のりちゃんとやんしゃん

つい先日、祖母が亡くなった。

祖母と言っても父親の祖母なので、オレから見ると曾祖母にあたるわけで家が遠い事もあり、疎遠になっていた。
疎遠だったとは言え、曾祖母が亡くなったのだからお葬式には当然参加し、滅多に会う事のない親戚達とも数年ぶりに会う事となった。
オレのスペックを書き忘れていたので、簡単に書かせてもらう。27歳独身(ばついち)会社員。
この歳で曾祖母が最近まで健在だったのは珍しい方ではないだろうか。

この話はこの曾祖母のお葬式の為、親戚で集まった時の話になる。
曾祖母と私が疎遠であったと書いたが、小学校に入る前(6歳?)の時に1ヶ月ほど曾祖母の家で一緒に暮らした事がある。
これは父親が家を新築する際に新築工事に遅れが生じた為、家の完成前に住んでいたアパートを出る事になったからだ。
曾祖母の家は福岡県の田舎町にあり、近所にはゲートボール場や長屋の立ち並ぶ住宅街、何作ってるかわからない畑。
小学校に入る前の好奇心旺盛な少年には、毎日ちょっとした冒険だったのを覚えている。

話を元に戻すと、曾祖母のお葬式では曾祖母の年齢が100歳手前だっただけに、悲しみに包まれたお葬式というよりは『曾祖母はすごい!』と褒め生前はああだったこうだったと、思い出話をしながら曾祖母を送る様な雰囲気だった。
お葬式は近所の葬儀場でやったのだが、親戚一同は曾祖母の家へと場所を移し思い出話をしながらの宴会をした。

曾祖母の家にあった写真のアルバムを見ながら懐かしむ親戚達。
オレは曾祖母の思い出と言えば小学校に入る前くらいの記憶がメインだった為、アルバムを見ても知らない人の写真ばかりでやや退屈していた。

その時、『お、Sがおる!』(Sは父親)という声に再びアルバムに視線を戻すと・・
なんともDQNな父親の姿が・・、なんで高校に通学するのに白のスーツなんだよwと、苦笑。
アルバムも古い方から順に見ていたので、父親の高校時代・・・ 成人式・・ と次第に現在に近づいていた。
オレの誕生・・ 例の1ヶ月の同居・・・ 
ここで1枚の写真を見て、気づいた事があった。

1枚の写真を見て気づいた事というのは、曾祖母と親しくしていたはずののりちゃんがお葬式に来ていない事だった。
皆、のりちゃんの写真を見るなり笑顔が引いた様に感じた。
のりちゃんは以前からいつも一人で遊んでおり、近所の小さな子供の居る家から気味悪がられて苦情がきたりと、ちょっとしたトラブルメーカーだったらしい。
しかし曾祖母は器の大きな人で、のりちゃんの一人遊びを止める事はしなかったらしい。
むしろ苦情を出してきた家に「そんなに心配なら子供を家から出すな!」と言い返したそうだ。
実際、のりちゃんは年齢が45歳くらいという事で、周りから見ると45歳のおっさんが小学生の様に一人で外で遊んでいるのは気味悪かったのかもしれない。
だが誰にも迷惑を掛けてないのも事実だ。

のりちゃんの話題で皆の笑顔が消えた事を不思議に思いながらも、そのまま宴会は終わり遠方から来ている人は曾祖母の家に泊まり、近所の人は各自家へ帰っていった。
オレも酒を飲んでいた為、曾祖母の家に泊まる事にしていた・・・ が曾祖母の家の近所に住んでいたM姉ちゃん(35歳 バツイチ)に誘われ、市街に飲みに行く事になった。

M姉ちゃんは血の繋がりとしてはかなり遠い親戚だったが、先輩の先輩というか友達絡みの繋がりが多かった為仲良くしていた。
M姉ちゃんなら小さい頃から曾祖母の家付近に住んでおり、詳しいだろうと思い、思い切って「のりちゃん」はどうしたのかと聞いてみた。
M姉ちゃんいわく、高齢になってきて面倒見る人も居ないので施設で暮らしているらしいとの事。
親戚一同はのりちゃんの面倒を見ずに施設に入れた事に負い目を感じ、写真の時話題に出さなかったのかなと一人納得した。

深夜2時くらいまでM姉ちゃんと飲み、タクシーでM姉ちゃんの家に帰宅。この日は泊めてもらう事にした。
酒を飲んでいる事もあり、二人とも即爆睡。
朝か、と思い目を覚ました時にはまだ周りは真っ暗。
時計を見ると寝てから1時間も経って居なかった。1時間も寝てないのにこの清清しさは何だ・・ と、不思議に思いながらももう一度寝ようと目を瞑る、、、が、なかなか眠れない。
しばらく目を瞑っていれば眠れるかと思ったが、全然眠れる気がしない。
そのままカッチカッチと響く時計の音を聞きながら、ぼーっとしていた。
何時間そうしていたのか分からないが、急に曾祖母の家で見た写真の事を思い出した。

「やっぱり気になってたのか」
自分の中の自分が囁く。なんとなく怖い感じがしてできるだけ考えない様にしていたのに、どうしても写真ののりちゃんの事が何か気になるのだった。
思えばオレが曾祖母の家に住んでいた一ヶ月間、のりちゃんと一緒に遊んだ記憶はある。
いつものりちゃんはお昼すぎに曾祖母の家の訪ねて来て・・ オレは一緒に畑や近所の空き地に行って遊んでいた。
そこまでは思い出せるが何かが引っ掛かる。
何もしっくり来る回答が出ないまま昼すぎに目を覚まし、M姉ちゃんに礼を言って帰った。

この日は日曜日だった為、たまには実家に帰ってみようと思い車で実家へ向かった。
昨日お葬式で会ったばかりなので両親とも久々に会う感じはなかったが、久々に実家の犬に会った。完全な猫派のオレも、実家の犬は可愛い。
しばらくのんびり過ごしていたが、やはり「のりちゃん」の事が気になり、『のりちゃん覚えてる?』両親に切り出してみた。
両親も当然覚えており、のりちゃんの事は良く思っている様で意外と軽くのりちゃんの思い出話になった。
小さい頃のオレを連れてのりちゃんはあんなことしたこんなことした・・ と微笑ましい話ばかりだ。
この話の中で意外な事実を思い出したが、驚くと一気に恐怖心が湧き上がってきそうだったのでぐっと堪えた。
6歳の頃のオレは母親に「のりちゃん」と「やんしゃん」と3人で遊んだと、よく言っていたらしい。

やんしゃん、名前を聞いて思い出したが今思えばありえない存在だった。
オレの中で、どんよりして嫌な記憶が蘇った。

やんしゃんは、いつものりちゃんと一緒に居た人で遊ぶときも大体一緒に居た。
曖昧な記憶だが、一緒じゃない日もあったが80%くらいはのりちゃんと遊ぶときはやんしゃんも居た。(気がする)
昼前に曾祖母の家にのりちゃんが来たときは、曾祖母はオレとのりちゃんの分の昼食を準備してくれるのだが、やんしゃんの分は無い。
オレとのりちゃんの食事中は、やんしゃんはのりちゃんの後ろで方膝立てて座って居た。
曾祖母はやんしゃんと会話する事もなければ目を合わす事もない、今思えばオレもやんしゃんと会話をした記憶は無い。
ただのりちゃんが「やんしゃん、やんしゃん」と呼び、親しくしているので一緒に居ただけだった。

やんしゃんは学生服の様なズボンをはいており、上半身はいつも裸。
髪の毛はのりちゃんとは違い、真っ黒で丸坊主。歳は30歳くらいだったろうか・・ よくわからない。
痩せているわけでもなく太っているわけでもなかったが、腕は太いなあ・・と思っていた気がする。
声は聞いた事が無い。

のりちゃんはやんしゃんとどうコミュニケーションをとっていたのか分からないが、時々何かしらのやり取りの後にキャッキャと喜んで騒ぐ事があった。内容は理解できなかったがのりちゃんが爆笑するのでオレも一緒になって笑っていた。
やんしゃんは騒ぐどころか真顔のままだったのを覚えている。

ある日こんなエピソードがあった。
いつもの様にのりちゃんがオレを迎えに、曾祖母の家にやってきた。
この日のりちゃんは一人で、これから一緒にやんしゃんを迎えに行こうと言うのだ。
曾祖母の家から30分程歩くと駄菓子屋があり、その店には100円入れると2回遊べる格闘ゲームが置いてあった。
やんしゃんを迎えに行く途中、この駄菓子屋の前を通りかかった。
ゲームを見るなり、のりちゃんがこれで遊ぼうと言うので、やんしゃんの事も忘れてありったけの金をつぎ込んでそのゲームで遊んだ。

駄菓子屋のゲームをやったり、駄菓子屋の向かいにあった公園で遊んだりしている内に夕方なりそろそろ帰ろうかということになった。
帰り道で今日はやんしゃんを迎えに行くはずだった事を思い出した。やばいと思い、のりちゃんに大丈夫かな?と聞くとのりちゃんはさっきまでやんしゃんも一緒に居たと言うのだ。絶対に居なかったはずだが・・と思いながらも、来たのなら挨拶くらいしろよと少し苛々した。

オレの中でやんしゃんの思い出はこれ以外には無い。
やんしゃんとは時々何かをのりちゃんに囁いて、のりちゃんを爆笑させる存在。

話を戻すが、この日は夕食を実家で食べて車で自宅へと帰った。
帰りつくなりM姉ちゃんに電話し「やんしゃん」知ってる?と訊ねた。
M姉ちゃんはやんしゃんを知らなかったが、何故?何故?としつこいので上に書いた内容を全て説明した。
するとM姉ちゃんは満足そうに「調べとくよ」と、軽い感じで答え、電話を切った。
それから3日後(昨日の夜の事)M姉ちゃんから電話があった。
少し忘れかけてたのりちゃんややんしゃんの事を思い出しテンションが下がったが、電話に出た。
すると意外にも元気な声で話しかけてくるM姉ちゃんに少し安心した。

