飛び出した女性

あともう一つある。

救急隊から連絡があった。
高速での交通事故。
ドライバーは重体。

軽傷の同乗者によると、深夜の高速で突然飛び出してきた女を跳ねて、そのままハンドルを切り壁に激突したと人員も充分だったので受け入れることにしたのだが、このときの電話が、
「患者は今すぐ搬送しますが、跳ねられたはずの女性がいないのです!見つかり次第すぐに連絡します!二名の準備でお願いします!」
とのことだった。
結局その後救急隊から連絡はなかった。
患者は緊急オペになったが、翌朝亡くなった。
同乗者は確かに女を跳ねた、時速150キロ位で走っていたはず、、車内からでもすごい衝撃を感じたのに、、
と語っていた。
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連絡先

俺は救急外来で働いているが、交通事故で運ばれて、手の施しようがなく、すぐに亡くなった患者Aがいた。
連絡先がまだわかっておらず困っているとき、隣に運ばれてきたばかりのやはり重傷の患者Bが、突然電話番号を連呼し始めた。
意識レベルは最低で、こちらの声かけには一切反応しないのに、だ。

患者Bの家族の連絡先かと思い、ナースが電話すると、なんとその数字は先に亡くなった患者Aの自宅の電話番号だった。
結局二人とも亡くなったが、患者Bの連絡先は持っていた財布の中からすぐに明らかになった。

こういう現場では手続きや説明やらで、患者と親しい第三者の存在はかなり重要なのだが、まあ滞りなく仕事はできた。
明らかに不可解な出来事に一瞬騒然としたが、その夜は忙しすぎてすぐに忘れた。
今久しぶりに思い出した。

やり直し

大学三年の時、友達4人と俺のアパートで鍋やろうってことになって俺ともう1人は、コンロとかいろいろセッティングする係、残り2人は近くのスーパーに買出しに行く係に決めた。

で、この話は買出しに行った2人から聞いた話になるんだけど伝聞形式で書くのは面倒なので、主観形式で書きます。

そのスーパーは、住宅街の小道を抜けた先にあって2人が並んで歩いてたら猫?犬?どっちかわからないような変な鳴き声がしてきた。
「キィー」とか「ヴゥー」とか、とにかく変な裏声のような甲高い動物の声。

しばらく歩いてたらその声にどんどん近づいてきて、どうやらこの家から聞こえてくるみたいだとわかったので、ちょっと覗いてみたら門のすぐ横に、もう骨と皮だけのガリガリにやせ細った犬がいてその犬が出してた、というか呼吸音と混ざって無意識に出てるみたいな声だった。

初めは病気の老犬かと思ったみたいだけど、見た感じはまだ若い犬っぽくてどう見ても異常な環境で飼育されているのは明らかだった。


あまりの光景にビックリして立ち止まったら、庭にできた水溜りの泥水をピチャピチャ飲み出したりしてよく見ると体のあちこちが円形脱毛してて、可哀想な反面ちょっと気持ち悪いと思ってすぐスーパーに行ったんだけど買い物中もその犬の姿が頭から離れなくて、お節介だが真空パックの安い薄切りハムを買って、帰りにあげてみた。

そしたらその犬、ヨタヨタと近づいてきて慎重に匂いを嗅いだ後、弱々しくハムにかじりついた。
あ…食べた。良かった!と思った瞬間、二階の窓から「あー!ちょっと何してんのよ!」と怒鳴り声が。

驚いて見上げると、40代後半くらいの小太りのオバサンがこっちを睨み付けてた。
そのオバサンはすぐに降りてきて、ドアを開けるとすぐに2人に向かって

「あんた達、何してんのよ!また最初からやり直しになっちゃうじゃないの!」

と物凄い形相でまくし立ててきたから、2人はすいませんでしたと謝るしかなかった。

その話を聞いて、オバサンの言葉の意味が全くわからず凄い怖かった。
それ以降、そっちの道は通らないようにしてたので、犬がどうなったかはわかりません。

ヤブ

盲腸の手術した時に麻酔効かなくって、偉い目に遭った。

医「そろそろ麻酔効いてきてると思うんだけど、足触ってるのわかる?」
俺「いえ、全然感覚無いです」
医「良いみたいだね。それでは始めます。」

で、医者がメスを入れた途端に、猛烈な痛み。
初めての手術だったので、こんなもんかと我慢していたが、10分程で耐えられなくなって、先生に伝えた。

俺「先生、すごく痛いんですけど、こんなもんなんですか?」
医「おかしいな・・・そんな訳ないんだけど。じゃぁ、もう一本麻酔打っとこうか。すぐに効いてくるはずだから」

俺「先生、全然効かないんですけど。てか、内臓弄ってる感覚までわかってて、気持ち悪くなって来ちゃったんですけど・・・」
医「もうしょうがないから、そのまま我慢してて。いま酸素吸入するから。我慢できなかったら、そのまま吐いて良いから。」
俺「はい、わかりました」

結局、激痛に耐えながら手術は終わったが、術中の麻酔おかわりが悪かったのか、吐き気と頭痛が治らずに、結局退院まで2週間かかった。

今考えると、医療ミスで訴えても良いレベルなんじゃないのかな、これ?

