあさんは俺が連れて行く。と言い、再び家に。
余震が続いていてガラス片がバリバリいいながら降っていた。
俺が倒れた仏壇の下から遺影を引っ張り出していると、なぜか家の仲間でついてきたババアが
「それでねえ!大きいのだ!上のだ!」と、梁に立てかけてある、肖像画くらいの大きさの爺さんの遺影をアゴをしゃくって指した。
梁ははしごを使わなければとても手が届かない。
俺もだんだん冷静になって頭に来始めて、
「そんなもん無理だ。自分で取れ!」と怒鳴った。
家の外から
「来たぞー!!」と誰かが叫ぶ声が聴こえた。

また余震だと思った。
とんでもない音で地鳴りが鳴り始め、外では逃げろ!とか早くしろ!
とか、一人ではなく大勢が叫んでいた。
ただならぬ気配に外に飛び出した。
坂の下、海のほうを見下ろすと砂浜がなかった。真っ黒い墨汁のような水が防波堤ぎりぎりまで満たされていた。
「津波だー!!」と、誰かが叫んだ。
俺「ばあさん!だめだ!もうダメだ!津波が来た!写真持ったべ?逃げるぞ!」
ババア「財布はどこだ!?」

坂の下の方では声をかき消すくらいバリバリと雷と台風でもいっぺんに来たような轟音が鳴り響いていた。
俺は問答無用でババアの腕を掴んで裏口へと走った。
横目で坂の下を見ると、幼馴染の実家に波に流された軽トラが突き刺さっていた。

俺「ばあさん!弟は!?先に行ったか!?」
ババア「財布とってねえ!おめえ、写真どこさやった!?おい!」

ババアも俺に渾身の肩パンを繰り出しながらずっと叫んでいた。ずっと後ろの方で悲鳴が聞こえていた。
裏口を回って山道に出る。少し見通しのいいそこに立つと、うちの二軒下の家に大量の瓦礫がぶつかってドリフのコントのように押し流されているところだった。瓦礫の中に赤い服着た人間が混じってた。
どう考えてもここまで来る。それもあと数十秒で。
あ、死ぬの?と漠然と思った。ぽかんとしている俺の肩をババアが突き落とすように押した。

ババア「写真どこさやった!おら位牌ももってねえが!!おめえ早く取って来い!!」

ババアは今津波に飲み込まれようとしている家に戻れと、俺に言っていた。
俺はそこで我に返って、急いで後ろの急斜面の何の舗装もされてない山を四つん這いで登った。
ババアが俺の脚を掴んで引きずり下ろす。

俺「おい!おい!死ぬんだぞ!おい!津波来てんだぞ!」
ババア「早く行け!おめえ、誰が育てたと思ってる!?」
俺「何いってんだお前!早く登れよ!なんなんだよ!」
ババア「おらが生かしてやったんだぞ!!おめえを!あん時死ねばよがったんだぞ!早く行け!!」

泥まみれの土まみれで四つん這いのままババアを振り返ると、ババアは俺の脚を掴んで、子供の頃に見たあの人呑鬼そっくりのブチ切れ顔で俺を更に引きずり降ろそうとしている。
ババアの後ろには家と、車の塊。俺が戻れと言われていた実家はもう瓦礫にもみくちゃにされて、今まさに砕けているところだった。

ババアの顔を見て、小さい頃のババアとの思い出がパラパラマンガみたいに脳裏に蘇った。
猫が食った後の残飯を食わされたことや、部屋の隅にビニールテープの陣地を作られてそこを出ると殴られたことや、母ちゃんの悪口を書いた手紙を読まされたこと、飼ってたインコに粉洗剤を盛られたこと。
そんで出ていくきっかけは俺を生垣から突き落としたことだったなあと。
急に冷静になって、「あ、うん」なんて返事をして、腰を捻って下にいるババアの両腕を引っ張りあげるように掴んだ。
大部分の瓦礫は道路側に逸れて、流れの早い波がさっき上がってきた裏庭を駆け上がってきていた。

俺が気の抜けた返事をしたからか、自分を引っ張り上げてくれるような動作をしたからか、ババアは一瞬素の顔に戻って力が抜けた。
そんでそのまま、両腕を持ったまま、ババアを下に向けてポイっと放った。
ババアは一段下の山道へ尻餅をついて、「おい」と普段呼びかけるようないつもの調子で言った。
いつもの顔をしていた。
俺はそのまま四つん這いで山を駆けのぼった。
ゴーゴー爆音がそっちこっちで鳴り響いていて、夢中で登った。
今どこまで津波が来ていて、自分の進んでいる方向は正しいのか、一切わからなかった。
どのくらい登ったかは定かじゃないが、ふと後ろを振り返ってみると7mくらいの所で波は止まっていた。
波が引いていくのを見て、ババアの姿を瓦礫の間に探したがもう居なかった。

あれから一年経つがババアは未だに見つかっていない。

以上で話終了。
家族で死んだのはババアだけで、ババアの死亡届は親父の手によって早々に出されたらしい。
ちゃんと探したのかどうかもわからんが、これ以降親父の親族近辺には関わっていない。
プロフィール

ナイア

Author:ナイア
どこかで見たことのある話を載せていきます。

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