M姉ちゃんの調査報告は下記の通り。

・M姉ちゃんの父親はのりちゃんと歳が近く、のりちゃんの高校時代から知っていた。
・のりちゃんは二十歳くらいの時までは健常者で、仕事(土木)中の事故で入院してから少しおかしくなった。
・のりちゃんの事故は原因不明。道路を作るときに地面に埋める鉄板?がクレーンの紐が切れて落ちた時にのりちゃんに当たった
・のりちゃんは片足を複雑骨折し入院。(ほぼ片足千切れる寸前の様だったらしい?)
・入院中から言語障害が出た。
・のりちゃんと同じ病室にやんしゃんと呼ばれる患者が入院していたらしい。
・退院後、のりちゃんの知的障害はどんどんひどくなった。
・退院後、一人で徘徊し、独り言や急に爆笑したりする様になった。
・事故で入院する前から孤独で、友達は居なかった。

のりちゃんの事はなんとなく分かった気がするが、やんしゃんは入院したときに病院で知り合ったって事以外は不明。
オレが6歳の時は、のりちゃんの事故から25年近く経っていたはずだ。
のりちゃんが二十歳の時に病院で知り合ったやんしゃんと25年近くも一緒に外で遊んでたってわけか・・?
なんか考えると鳥肌が立った。
怪我の程度は重かっただろうが足を怪我しただけののりちゃんが知的障害を煩い、どんどん悪化しているのもおかしい。
やんしゃんに関して詳しい話しはM姉ちゃんからは聞けなかった。
内心怖いし、どうでもよくなってきた。早く忘れたいと思った。

今でものりちゃんは施設で「やんしゃん」の名前を出すと言うが、のりちゃん自体ほぼ会話にならない状態なので、詳しくは話しを聞けないらしい。
のりちゃんの事故・入院と同時期に、バイクで事故を起こし頭蓋骨が割れる程の怪我をした人が居たという。
その人はのりちゃんと同じ病室で入院していたが、事故から3日ほどで無くなってしまったらしい。
その方の名前は山根さんというらしく、山根さんのお母さんとのりちゃんの友達は病室で挨拶をする中だったと・・・
やんしゃん = 山根さん だったとしたら・・・
考えただけで胃が痛くて、すごい怖い感じがするのでこれ以上は詮索しません。
長いだけで大して怖くなくてすみませんでした。
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5行目

ここに書いていいか迷ったんだが他に当ても無いから書くことにする。
まとめておいたから暇だったら読んで知ってる事があったら教えてくれ。
まずは事の始まりから、確か8月の中ごろだったかな。

祖父から「精霊馬の処理をするからお前も来い、こういった事をお前は覚えなきゃならん」と言われ着いて行った。
場所は家のすぐ隣にある道祖神があるとこ。
そこには用水路が流れてて祖父は精霊馬と飾ってあった折鶴らしきものをその用水路に流した。お前も拝めと言われたので手を合わせた。
その後流すときに立っていた場所にお線香を二本置いてその日はそれで終わった。

その翌日の午前3時くらいに祖父に起こされてちょっと出かけるぞと起こされた。
俺は眠いしまだ日が昇ってなくて暗くて怖いからイヤだって言ったんだけど、祖父は
「どうしても今やらなきゃいけないから来い、帰りに缶コーヒー奢ってやる」
って言うからついてった。
場所は昨日と同じ場所だったが数人の男性がいた。
ランタンみたいな灯りしか無かったから顔は見えなかったけど皆50は超えてる人で知ってる人もいた。

着くと顔見知りの人から
「おー○○(自分)もきたんかー、こんな時間にすまんなw」
みたいな事言われて5分ほど他愛ない話してた。
話が終わると
「じゃ俺は行くでしっかりじいちゃんの言う事聞くんだぞ?」
と言ってそこにいた人は全員奥にある倉庫?みたいなとこに集まっていった。
俺がぽかーんとしてると祖父が来て
「この事はお前の母ちゃんと○○(妹)には言うなよ?男同士の秘密だ」
って言われてちょっとワクワクしてた。
俺が何するの?と聞くと祖父が説明してくれた。
原文ママは覚えてないので要約して書く。
まずこれはこの地域に昔からある風習であんまり他所には言わない事。お前はご先祖様に愛されてるからこの役目をやらなきゃいけない事。女性は関われない事(理由ははぐらかされた)。俺の家で代々取り仕切ってる事。
こんな事を聞かされた。

肝心の自分が行う事はやりながら説明するから俺のやってる事をしっかりみて覚えろと言ってさっきの倉庫の方に一緒に行った。
そこにはさっきの人たちはいなかった。どうやら準備をする人たちも決まっているらしい。
その倉庫は普段シャッターが閉まってるんだけどその時は空いてた。
中は初めて見たけど棚があったりいろいろごちゃごちゃしてた。
入って正面に神棚みたいなのがあって蝋燭が左右二つづつ計4つ置いてあった

俺と祖父が入ると祖父がシャッターを降ろした。
持ってたランタンも外に置いてきたようで中は蝋燭の明かりしかなくて怖かった。
祖父は降りたシャッターの方に体を向け俺にもこっち向けと言った。
祖父は
「いいか、あそこの蝋燭があるとこ向いて喋っちゃだめだ。やる事は見るだけで質問はするな。終わったら説明したる。頼むからあれに向かって喋るなよ?」
と言い、俺が頷くのを確認して蝋燭に向きなおした。
怖がりの俺はgkbrしながら祖父の隣に付いた。

祖父はまず蝋燭の立ってる棚に置いてある紙(半紙っぽかった、長さは30cmくらい、両側に文鎮らしき物)に隣にあった鉛筆?で字を書き始めた。
読めたのは右詰の一番右にあった俺の苗字だけで後はぐにゃぐにゃで読めなかった。
紙の一番左まで書き終えると鉛筆を元に戻して紙を折り始めた。
横に一つ、二つ。折り目が4つつく感じで。
折り終えたら今度は開いて折り目に沿って4等分に切った。
切ったら一番右の紙を一番右の蝋燭の火で、二番目を2番目の蝋燭でといった感じで火をつけて棚の奥に捨てた。

紙はすぐ燃え尽きてしまったのではっきりとは見えなかったが紙を捨てたとこには随分古い石碑っぽいのががあった。
字が彫ってあったが見えなかった。
全部の紙が燃え尽きると今度は左の蝋燭から順番に息をかけて消していった。
右の蝋燭は消さないので祖父の方を見ると蝋燭を見て顎をクイックイッとやっていたので祖父にならって左から息を吹きかけて消した。
全部の蝋燭が消えて完全に真っ暗になるかと思ったら上に天窓があってそこから微妙に朝日がさしてた。

するといきなり祖父に後ろから抱きしめられて手で口を塞がれた。
俺が困惑してると祖父がそのまま座ろうとしたので俺も座ろうとしたら座るなって言われた。祖父の声だった。
すると抱きしめる力が弱くなって祖父はそのまま座り込んでしまった。
喋るなと言われていたのでどうしたものかと悩んでいると案外中が明るくなっているのに気づいた。
周りを見渡しているとさっきの石碑らしき物が目に入った。
しゃがんでよく見てみると箇条書きで何か書かれていた。
全部で4行、3行目と4行の間は2行分くらい離れてた。

壱 女~~ヲ禁~~
弐 之~~キメ~序
参 宮~ノミヲヲ~

~ 之見ルハ之ヲ禁ズ

~の部分はさっき祖父が書いたようなぐにゃぐにゃ文字。
何故か4行目だけはハッキリみえた、彫ったあと白く塗ったみたいだった。

4行目を見たら怖くなって早く帰ろうと祖父を連れて帰ろうとしたら祖父がいない。
シャッターもいつの間にか開いていたので先に帰ったのかと思い外に出たらさっき準備してた人と祖父が一緒にいた。
俺は近づいてって「なんで先に帰るの!怖かったじゃん!」と祖父に文句を言ったら祖父は青い顔してた。

周りの人も「○○大丈夫だったんか!?なんともないか!?」って凄い剣幕で話してきた。
俺は蝋燭の火を消したとこまで説明したら「そっから先は口外禁止じゃ○○ちゃん」と言われた。
その人たちは少し離れて何か話し合っていた様だったがしばらくするとこっちにきて
「もう今日は帰り、じいちゃんはちょっと体調悪いけん俺らが預かるわ」
と言った。
顔見知りで家も知っている人だったのでじゃあお願いしますと言って帰路についた。

帰るともう出勤の時間だったので普通に出勤した。
仕事から帰ると居間に祖父が居たので今朝の事を聞いてみた。
祖父は「いや・・もう俺じゃだめなんだ・・・やっぱり俺で・・・」みたいなこと呟いてから俺に向きなおして
「いいか、今日の事は忘れろ。後のことは○○(今朝の顔見知りの人)に任せてあるからお前が気にする事はない。変な事に付き合せてすまなかったな」
と言った。
俺はそっかー変なのーと思いつつしばらく祖父と談笑してた。

話の中で今朝の石碑の事を思い出したので「そういえばなんか石碑みたいのあったじゃん?なんか書いてあったけどアレ何?」と聞いた。
祖父は「ああ、アレももう忘れていいよ、お前には関係ないさ」と笑うので「そっかー、何かこれを見るなとか書いてあったから焦ったよw」と話すと祖父の顔色がはっきり悪くなった。
祖父にどこまで見たといわれたので4行全部と言うと祖父は「4行?・・そうか・・・」とだけ言って
「今日はもう遅い。俺も寝るからお前も早く寝ろ。月が変わる頃には話してやる」
と言って寝室に行ってしまった。
怖くてその日は寝付けなかった。