円形マンション

千歳の有名な円形マンションの話。

千歳には有名な心霊スポットで、「空の境界」とかの作中で使われた建物のモデルにもなってるマンションがある。
建てられた当時から、居るはずの無い子供がはしゃぎまわる音がするとか、エレベ-ターに女の幽霊が出るとか、その手の怪異が続発したらしい。
あと、一階部分はテナントで産婦人科があったんだけど、火事を出して職員とかが何人かなくなって院長も責任からか焼け焦げた院長室で首吊って自殺して閉院、その後そのテナントは今も次の借り手はまだいない。
聞いたことある奴もいると思うけど、テレビ局の企画で今は懐かしい宜保愛子が除霊にきたんだけど、マンションに入るなり失神してしまってその企画はお蔵入りになったとか言う逸話もある。

で、ここからが体験談なんだけど、俺が高二のころ、仲間達数人とそのマンションに肝試しに行くことになった。
その当時はもう、心霊マンションって言う噂がひろまってほとんどの部屋が借り手が付いてない状態で、地元のちょっとやんちゃな奴の心霊スポットとして有名になってて扉の鍵が壊された部屋がいくつかあった。
そんな部屋の一つに、絶対に出るっていう噂の部屋があるんだけど、一人ずつその部屋に行って写メでとって戻ってくるルールで肝だめしをはじめた。

まず一人目がスタート、したとおもったら一分もたたないうちにそいつがダッシュで戻ってくる。
尋常じゃない様子なので、俺らが面白がって、何か出たか?とか聞いてみると、「馬鹿!それどころじゃねえよ!人が死んでる、首吊って死んでる」
俺らが全員で見に行くと、確かにおっさんが首を吊って死んでた。
その後は警察に電話、事情説明、怒られるのコンボだった。

後で聞いた話だと、当時その円形マンションは近くにある自衛隊の隊員で耐えられなくなったやつの自殺スポットになっていたと言う。
結構な数の隊員がそのマンションで命を絶ったらしい。

あと、昨年久しぶりに千歳に帰って同窓会に出たら、あの肝試しで死体発見したあいつも、パチンコにはまって借金作ってあのマンションで首吊って死んだと聞いた。

ちなみに今現在もそのマンションは健在で、外国人労働者が多数住み着いて、これまた異質な雰囲気を醸し出している。

ダル

小学校の頃、家族で山に行った時の話。
俺はふとしたことで山道から外れ、迷子になってしまった。
山道に出ようとしたけれど、行けども行けども同じような風景が続く。
そのうち足が動かなくなり、眩暈を感じた。
俺はその場に崩れ落ち、ずるずると倒れ込んでしまった。
何だか、お腹と背中がくっつきそうという正にあんな感じで、ひもじくて一歩も動けなかった。
 
やべー、どうしよう。と思ったけど、その意識も朦朧としている。
そんな時、ふと視界の隅に映るものがあった。
目だけは動いたから何とかそっちの方を見やると、俺の足の方に誰かが立っていた。
親父かなと思ったけど、違った。
そいつは、真っ黒でボロボロの草履を履いてたんだ。
地元の人かと思ったけど、変なんだ。そいつ、足が宙に浮いてるんだよ。
それに気付いた時、爪先から頭の天辺にかけて、ぶわーっと寒気が走った。
こいつはやばいと思って逃げようとしても、身体が動かない。

そいつの手がぬっと伸びて来て、俺の足をつかもうとしたその時、ガサガサガサッと俺の頭の方から足音が聞こえてきた。
現れたのは、でかい籠を背負ったお婆さんだった。
お婆さんは、持っていたおにぎりを、徐に俺の口の中に突っ込んだ。
なにすんだ、このばあさん!と一瞬思ったけど、口の中に広がった米と塩の味がすげぇうまいの。
さっきまでの空腹感なんて吹っ飛んで、俺の身体は動くようになっていた。
飛び起きた俺は足元を見たが、草履のやつは居なくなっていた。
お婆さんは「もう少しでダルに引き摺られるところだった」と言っていた。
その後、お婆さんに連れられて山道に出たら、両親と再会することができた。
 