ここまでが俺の話したかった事の顛末なんだけど、特にオチらしきオチは無い。
でもここに書いたのは別に理由があって、色々不思議な話やら風習の話しってるここの住民なら何か知ってるかもと思って書いたんだ。

実は8月末に祖父が亡くなったんだ、死因は心不全とか聞いた。
例の事の顛末を聞けなかった俺はその日会った顔見知りのおじさんの家にいって聞いてみたんだけど。
やっぱり蝋燭が消えた以降の事は知らないし、なんであんな事やってるかも祖父しか知らないんだそうだ。
直ぐに話さなかったってことは特に問題なかったって事だろうから○○ちゃんも気にせんほうがいいよって言われた。

何も無いならいいんだろうけど、つい一昨日親父と話してる時に例の事をチラッと話したら
「ああ、俺もじいちゃん、お前のひいじいちゃんにそんなことやらされたなw」
と言ったので何か知らないかと聞いたがやはり父も知らないようだった。
蝋燭を消した後のこともやはり秘密らしい。
父とそんな話をしている内に例の石碑の話になって、話をしている内に思い出したことを聞いた。
「あの石碑さ、父ちゃんが見たのって4行?」
「ああ、なんか最後の行に見るのはダメみたいなのが書いてあって当時はブルったわw」
「俺もじいちゃんに4行見たって言ったら怖い顔されたよ、でも変なんだよね」
「なにがさ」
「いやさ、4行目がやけにはっきり見えたから今まで忘れてたけど、あれ5行目があった気がするんだよね、見えなかった?」

ここまで話すと父の顔がおかしくなった。
凄い怖いものを見たような顔だった。
父は
「もうその話を誰にもするな、俺がなんとかしてやる」
と言ったきりその話はしない。
ただ昨日やけに長い電話をしていたので内容が気になって少し耳をそばだててみたが例の件っぽいという事しか分からなかった。

これを読んで何か知ってる事とかあれば教えて欲しいんだ、というのも5行目の内容がちょっと怖くてさ。
書いていいものか迷ったけど書く事にする、読めなかったのは~にする、大体こんな感じだった。

死ヲ~~ナクバ~貰~ベリ

長文乱文失礼しました。ここまで読んでいただきありがとうございます。
明日にでも近くのお寺いって聞いてみようと思います。

盗難

一昨日、仕事帰りに行きつけのゲームセンターで三国志大戦をプレイしにいった。
するとよく知っている先輩のMさんが、事務所の前で落ち着かない様子。
「どうしたんですか?」と聞くと「黒いバッグがちょっと眼を離しているすきになくなった」との話。
災難だな、と思ってコーヒーを買って渡して2人で雑談していたら奥の方から店員が小走りで駆けてきた、手には何となくなったはずのバッグ。
Mさんが「どこにあったの!?」と焦りながらも尋ねると「便器の裏にありました」との事。
中に入っていたiPhoneとお札を入れていた財布はお無くなりに・・・・

店長さんが防犯カメラを遡って追ってみます、と言ってくれたのでお願いして30分くらい待つ。
すると社員さんが犯人が分かりました、ただ・・・と何やら煮え切らない様子。

その社員さんが言うには
「手にバッグらしきものを持っている人物を捉えたんですが、暗くてハッキリとは見えません。ただしバッグがなくなった時間から今までにバッグらしきものを持ってトイレに入り、手ぶらで出てきた人物は一人だけなのでまず間違いないはずです。」との事。

Mさんが「どういう奴だ?」とやや熱くなって更に聞き返す。
買って一月も経たないうちにiPhoneを盗られたのだから気持ちは分かる。
「浮浪者風で茶色のズボンに黒のベストで顔はわかりません、よく映っていないんです・・」と社員さん。
ゲーセンは暗いからそんなものかな、と思ってた。
カメラを見せてくれとMさんは食い下がるが、カメラの位置が分かってしまいますし、警察機関に証拠として提出は可能ですが、お客様にお見せする事はできませんと断られる。

結局、警察が来てカメラの映像を見ても取った瞬間も人物もはっきりと見えないので状況証拠にしかならず、仮に犯人らしき人物を見つけても認めさせる事は難しいとの事。
少し置いて「ただねぇ・・」と警察の方。
「私も店長さんとカメラ何回も見たんだけど、どうもおかしいんだよね。カラーだし、トイレの前、私も見てきたけど照明たくさんあるんだよ。でも、俯いてるわけでもないのに顔だけが真っ暗になってるんだよね・・。私、個人としてはこいつが犯人だとは思うんだけど」

結局、被害届のみを提出して(おまわりさんが書き間違い多くて待たされた)夜中の二時過ぎにお礼を言って二人で飲みに行こうと退店。
先輩の自転車を取りに、他愛もない話をしつつ歩く。
そういう事もありますよ・・・だの、こういう時期ですからみんな苦しいんだろうな・・・等と。

街頭も少ない真っ暗な路地。
ここに自転車を止めているんだ、待っててくれとMさん。
次の瞬間「うわああああああああああああああ!!!!!」とMさんの叫び声が・・・・
走って向かうと俺にもすぐその意味が分かった。

水色の鮮やかなビアンキの自転車のサドルの上に、MさんのiPhoneがぽつんと置かれていた。
俺たちは見つかってよかったなんていう気持ちが沸くはずもなく、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
で、ようやく落ち着きを取り戻して本体を調べると間違いなくMさんの物である事が分かってくる。

ただし、カメラロールに新しい写真が10分程前に何枚か追加されてた。
Mさんの自転車をいろんな角度から撮影したものだった。
以上、失礼しました。でも、全部事実です。

お通夜のお知らせ

内容自体は怖くないけど、聞いてる時何故かゾクゾクッとした話。

上司の弟の友達の父親が亡くなった。
死因は知らないが、急に亡くなったという。
それはともかく、そのお通夜の案内が電話で来た。

「○月×日に△△□□のお通夜があるので、来てください」みたいな内容。
寝耳に水とはこういう事とは言わんばかりで、すぐさまママさん達が集まりその友達のお母さんを慰めたそうだが、少し様子がおかしい。

なんでも「2時間前といえばてんてこ舞いで電話なんか出来る訳がない」とのこと。
しかも「ウチで若い男性なんていない。いるとすれば息子しかいないけど小学生だ」
電話の声はとても若い感じがする男性の声だった。
では、親戚が電話したのかというとそうでもないという。
ママさん達に来た電話は2時間前、亡くなったのも2時間前、電話する暇は無い。
無論親戚にも電話する暇は無い、それになにより当時の電話番号は連絡網で知るものだった。
親戚がすぐさま連絡する訳がない。
「では、亡くなったお父さんが電話したのかねぇ・・・」と友達のお母さんは呟いたそうだが、上司のお母さんと他数人は違うと思ったそうだ。
「電話越しに聞いた男性の声と前に聞いた事がある旦那さんの声が全然違った」

後日談としては、親戚もその男性の声の電話を聞いて亡くなった事を知ったそうだが、肝心の声の主は親戚中の誰の声でもなかったらしいよ。と上司は笑いながら言っていた。

祖父母の家

いま会社の上司から聞いた話。

祖父母の家は地元で割りと有名なお化け屋敷らしい。
4人兄弟だが、一番下がまだ幼稚園より下の時らしいから16年ぐらい前だと思う。
3人同時に170cmぐらいの身長の白い人形のもやを見たとか。
祖父が寝てる時に金縛りにあって、枕元に件の白い人形のもやが現れて、死んだ弟の名前を呼んだら消えたとか枚挙に暇がなかったそうだ。
木造住宅だから。の割には誰もいない廊下や階段でギシッギシッっていう音が常に聞こえたり。んで、まあ次からが本題というか、個人的にゾッとした内容。

因みに海が近い北海道の小樽っていう所らしい。
ただ北海道の地名は全然分からんから小樽に海ねーよと言われても知らん。

1.祖母も祖父も健在の時の事、古いテレビを貰ったそうだ。
ダイアル式でチャンネルをダイヤルで回して変えるというアレ、しかもモノクロでおまけにでかい。
そんな訳で置き場所に困ったが、父親の部屋に置くことにした。
ある日の夜中、上司がバイトから疲れて帰ってきた。
北海道ならではの寒さは分かるが、その日はそれに輪をかけてとても寒いと感じたそうだ。
だが、そんな日もあるだろう。と考え父親の部屋の前を通ったら

――――ボソボソ
何を言ってるか分からないけどそのボソボソと部屋の中から聞こえた。
耳を澄まして聞いてみる。
――――ボソボソ
・・・寝言か?
父親の部屋の扉に耳を付け聞く。
―――南無妙法蓮華経
が聞こえてきた。
怖い、でももしかしたら父親が金縛りとかにあって助けを求めてるのかもしれない・・・
と思って、思い切って扉を開けた。
そこには、南無妙法蓮華経は聞こえなかったが、ザーっと砂嵐状態でTVに電気が煌々付いていた。
「は?」と上司は一瞬固まった。

それもそのはず、何故なら電源ケーブルが断線している筈で電気が点くのはありえない。
だが、事実現在点いている。
だから部屋に入った、電気を消すためにただ一歩だけ。
しかし父親の部屋に入った瞬間、そのTVはブツンと言って電源が切れてしまった。
次の日、怪奇現象のくだりは言わなかったが、父親に金縛りとかあったかを聞いた所全くなかったそうだが、しかし気味が悪いので物置に突っ込んだそうだ。

2.祖父母が亡くなってからの事
祖父母が亡くなり、整理しようか。と言う事で件の古くて気味の悪いTVをはじめ色々と捨てる事にした。
しかし、物置を漁って見るが件の古いTVが「無い」
家の中に物置があるので、泥棒が出ない限りは無くなる道理がない。
そもそも、転売とかするにしてもかなり古いものをを盗むというのは考えにくい。
しかし無くなっていた。
結局、家中ひっくり返して探したが見つからなかった。

3.上司が高校生の頃、祖父が18日に亡くなった(月は確かに聞いたんだが失念)
それから1年後の18日に祖母も亡くなった。
病気も何もせず、ただ、歳だからか急にぽっくり逝ったという。
上司は、祖父がが亡くなってからというものの、祖母が口癖のように言っていた事が今でも耳から離れないと嘆いていた。
曰く「○月18日にお迎えが来る」

ある日の祖父母の家にいた日のこと、その日はとても天気が悪く小樽の海は真っ黒、更に天気が悪いから曇っていて家の中まで真っ暗。
ザザーンザザーンという波打の音がなんとも恐ろしい。
が、恐ろしいのはやはりこの家に出る、人型の白い煙のようなもやもや。
――――ほぅら、また聞こえてきたよ
そう、何か40kg以上のモノが載り歩いているようなギシギシっという音が、階段と廊下から聞こえる。
件の白いもやもやが出る前兆だという。
そしてふすまの扉からにじみ出るように、ぼぅっと白い人型のもやもやが現れた。
家中が真っ暗な所にハッキリとしたコントラストの白いもやもや。
家の外からはザザーンザザーンという波打の音。
雰囲気が超恐ろしかったという。

因みにもやもやは上司の側に来て、そのまま足元から煙にようにフワッと消えたという。
その話を祖父母にした所、返ってきた答えが
「ネズミだろ」
それに対し上司は「40kgぐらいの重さの、人型の白いもやもやのネズミがいて堪るか」と言ったそうだ。

その話をしてから上司はこう言った。
「その日その時初めてもやもやをじっくり見たけど、両腕だけがえらい長かったんだよね。人間の霊とかじゃないと思うんだけど、どう思う?」

あと白いもやもやの他に「キャッキャッ」とか「もーいいーかーい」とかの子供の声だけが聞こえるのもあったが、それも祖父母はネズミだろと言っていたそうだ。
子供の声を出すネズミがいて堪るかと上司は突っ込んでいたそうだ。

祖父母が亡くなり、件の家を手放す事になった。
元々貸家なんだが、地元じゃ有名なお化け屋敷。
なので、形だけでもお祓いしなければ不動産屋が取ってくれないとのこと。
そこで霊能力者にお祓いを頼む事にした。
霊能力者は快諾してくれたようだが、いざ来て貰うと顔が青く汗が止まらない様子。
大丈夫かと聞けば、堰を切ったように「私では出来ません、私では出来ません」と仰る。
何故だと聞いても「私では出来ません」の一点張りだったそうだ。

上司は「その後、家はどうなったかは知らないけど4年前見に行ったらまだあった。でも、家に人が住んでる気配はなかった、そろそろ壊されてると思うけど壊したら壊したでなんか祟りありそうだよね」

連れション

海の傍の民宿
高校生の時、部活の合宿で海の傍の民宿に泊まり込んだことがあった。
怖い顔をしたおっさんが経営する民宿で、安くてボロボロで今にも倒れそうな木造だった。
夜、板張りの広い部屋で皆で雑魚寝していると、突然俺は揺り起こされた。

寝ぼけ眼でぼんやりと起こした奴を眺めると、そいつが「トイレに行きたいけど、一人じゃ怖い」と俺に囁くように言った。
俺は眠くてしょうがなかったが、そいつが「頼むよ お願いだよ」としつこく頼むので、分かった分かったと言って布団から抜け出して、皆を起こさない様に、そいつと抜き足差し足で部屋を出た。

トイレはどこにあるんだよ、と聞くと、海の家の外にあるんだが、臭いし汚いし、何より明かりが無いから暗くて怖い、とそいつは情けない声を出した。

俺はやれやれと思いながらそいつと廊下を抜け、海の家の玄関までやってきた。
そして玄関の戸に手を掛けようとした時、突然「何しよんかあぁ!!」と大声が響いた。
心臓から口が飛び出しそうになった俺が慌てて振り向くと、民宿のおっさんが懐中電灯をこちらに向けながら憤怒の形相をしていた。

「いや、こいつがトイレに……」と言おうとすると、おっさんが「出て行けぇ!!」と言いながら何かの粉をこちらにぶつけてきた。
塩だった。

俺は訳も分からず「はい、はい、すんません」と言いながら出て行こうと戸に手を掛けると、
「お前じゃない!!そいつだ!!」とおっさんは叫んだ。
俺が混乱しながら突っ立っていると、突然パチンと音がして辺りが明るくなった。
おっさんが電器を点けたのだった。

と、隣にいたはずの友人がいなくなっていた。
代わりに、俺とソイツが歩いて来た道筋に、濡れた足跡が点々とこちらまで続いていた。
「危なかったな。沈められるとこだったぞ」、とおっさんは言った。

おっさんに「もう寝ろ」と言われ、全身鳥肌を立てながら部屋に戻ると、俺以外の全員の部員が布団で寝ていた。
抜け出していたのは俺だけだった。

山小屋の女

今年の夏、今までの人生で一番怖い体験をした。
最初は誰かに話すなんて考えられなかったけど、だいぶ落ち着いてきたので投下。

自分の家は中国地方の山奥の田舎にある。
俺はそこでちょっとした自然愛護のクラブに所属していて、いろいろイベントを企画したり参加したりしていた。
家から車で20分ほどの所に「○○さん」と呼ばれる山があるんだが、主にその山を舞台にしてクラブのメンバーで登山や、キャンプなどを催していた。

その○○さんで近々、一般の参加者を募って、クラブのメンバーで山のガイドをしよう、という企画が持ち上がった。
○○さんの魅力と自然の美しさを、もっと地元の人に知ってほしい、というのが発端。
俺はその企画に賛同し、イベントの下準備などを受け持つことになった。

俺の担当は必要な道具などの準備と、ガイドする場所の選定。
何度も上った山だけに案内はほぼ熟知しているが、やはり一度山に行って実際に歩きながら考えようと、休日に一人で○○山へ向かうことにした。

その日は良い天気で、絶好の登山日和だった。
俺はデジカメを片手に、要所要所でガイドのパンフで使う写真を撮りながら、純粋に登山を楽しんでいた。

そうして、目標地点まで半分あたりに来た頃。
湧き水の出る休憩所で一休みしていると、少し天気が翳ってきた。
帰ろうかと思ったが、イベント当日では、もっと上の方まで上がる予定だ。
もう少し歩いて、天気が荒れそうなら引き上げようと、荷物を持ち直す。
と、
「―――……」

「?」
何か聞こえた。
人の声みたいだったけれど……と、周りを見渡す。
自分が歩いているのはちゃんとした登山コースだ。別に人と遭遇しても何もおかしくは無いが、前にも後ろにも人影は無い。
風の音が人の声のように聞こえただけか……と思い直して歩き出すと、

「―――……」

また聞こえた。
聞こえてきた方は、コースからは外れた藪の方からだった。
男とも女ともつかないが、か細く、弱弱しい感じの声。
「誰かいるんですかー!?」
もしかすると怪我でもした登山客がいるのかと思い、声を張り上げた。

だが、返事が無い。
少し躊躇ったものの、藪の中へ向かってみることにした。
気のせいならそれでいい。けれどもし助けを求める人の声だったらと思うと、確認せずにはいられなかった。
「誰かいるかー!?」
声を上げながら進んでいく。
藪は小柄な人ならすっぽり隠れてしまうほど高く、もし人が倒れていたら発見は困難だろう。
藪を掻き分けながら注意深く周りを確認して進んでいくと、唐突に、開けた場所に出た。

そこは、自分も初めて見る場所だった。
あれだけ密集していた藪が急に無くなり、湿った土の地面に、ぽつぽつと木が等間隔で生えている場所。
それらの木には注連縄?がついており、その木々に囲まれるように、朽ち果てた木造の小屋のようなものがぽつんと建っている。

それはどこの家にもある、物置小屋のように見えた。
俺はしばらく言葉を失い突っ立っていたが、

「―――……ょ」

またあの声が聞こえて、ハッと我に返った。
この先の小屋の方から聞こえた。間違いなく人の声だ。
確認しなければ……と思ったが、何か嫌な予感がした。

まず、ここは何だろう。
こんな場所、俺は知らない。今まで何度もこの山に登ったが、こんな場所があるなんて聞いたこともなかった。
周りの木々で光が遮られているため薄暗く、どうにも不気味な感じがする。

「―――……ょ……」

それでも、聞こえてくる声は気のせいじゃない。
人がいるなら、確認しないと。
しかし大声を上げて呼びかける気にならず、息を潜めて、足音を立てないように、静かに小屋へ近寄っていった。

……そうして小屋の前まで来て、俺は後悔した。
小屋には扉があったが、その扉にはボロボロになったお札らしきものがびっしりと貼り付けられていた。
元は白かったのだろうが、遠目には茶色っぽく汚れていたそのお札が、扉の色に溶け込んで見えなかったのだ。
扉には南京錠がついていたが、経年劣化によるものか壊れていて、ぷらんとぶらさがっているような状態。
そのせいで扉が少し開いていて、隙間が出来ている。

「―――……ょー……」

声が中から聞こえた。
この時俺はもう泣きそうな心境だった。
普通に考えて怖い、あまりにホラーすぎる。ここから逃げたい。

その一方で、冷静な思考もあった。幽霊や怪物なんているわけがない。
浮浪者の類かもしれないが、山で迷ったか怪我でもした登山客が、一時しのぎの仮宿としてここを使ってるとしたら。
そう、やはり確認くらいはしたほうがいいんじゃないか?……と。

どのくらい迷ったか、俺は後者の思考に従った。
扉に手をかける。
くいっと押すと、メキメキッ……と埃をボロボロ落としながら、扉が開いた。

中を覗き込むと…………人がいた。
こちらに背中を向けて、部屋の中心に立っている。
……女だ。
着物なのだろうが、まるでボロボロの白い布切れを纏ったような服装で、頭はボサボサ、腰辺りまで伸びた白髪混じりの黒髪。
破れた着物の隙間から見える手足は、恐ろしいほどやせ細っていた。

その足元には、犬か狸か、動物の死骸が転がっていた。
まだ新しいのか、流れた赤黒い血が床を濡らしている。

「…………ッテー………テー……カー……ョー……」
その女性は、何かぼそぼそと呟いていた。
歌だろうか。聞き取れないが、一定のテンポを感じる。

ああ、これは駄目だ。
現実離れした光景を見ながら、俺は妙に冷静にそう思った。
見てはいけないものを見た。
関わってはならないものだ……逃げよう。
俺が一歩後ずさると、女がぐらっと揺れて、顔を左右に振り始めた。
ぶるぶる。
ぶるぶる。
ぶんぶんぶんぶん……
振り幅が段々と大きくなり、長い黒髪が大きく振り回される。

「テーーテーーーシャーーーィィカーーーョーーー。」

何を言ってるのかさっぱり分からないが、とにかく異常だった。
俺は逃げた。
全力で来た道を走る。たぶんこの時、俺は無表情だったと思う。
全ての感情を凍らせて、何も考えずに逃げる。
少しでも何か考えれば、悲鳴一つでも上げれば、正気と恐慌の拮抗が崩壊してしまうと思った。
パニックに陥るのを阻止するための本能だったのかもしれない。
藪を掻き分けて、元の登山コースに転がり出る。
そこで呼吸を整えながら来た道を振り返ると、20メートルほど離れた藪の中から、黒い頭が出ているのが見えた。

「―――――。」

硬直した。
頭しか見えないが、あの白髪混じりの黒髪は、さっきのあいつだ。
動かずに立ち止まっているようだが、追ってきてる?

すぐに一目散に逃げた。登山道をひたすら駆け下りていく。
走りながら、首だけで後ろを見る。
登山道横の木の陰に、白い着物が見えた。さっきよりも近くにいる。

また走る。走る、走る……振り返る。
木の陰に白い着物。さっきよりも更に、近い。
「ううううう……!」と、恐怖でうめき声が漏れた。

"だるまさんが転んだ"を連想してもらえば分かり易いだろうか。
走りながら後ろを振り返ると、さっき振り返った時より近い位置に立っている。
全力で逃げてるのに、振り返った時、そいつは今まで走っていた素振りもなく、さっきよりも近い位置に立っているのだ。

もうすぐ麓の、民家がある集落へ出る。
また振り返ると、3メートルくらいの位置に立っていた。
一瞬だが顔が見えた。目元はべったり張り付いた髪で隠れていて、口がモゴモゴ動いていた。

前を向いて、走る、走る。
もう振り返る勇気は無かった。
次に振り向いたら、俺の背中ぴったりのところにいるんじゃないか。
ゼヒュッ、ゼヒュッ、と呼吸困難寸前になりながら、集落へ。
最初に目に付いた家に飛び込み、呼び鈴を狂ったように連打した。
「誰か!!誰か!!」

俺が騒いでいると、家の中からおばあさんが出てきた。
「なんだいな。どがぁしただ?(どうした、の意味)」

俺の様子を見て驚くおばあさん。
そりゃそうだろう、いきなり大の男が息を切らしてやってきたら。

「すいません、……あの、俺の後ろ、何かありませんか?」
「…なんもあらあせんがな。」
言われて恐る恐る振り向くと、確かにあの女の姿は無かった。

……これが俺の体験。クラブの仲間に相談しようかと思ったが、誰かに話すのも怖くてやめておいた。
予定していた○○さんでのイベントも、当然俺は参加拒否。

あれは何だったんだろう。
最初は詳しく調べる度胸なんて欠片も無かったが、今はだいぶ恐怖も薄れてきた。
来年あたり、少し探りを入れてみようかなと思っている。

中国の暗部

全く関係ありませんが私のスペックからいきます。
28歳 独身♂
半年前まで仕事で上海に住んでいました。
上海には日本と中国間での材料のやり取りをする為の貿易会社として事務所があるだけで、工場は上海の隣町の某市にありました。

私は当時、輸入・輸出及び工場側の品質の管理を任されていた為、某市と上海を行ったり来たりしながら3年間程中国で暮らしていました。
赴任当初は某市にある工場の方で品質管理の勉強をしていた為、実質中国の思い出はほぼ某市の方に偏っています。
その某市での体験を書かせて頂こうと思います。

某市には、上海同様日本人がたくさん駐在しており日本人街の様になっている場所もあります。
週末になると日本人街で食事をしたりお酒を飲んだりして遊ぶのですが、そういう所には日本人客目当ての裏DVD屋や小銭をせびりに来る中国人がたくさん居ます。
中には盲目の人を使い、ニコと呼ばれる楽器を演奏させてお金をもらおうとする人まで居ます。
そんな中でも日本人の数が圧倒的に多く、警察もうろうろしている為安全なので私も週末にはよく街に出て遊んでいました。

そんなある日、酔った勢いで裏DVD屋からDVDを買った事があり(日本のAVのモザイク無し)そのDVD屋のおっちゃんも人柄が良く、フレンドリーに接してくれる為、その後も会えば挨拶をし、片言の中国語で会話する関係になっていました。

DVD屋のおっちゃんは荷台付き自転車でDVDを売りながら移動しているのですが店も構えており、店の方ではタバコや酒、大人のおもちゃを販売していました。
その店には小さな子供が3人と店の奥には無口なおっさんが一人いて、子供達の面倒はその無口なおっさんがみていました。

私は週末の度に日本人街へ繰り出していた為、毎週末このDVD屋おっちゃんには会っていて2週間に1回は店のほうにも顔を出しており、子供達や無口なおっさんも私には大分親しみをもってくれていたと思います。
そんな生活を1年ほど送り、2年目からはこの某市と上海を行ったりきたりする生活が始まりました。
某市と上海を1週間のスパンで行ったり来たりする生活でしたので、次第に某市の日本人街に行く回数も減っていました。

行ったり来たりの生活を1年半ほどしている内に、某市の工場に新しい品質管理の担当者が派遣される事になり、私は上海のみの担当になりました。某市の生活ともお別れになるので最後の1週間は某市で遊びまくってやろうと思い、平日でも日本人街で遊んでいました。
最後にDVD屋のおっちゃん達にも挨拶しておこうと思い、DVD屋のおっちゃんの店を訪ね、皆にお別れとお礼を言うと皆も、せっかく仲良くなったのに残念だ・・ と言ってくれ、別れを惜しみ合いました。
この時、奥に居た無口なおっさんが居なかったので、彼はどこいったの?と訊ねるとこっちで働いてお金が溜まったので故郷に帰ったという説明を受けたので、まあ最後だが仕方ないか・・・と、店を後にしました。

その後、上海の仕事に没頭し某市での暮らしも記憶から薄れていき、中国3年間の任期を無事果たしました。

私は某市と上海の両方で働いておった為、送別会は両方の会社からやってもらえる事となり、某市側での送別会の際に、再びあの某市の日本人街に足を踏み入れる事になりました。
最後に某市日本人街に行ったのは、DVD屋のおっちゃんの店にお別れを言いに行ったのが最後だったので、半年ぶりの某市日本人街に少しわくわくしていました。

半年ぶりの某市日本人街に浮かれながらも、無事に送別会は終了。
以前から仲の良かった某市工場の工場長(日本人)と二人でスナックで飲む事になりどの店に入ろうか~と、一直線に300m程ある日本人街をうろうろして、可愛いお姉ちゃんの居そうな店を物色していました。
今さらですが、この日本人街は真っ直ぐ伸びており道の両側にスナックやら飲食店がずらーっと立ち並んでおり時々、右や左に抜ける細い抜け道があるくらいで基本的には1本道。
この通りの要所要所に最初の方で書いた、小銭をせびりに来る人達が様々な方法でお金をもらおうと必死になっています。

この小銭せびりの人たちは、色々な手段で日本人からお金をもらおうとします。
小さな子供を利用し花を売りつけに着たり、目の見えない人の楽器演奏、大怪我をしている人をつれてきては治療代等・・
これは有名な話ですが、この乞食の人たちは個人個人でお金せびりをしているわけではなく、元締め的な存在が居り、夜遅くなると迎えが来てどこかへ皆まとめて帰って行きます。
そしてまた次の日の夕方くらいから各自の縄張りへと戻されるわけです。
この乞食の元締めがどういう存在なのかは分かりませんが、小銭をせびりにくる人達の目は必死そのもので笑顔等殆どありません。

話を戻しますが、こういう乞食の人たちをうまく避けながら店を物色していると妙に違和感のある乞食の人が目に止まりました。
しばらく見ていると工場長から「最近あいつよく居るよ、怖いからあんま見んな」と言われ、何が怖いの?と聞き直すと「見た目がやばい」という回答がありました。
私の感じる違和感の原因や見た目がやばいという言葉がどうしても気になり、その乞食さんを近くで見たい衝動に駆られ近づいてみる事にしました。

そしてその乞食の人を見た瞬間、なんか背筋が凍るというのか、目の前が真っ白になるというのか表現しきれませんが絶句しました。
あのDVD屋のおっちゃんのとこに居た無口なおっさんが乞食になっていました。

ただ、無口なおっさんがただ乞食になっていただけなら、お金溜まったんじゃなかったの?事業失敗したか~?くらいの軽いノリで話しかけることができますがこの時、私は言葉も出せず一緒に居た工場長の方を見ることもできないくらいのショック状態で、じっと変わり果てた無口オッサンを見ていました。

何がどう変わっていたかと言うと、両足はかなり上の方(腰くらいの様に見えた)から無くなっており両目も潰れ、手の指も数本しか残っていない状態で、白い布か包帯の様な物がところどころ巻かれておりこの状態で生きてられるのか・・ という姿になっていました。
この姿でスケボーの様な、板にタイヤがついた台車に載せられ、ちょこんと歩道の隅でじっとしていました。
オッサンの乗る台車の前には金属製のお皿のが置いてあり、2,3枚の硬貨が入っていました。

あまりのショックで一気に酔いも冷め、とりあえずあのDVD屋のおっちゃんの店を訪ねる事にし、その場を離れました。
店のあったはずの場所に行くも、店はすでに改装され印鑑屋?石を彫って印鑑を作るとこに変わっており店主も変わっており、全く違う店になっていました。

ですが不思議な事に店の奥には前の3人居た子供のうちの二人が居て、私にニコニコしながら手をふってくれていました。
事情を聞こうと思い近づいて話かけましたが、新しい店主は子供に「おい奥にいってろ」と言い、会話をさせてくれませんでした。

仕方なく店を出て、無口おっさんの居る方向にはどうしても行く気になれなかったので、ホテルに帰りホテルのロビーのBARで軽く飲んで寝ました。

何故子供だけ店に残ったままなのか、何故子供が1人居ないのか、無口おっさんに何があったのか・・色々と分からない事はありますが、私は無口オッサンが単なる事故でああなったとは思えません。真相は詮索もしませんし、知りたくもないですが・・・

※大して怖くなくてすみません。個人的にはすごく怖い体験だったので書かせてもらいました。

明智光秀にインタビュー

:インタビューよろしいですか?

明智 いいよ、これから秀吉が来そうだから鞍上からだけどね(ごめんね

:謀反を起こしましたが。

明智 まあね。未だに後悔しているところもあるけどね。俺も部下にまとまって意見されたら逆らえんもん。
ただ蘭丸のホモ野郎だけは、みんなにとってすがすがしい結果になったよな。

:随分サバサバしているが?

明智 いや、実際やっちゃったらあとはやること決まっているしね。
俺も行けるとこまで行くしかないよな。ベストはつくしてみるつもり。

:羽柴秀吉の反撃は予想していたのか?

明智 最悪の結果になっちゃったね(苦笑
まあ秀吉ならしょうがないなと思える部分はあるけどね、あいつ無茶苦茶だもん。

:なぜ予想されてた?

明智 いや、それはわかんない。秀吉だけはね。うちの部下と内通してたかもね。よくわかんないよ。

:今後天下は誰のものに?

明智 それはわかんない。俺がうまくやれたらと思っているけど、秀吉かもしれないね。
もしかすると全然予想してないダークホースがくるかもね。佐々ちゃんとかさ。

:最後に一言
明智 まあ頑張ってみるわ。ちょっと死ぬかもしれないけど、それまで応援しててね。
あと蘭丸死ね。死んじゃったけど氏ねじゃなくて死ね。

閉じ込められた悪徳業者

畳・床板をめくり這いまわって写真を撮り、「こんなに湿気ててボロボロですよ換気しなくちゃ…」って無理やり換気装置を着ける業者が近所で流行ってた。
向いには老夫婦が住んでて、お婆さん(耳が遠い)が一人の時にやってきて畳をあげて業者が潜ってた→お爺さん帰宅(なんで畳が…?よっこいしょ・元に戻す)
忘れ物を取って再びお出かけ→業者出れない!お婆さんを呼ぶ(聞こえない!!
呼んでも叫んでも気がつかない! お婆さんもスッカリ忘れてて家事をしてた。
時間が経って「へんな叫び声が聞こえる…」のお隣さん通報でようやく発見された。

ちゃうねん!ちゃうねんって!!

今日コンビニでバイトしてた時、外国人(欧米系)の小学生の男の子が立ち読みをしていた。
珍しいな~と思いつつその子を眺めてたら、入店してきたおばさんがその子に注意し始めた。

「あんたは!!寄り道なんかして!!」

どうやらおばさんはその子の母親で、外国人と思ってた子はハーフだったようだ。
その子はすごく焦って、
「ちゃうねん!ちゃうねんって!!」
「今日発売の本があってな、、、」
とコテコテの関西弁で言い訳をしていた。
どう見ても外国人が関西弁をしゃべってる時点で、かなり笑いそうになっていたんだが
男の子もかなりパニクってしまったらしく


「ちゃうねん!ちゃうねん、、、ヘイ、カモォォン!!」

いきなり流暢な英語!?ってかカモォォン!!?ととうとう吹き出してしまった。
その後笑いを思い出し笑いを堪えながらレジをするのが大変だった。

久しぶりに声出して泣いた

お腹が空いたのでカップ麺を暑い中買ってきた
フタを空けてかやくを入れてキレイキレイを3プッシュした
久しぶりに声出して泣いた

うちの両親の馴れそめ

うちの両親の馴れそめは結構笑える。

母親は東大出の学者で大学教授。専門分野では今では結構名の知れてる博士。
父親は高卒で町のクリーニング屋の3代目でチョイワルぶってる親父、かなりの格差婚。

親父は、若い頃はワルで馬鹿だったけど、ちょっとハンサムってことで商店街では人気者。
母親は、頭がめっちゃ良くて、良い学校に特待生で入学したりと、地元の期待の星だった。

年が同じで、実家が近所だったが(ちなみに東京の下町)、別に幼なじみというほどでもなく、親父にとって母親はずっと高嶺の花の憧れのお嬢様で、恥ずかしくてまともに口も利けなかったと。

時は流れ、両親26歳のとき、院生だった母親に病院長の息子とかのお見合い話が来た。
その頃はもう真面目なクリーニング屋だった親父は、その噂を聞いて大ショック。
「失うものは何もない」と覚悟を決めて、母親に猛アタックをかけた。

母親はまだ結婚するつもりなんてなかったし、よく知らなかった親父からの突然のストーカー行為(当時そんな呼び名なかったそうだが)にも困っていたがある日、家の近くの歩道橋の下で親父が待ちぶせしてたら、やってきた母親がそれに気をとられて階段で足を踏み外したんだそうだ。

すかさず助けに入った親父、落ちてきた母親を見事受け止めたが、自分は地面に顔面を思い切りぶつけて前歯が4本折れた。

半年後に結婚。

父親が差し歯を光らせながら曰く
「そこで自分の身を犠牲にして守ってくれた父ちゃんに、母さんは惚れてしまったんだ」

母親こっそりと俺だけに曰く
「顔がそこそこ良いのだけがお父さんのとりえだったでしょ?それを傷物にした以上、責任を取らないといけないと思って…」

そういうことだそうです。

美人というわけではありませんが、バリバリでかっこいい自慢の母親です。
そして母親があの世代の女性としては珍しく学者として成功できたのは、自営業の親父が家を守って支えてきたから。
母さんがドイツの大学に3年間赴任した時は、俺と2人で寂しそうだったけど頑張って強がってた。
そんないつもかっこつけてる父親のことも尊敬しています。

だけどな両親よ、
父親「せっかくの母さんの遺伝子だったのに俺が馬鹿なせいでお前が…」
母親「ごめんね、お父さん似の顔に産んであげられなくて…」
とまったく別々に申し訳なさそうに言われた時はかなり傷ついたんだぜぃ。

家事をする時になぜかテンションがあがる

家事をする時になぜかテンションがあがる。
浴槽を洗いながら、やきいもや焼きとうもろこしの屋台の歌をシャンソン風にアレンジして美輪明宏の真似しながら歌ったり、布団を取り込む時はわざと一度に何枚もの布団を肩に担いで
「ウッオオオー!!亀田のフトン泥棒じゃ!!奪ってみい!!取ってみい!!」とわめきながらちょっとガニマタ風に歩いて部屋に戻ったりする。

この間も掃除機をかけながら「アトムは溺死でホイヒャララ!!戦争!」と自作の歌を歌いながら
掃除機の上をピョンピョン飛び跳ねてたら、すぐ後ろで玄関の郵便受けにストンと夕刊が投函される音が聞こえた。
人に聞かれた、と思ったら絶望感で心が氷点下まで冷えて、その日一日はもう何も出来なかった。

面倒見の良すぎる母

面倒見の良すぎるうちの実家の母親。
いろんな人から電話が来る。
具合が悪くて寝ていても、鳴ってしまったら出ずにはいられない性格。

母の具合が悪かった時、仕事先に、父からの電話。
会社から家にかけたがずっと話中で繋がらない、心配だとのこと。
早めにあがれる自分が実家に駆けつけた。

母は部屋でぐっすり寝ている。
そして、FAX電話の上には実家の猫がふんぞりかえっていた。
このために受話器が浮いて、ずっと話中だったらしい。

起きてきた母が、「そういえば電話が鳴らないなと思いながら寝てた。よく寝たわあ」とすっきりした顔で言った。

猫よ、ありがたいが、その後の近隣への事情説明は大変だったぞ。

ズル休み計画

小学校の低学年だった頃、学校をズル休みしたかった俺は、体温計の温度を高くして母親に見せれば学校に休みの電話をかけてくれるだろうと考え、テーブルの上のお茶を入れたての親父の湯のみに体温計を突っ込んだ。
引き上げてみると、体温計の先端が割れて中の水銀が流れ出していた。
体温計を壊したしまったことに焦った俺は慌てて庭に体温計を捨て、そのまま学校に行ったのだが、親父の湯のみのお茶を入れ替えることを忘れていた。

ダイエット中だから

ダイエット中だから、もし食べ過ぎてたら厳しく注意してねって彼に言ったら

「こら!つまみ食いすんな!ブス!」

いや。。。ブタならまだゆるしたんだけどさ。。。

笑いの神降臨

ふらりと寄った喫茶店で女二人向かい合って談笑してたんだけど、一方の女が喫茶店でくしゃみした弾みに顔をパスタの皿につっこんだんだ。
向かいにいた女は間髪入れず口に含んでいた飲み物を彼女のつむじに吹き出した。
俺は爆笑のあまり持っていた熱々のコーヒーを股間にぶちまけ絶叫した。

俺は病院に搬送されたからこのあとどうなったかは知らん。
ただ、あの瞬間、あの喫茶店には確かに笑いの神が舞い降りたのだ。

ツッコミどころ満載

うちの近所にあった(もうない)秘宝館にあった義経の頭蓋骨はしゃくれあごでブ男っぽかったな。
もっとも、子供の時の骨だっていうから成長してマシになつたかもしれないけど。

遠足の思い出

小学校の頃、家はどうしようも無く貧乏だった。
父親を交通事故で亡くし母一人子一人の母子家庭だった。
小学校の時、俺は遠足におやつを持っていく事が出来なかった。

前日のホームルームで「バナナはおやつに入りますか?」と戯けるクラスメートを横目に絶対行かないと心に決めていた。
放課後帰ろうとする俺を理科室に来るよう担任の先生に言われた。
理科室へ行くと先生は目に涙を浮かべながら300円を握らせてくれた。
そして続けてこう言われた。

「いいか、お前は他の子よりも先に人生の不条理や苦痛を感じられ幸せだと思え。親の代では負けたかもしれない、でも其れはお前の責任じゃない。この悔しさをバネに伸し上がってお前の代では勝て。もしお前の子供が悲しい思いをする事があったら其れはお前の責任だ。金をやるのは一回だけだ。大切に使え。」
俺はその時買ったビックリマンのチョコの味を忘れない、そしてそのシールは今でも大切に保管している。

運動不足解消

高校時代、独り暮らしをしてたとき俺は運動不足解消のため部屋で素っ裸になり、イヤホンをつけ大音量でラルクを聴きながら、ジョジョを彷彿とさせる奇妙なポーズをとり、踊りながら見えない敵とバトルを繰り広げていた。

そんな最中ふと玄関に目をやると、トイレットペーパーを持った大家さん(女)が呆然と突っ立っていた。
ジョジョのポーズのまま大家さんと目が合い硬直する俺。
大家さんが「これどうぞ」みたいな事言ってトイレットペーパーを置き、そっとドアを閉め去っていった。
俺は静かに、見えない敵とのバトルを再開した。

天然ホスト

俺「ちゃんと料理とかするんだ?偉いじゃん、得意料理とかあんの?」

後輩「まー、適当に色々・・・あっ、逆に先輩は何か好きな食べ物とかあります?」

俺「えっ?えー・・・ひつまぶし、かな」

後輩「じゃあそれ得意になっときますね」

俺「お前・・・」




もう少しで惚れるとこだった
後輩男だけど

ミケノビッチの太鼓

ミケノビッチの部屋に遊びにきた友人は、部屋の真ん中に置いてある巨大な太鼓を見て、不思議がった。

「ああ」ミケノビッチは答えた。
「これ,時計なんだ。声で時刻を教えてくれるんだよ」
「フーン。しかし、こんな大きな太鼓型時計なんて初めて見たな。どんな声を出すんだい?」

「よっしゃ」
ミケノビッチは、撥を取り出して,太鼓を叩き始めた。
「ドンドンドン!」
すると、ミケノビッチの言う通り、壁から時刻を知らせる声がしてきた。

「コラー!今何時だと思ってるんだ。もう真夜中の1時だぞ!」

秘伝のタレ

関西ローカルだろうけど、深夜に「70年間切らす事なく継ぎ足しを続けていた秘伝のタレ」っていうのの中身を見る番組があった。
探偵ナイトスクープのパクりみたいなやつで。

新世界の串かつ屋が店閉めるとかで例の二度づけ出来ない、秘伝のタレを公開するっていうやつだったけど中から出てくる出てくる、小バエやゴキブリの死骸w
よくわからん虫の卵とかも入ってて途中からモザイクが入ったw
何故か現場のスタッフも店のオヤジもスタジオの客も大爆笑www

結局、「外食する時は店の衛生も気を付けて選ぼうね」みたいな良く分からん結論が出たけど、すげーんだなやっぱ。

良く考えると衛生的に有り得ないもんな。
「ウン十年間切らした事のない継ぎ足しタレ」って、あとコンビニのおでん汁も成分を分析したら、客や店員の唾とか虫から出る分泌液とかがいっぱい入ってるらしいぞ。

途中で止めるから『無理』になる。止めさせなければ『無理』じゃなくなる

ワタミ社長「『無理』というのはですね、嘘吐きの言葉なんです。途中で止めてしまうから無理になるんですよ」

村上龍「?」

ワタミ「途中で止めるから無理になるんです。途中で止めなければ無理じゃ無くなります」

村上「いやいやいや、順序としては『無理だから→途中で止めてしまう』んですよね?」

ワタミ「いえ、途中で止めてしまうから無理になるんです」

村上「?」


ワタミ「止めさせないんです。鼻血を出そうがブッ倒れようが、とにかく一週間全力でやらせる」

村上「一週間」

ワタミ「そうすればその人はもう無理とは口が裂けても言えないでしょう」

村上「・・・んん??」


ワタミ「無理じゃなかったって事です。実際に一週間もやったのだから。『無理』という言葉は嘘だった」

村上「いや、一週間やったんじゃなくやらせたって事でしょ。鼻血が出ても倒れても」


ワタミ「しかし現実としてやったのですから無理じゃなかった。その後はもう『無理』なんて言葉は言わせません」

村上「それこそ僕には無理だなあ」

ピザって10回言って

今日大学で講義が始まる前、前の席の奴がそいつの隣の太った奴に向かって
「ピザって10回言って」
お前デブに向かってそれはねーだろ、とこの時点で;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブ
おまけにデブが一生懸命「ピザピザピザピザ」言うもんだから更に;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブブブ
とどめにその前の奴が自分の肘を指差して「じゃあここは?」って聞いたら

デブ「ピザ」

おまえどんだけピザが食いたいのかと

うちの両親は日本一すごい

父が定年目前で脳梗塞で倒れた。今でこそ一人で歩いたりできるんだけど、手術した当初は自分の名前もわからないぐらいでもう父は一生こうなんだと私は覚悟した。
ICUにいる父は面会時間が決まっていて、二人で病院に朝から晩までずっと待機して会える時間はずっと会った。
その待ち時間に母が父と結婚した経緯を話してくれた。

父は若い頃にも重い病気にかかって、当時診た医者がヤブだったのか悪くなる一方でサジを投げられて転院した。そこで看護婦をしていたのが母だった。
その頃は恋愛感情なんてなく、看護婦と患者として普通に接していたんだが、数年後無事父は退院。
地元に戻り就職して、その後特に連絡を取り合ったりはしなかったらしい。

しばらくして就職先で友達になった女性の家に、夕食をご馳走になることになった。
そしたらなんとその女性の妹は母。父と母はそれからたびたび会うようになり、何年か付き合って結婚。
結婚後、母は看護婦をやめたが、当時の看護婦仲間に会って父と結婚したことを報告すると、必ずあの人まだ生きてたの!って驚かれるぐらいひどかったらしい。だから母は父は絶対に死なない、きっと元気になるって私を励ましてくれたいた。そしてその通りになった。

半身がほぼ麻痺してるけど、父は必死にリハビリして母は毎日二時間のマッサージを欠かさない。おかげで父は一日に何キロも歩けるようになって、二人とも庭仕事が大好きで日焼けで真っ黒。うちの両親は日本一すごいと思う。

ママ、おーきーてー!

いま、うちの子は2歳半です。

うちの子が2歳になったばかりの頃、早起きな息子は、私と家内のことを
「おーきーてー!ママ、おーきーてー!」「パーパーも!」
と起こすのが日課のようになっていました。
余りにも早く起こすので、家内が「もう少し寝させて。ねっ?」というと、
「ママ、ねんね。パパ、おきよっか!」とこちらに、とばっちりが来たもんです。

時々、家内が仕事で息子が起きるより早くに家を出たりした朝には、
「んー?ママ、いないねぇー。ママ、どこかなぁ・・・」と探がし、
私は「ママ、仕事。お仕事に行ったよ。」と説明していました。
息子が、「ママ、仕事!お仕事行ったねぇ。」と納得する姿が可愛かったです。

そんなある日、家内が事故に遭いました。
信号無視の車に跳ねられたとのこと。内臓破裂で即死だったそうです。
幸いなことに、顔にはほとんど傷が付いていませんでした。

葬儀の際、2歳の息子には死というものが理解できないらしく、棺に入っている家内に向かって
「おーきーてー!ママ、おーきーてー!」と大きな声で呼んでいる息子の声が響いっていました・・・
「・・・ママはねぇ、もう起きないよ。」と私が言うと
「ママ、ねんね。パパは、おきてるねぇー!」との言葉で、私は泣き崩れてしまいました。

火葬場では、火葬炉に入っていく棺を見ながらきょとんとしていましたが思い出したように「んー?ママ、いないねぇー。ママ、どこかなぁ・・・」と探しだし、納得したように「ママ、仕事!お仕事行ったねぇ。」と大きな声で私に向かって話しかけてきます。
私は、「・・・そうだね・・・」というのが精一杯でした。


あれから、半年・・・

いま、うちの子は2歳半です。

今でも息子は、朝起きると、家内が寝ていた空になったベットを見て
「ママ、仕事!お仕事行ったねぇ。」と私に話しかけてきます。

幸運のカエル

ある日曜の午後。
緑色の大きなカエルに出会ったのは、私がいつものゴルフ場の第二ホールでプレーしている最中のことでした。
カエルはこんな風に鳴いていました。
「ケロケロ。ナインアイアン」
私は冗談気分でナインアイアンを選びました。 なんとその結果はバーディ!
私はカエルを見つめました。カエルはそしらぬ顔で
「ケロケロ。ラッキー。ラッキー」と鳴き続けていました。
私は半信半疑でカエルを掌に乗せて次のホールへ向かいました。
「ケロケロ。スリーウッド」 なんとホールインワンでした。
その日私は神懸かり的なスコアーで生涯最高のゴルフを楽しんだのです。

二日後。
私は会社を無理矢理休んでラス・ヴェガスにいました。
もちろん、例のカエルもいっしょです。 「ケロケロ。ルーレット」
早速カエルの指示に従い私はルーレットのテーブルに座りました。
「ケロケロ。クロの6」
私はカエルを信じて有り金全てをチップに変えると黒の6に賭けました。
結果は大当たり。 チップの山がテーブルの向こうから押し寄せてきました・・・

その晩。
私はラス・ヴェガスのホテルの一番高い部屋に泊まっていました。
「ありがとう」私は神妙な面持ちでベッドの上に座っているカエルに頭を下げました。
「何とお礼を言ったらいいものか...」
すると、カエルはこう鳴いたのです。
「ケロケロ。キス。キス」
勿論、いくらなんだってカエルとキスするなんて趣味はありません。
しかし相手は大恩ある不思議なカエルです。
私はひざまづいてカエルにキスをしました。
すると一瞬、眩しい光がカエルを包み込み、やがてカエルは美しい14歳の美少女に変身したのです!


・・・というわけで、あの少女がわたしの部屋にいたのです。裁判長。

救命救急病棟に配属された

9年目にして配属された病棟の看板に、「救命救急病棟」って書いてあったのです。がびーん。

いやー、人事の人さー「4階西病棟」つってたから、「4西、4西」口酸っぱく言ってたからさー、すっかりね、そのあだ名に踊らされて、病棟の本名聞くの忘れてたわー。

いやー、看護師になって9年。
お噂は かねがね。
なにやらこの世界には、救急病棟って病棟もあるらしいよ、と。

ほんとにあったかー。
結構、身近にあったー。
ドラマの中だけの架空の病棟かと思ってたわー。

で、まあ、勉強もかねて、ドラマ「救命病棟24時」をおさらいしたんですけど。
もうね、ドラマティック。
ドラマティック病棟と言ってもいい。

展開が、もうすごいわけ。
これが、あの有名なカードバトルかしら?デュエルかしら?
ってくらいの息を呑むドクターの処置シーン。

もうね、ずっと俺のターン。

メス、メス、クーパー、ガーゼ、吸引、
最後にクーパーを添えてターン終了!みたいな。

それに対する看護師がね、もう、全然物語を邪魔しない感じなわけです。
クーパーとかね、ガサ入れかってくらいゴソゴソ捜してる看護師、一人もいないわけです。
ガーゼを出すとき、袋の切れ目が一生見つからない看護師も、一人もいないわけです。

江口のキメ台詞が聞き取れなくて、5回くらい聞き返してる看護師も、ひとっこ一人もいないわけです。

かたや私、看護師暦9年の粋(すい)を結集しても、ドクターの言ってる言葉は、常時、呪文に聞こえるよー。

先輩の「急いで○○持ってきて!」の○○が、1回で聞き取れたことがないよー。


そんな私がね、ついに躍り出たわけです、救急のピッチに。
押すなって、押すなって、という上島ナイズされた動きで、満を持して。

加藤、登場!!!

登場して、3ヶ月。
全然、名前を覚えてもらえない。
1年目の超新人 後藤さんは、もう「ごっちん」とか呼ばれてんのに、私なんて、待てど暮らせど、無名。

加藤っていうね 安定感あるおなじみの代名詞を背負ってやってきたんですけど、

完全に「看護婦さん」って呼ばれてます。

「看護婦さん」の名を欲しいままにしてる。
隙あらば、看護婦さんにも「看護婦さん」って呼ばれる。

もうね、今日という今日は名前だけでも覚えて帰ってもらいたい。
救急病棟に、加藤ありき!と。

したら、

「今、入院した患者さん、即オペになったから!」
っつー怒涛の展開がドラマティック病棟に起こったわけ。
もう、一刻も早くオペが必要と。

担当の先輩やドクターは、すごい動き。
口々に指示を出し合いながら、ちょっとしたデュエルを披露。
それ、腕にデュエルディスクついてんじゃないかっつーくらいの雰囲気でね、もう、バトルと言ってもいいくらいのやりとりをしてるわけ。

飛び込まなきゃ・・・!あの渦に!渦巻きに!
ごっちんも私も、息を呑んだ。

だけど、そこはもう、小学校の長縄とびみたいでね、入るタイミングが・・・ちょっと・・・

って思ってたら、ごっちんが「何かやれることないですか!」
って飛び込んだ。
ごっちん、憧れるわー。
惚れるわー。
今の間合い完璧だわー。

したら、先輩も、ゆっくり頷いて、
「ごっちん、じゃあ、手術部位の剃毛、お願い」
つったわけ。

そしたら、ごっちんがね、あの憧れのごっちんがね、
超マゴマゴしてるの。マゴついちゃってるの。

「あの・・私・・剃毛したことなくて・・・」つってんの。

もう、そのボールいただき!とばかりに飛び出ましたよ。

「私、できます!」と。
「私、剃毛できます!」と。
「この加藤に、剃毛はお任せあれ!」と。

したら、先輩が、じっと私の名札を見てから、
「加藤さん、お願い!」
って頷いた。

ごっちんが、ちょっと悔しそうな顔をして身を引いたので、私は何ならもう江口になりきった感じで、

「ごっちん、剃毛、手伝ってくれない?」って声をかけた。
そしたらごっちんも「はい!」って嬉しそうに言うので、

「グズグズすんなよー」「加藤さんこそー」みたいな感じで、ドラマティックに和解しつつ、ごっちんに「俺の背中みとけ」って感じで、ドクターにかっこよく「先生、剃毛部位は?」ってデキル女風に確認して、「全範囲だ」って言われて、1発で頷いた。

セーフ。
先生の言ってることが、1回で聞き取れた奇跡。

前の病院では2年間消化器外科で働いてた。
どんな剃毛にも立ち向かってきた。

どんな湿地帯もアマゾンも、きれいに剃りあげてきた。

私は、道具をすばやくそろえて、ごっちんを従えて、患者さんの病室に飛び込んだ。

そこには、ちっちゃいおじさんが居た。

緊急の手術を前に、やや緊張の面持ち。苦しそうではない。

私は、長年で培ったトークで患者さんをリラックスさせながら、剃毛へと誘う。

「手術って、やっぱり、そんなとこまで剃るんですね・・」
という患者さんに、

「そうですね、やっぱり毛の中にはバイキンが多いので、ここから手術のあと感染したり、うんたらかんたら~」
なんて軽快なトークで、なめらかに下着を下ろして、びっくり。

樹海だ。
樹海である。

ちっちゃいおじさんが、猛威をふるっておる。

ごっちんが、無理だって顔をしてる。
ここを剃毛するなんて無理だって顔してる。

大丈夫。私は目で合図した。
ごっちん、見てて。
もし「剃毛病棟24時」ってドラマがあったら、江口は間違いなく私だよ。

私はごっちんに右手を差し出し「ハサミ」と言った。
ごっちんは、すばやく、私にハサミを差し出した。

「完璧・・ですね」
ごっちんが憧れの眼差しで私を見た。

たった10分。
ノルウエイの森が、更地に。
そしたら、ナイスタイミングで、先輩とドクターが病室に来たので。

私は先輩に子犬のように駆け寄って
「剃毛したんで、確認してください」
って微笑んだ。

見て見て。
私の武勇伝。

先輩が、オーケーオーケーと、微笑んで患者さんを見た。
下半身を見た。
そして叫んだ。


「頭の手術よ————————!!」


この叫びをね、私は生涯忘れないと思います。
先輩、大西ライオンかと思った。

で、一同絶句。

患者さんも、私も、ごっちんも、先輩も、ドクターも。

ただ、病室の時計のカチカチカチカチって音だけが響いてた。

ご、ご覧のとおり、頭ボウボウなわけです。
で、でも、下はつるっつるなわけです。

「なんで・・こんなことに・・」ってドクター。

完っ全っに、剃る場所を間違ってるわけです、私。

本丸を手つかずにして、とんでもないとこを、思う存分剃りあげたわけです、私。
逃げも隠れもいたしません。はい。

患者さんも、「だよね」って言ってた。
「頭の手術なのに、すごいとこまで剃るなーって、やっぱグローバルなんだなーって」とのこと。

グローバル間違え。

剃毛っていったら、下しかないと思ってた。

それから無事、頭の手術を終えた患者さんに、もう、師長も主任も連なって、謝って、

患者さんの家族にも
「上の毛と下の毛を間違って剃ってしまいました」
と謝って、

最終的には、院長まで出てきて、
「上の毛と下の毛を間違って剃ってしまいました。患者さんの苦痛を考えると・・・」
って謝って、

最終的に、私は
「上の毛と下の毛を間違って剃ってしまいました」
というミス・トラブル報告書を書いた。

さまざまな角度から、上の毛と下の毛を剃り間違える過程を分析した、その壮大な書は、救急病棟の報告書の決まりにのっとり、朝の申し送りで1週間読みあげられました。とっくりと。

で、こころなしか、最近、先輩たちから、微笑まれる回数が増えたよ。
あと、色んな人に「アレ読んだよ」って言われる。
まさにベストセラー。

あと、もう、私の念願だったわけですが・・うん・・、先輩たちもドクターもね、口々に言うわけです、

「救急病棟に、加藤ありき!」と。
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Author:ナイア
どこかで見たことのある話を載せていきます。

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