あれから、山には行っていない。
ダルとやらに引き摺られたらどうなってたんだろう。
お婆さんが来てくれなかったら、俺、死んでたのかな。

今ふと思い出して怖くて眠れないから吐き出させてくれ。

俺、病院で働いてて、いくつか怖い思いもしてるんだが、そのひとつ。
なぜか今まできれいさっぱり忘れてて、さっきふと思い出した。

患者さんの入浴介助をしていた時の話なんだが、全員の入浴が終わって、さあ浴槽の水を抜こうと思ったら、何かがぷかぷか浮いている。
拾い上げてみると、足の親指サイズの爪だった。ひどくぼろぼろで、フチがガタガタに削れていた。
看護士の話によると、ひどい水虫だと足の爪が剥がれることもあるらしい。
剥がれた跡が膿んでもよくないので、誰の爪か突き止めて、処置をすることになった。
入浴介助の患者さんは10人ほどだったので、簡単に見つかると思った。
が、誰も足の爪が剥がれていない。
入浴介助の患者さんだけでなく、全員の足を見て回ったが、誰もはがれていない。
念の為に手も見たが該当者なし。職員は長靴ゴム手袋をつけるので職員の爪ということはありえない。

結局、剥がれた爪はその後すぐに捨てられ、なかったことになった。
あれはなんだったんだろう。

少年

胸糞悪い話になるかと思うが、誰にも話せない事だったから暇な奴は聞いてくれ。

当時、俺はまだ高校2年生。
ちょっとした理由で所属していた陸上部を辞め、どうせならいい大学を目指そうと、スポーツから勉強に乗り換えようかと考えていた矢先の出来事だった。
部活をしていた頃は、朝は六時半から夜は七時過ぎまで練習があり、俺の生活はほとんど学校と家の往復に費やされていたのだが、部活を辞めてからは、特に何に縛られるでもなく、遅刻しない位に登校し、学校が終われば友達とだべりながら帰る。
そんな自由を突然与えられ、俺は正直自由な時間を持て余していた。
幼少時から陸上を始め、他にも水泳や剣道など習い事を数多くこなし、自分の時間というものが極端に少なかったせいで、その時の俺にとってはどうやって時間を使えばいいのか分からず、ある意味贅沢な悩みを抱えていたのだ。

少年に会ったのは、そんなある日のことだった。
友達の買い物に付き合い、少し遠回りして自宅に向かっていた帰り道。
いつもはあまり通らない団地の前を通った時にふと目に入ったのが彼だった。
真夏なのに長袖のシャツと膝のすれたジャージを履き、片手におにぎりを持ったまま、ボーっと空を見上げていたのだ。

「(こんなクソ暑いのに、変な奴)」

それが、俺の少年に対する第一印象だった。
それから二週間ほど、友達と遊んだり、買い物に行ったりするなかで、どうしてもその団地の前を通ることがあったのだが、その少年はいつも似たような格好でおにぎりを片手に空を眺めていた。
さすがに、俺もその少年の事が気になって、発遭遇から三週間目ぐらいに俺は始めて少年に声をかけた。

「おい、お前。これでも食うか?」

少年に向かって唐揚げ串をさし出す。いつもおにぎりだけじゃ飽きてしまうだろうと、俺なりの配慮をしたつもりだったのだ。

「………………」
「おーい?」

しかし、少年はボーっと空を見上げたまま動こうとしない。
ちょっとムキになって、少年の目の前で手をヒラヒラさせると、少年はそこで初めて俺に気付いた様子でビクッと跳ね上がった。

「…………!!」

そしておびえたような表情で俺を見つめる。そりゃそーだ、いきなり顔も知らない高校生が唐揚げ串をさし出してくるなんて不審者以外の何者でもない。

「…………いいの?」

しかし、その少年は俺の顔をジッと見た後、そんな風に呟いた。

「あぁ、食わないなら俺が食おうと思ってたから」

俺がそう答えると、少年は俺の手から串を受け取り一心不乱に唐揚げをほおばり始めた。
その必死とも言える食事の光景に、当時の俺は「(やっぱ腹減ってたのか)」とただ無邪気に思ったのだった。

その後も、少年と俺の交流は続いた。
しばらくは俺に対して警戒していた少年も、一週間近くお土産(唐揚げ君とか牛肉コロッケとか)を持って通い詰めているうちに大分打ち解け、俺の事を“兄さん”と呼んでくれるようになった。
そして、両親とも共働きで、兄弟のいない俺からしてみても、少年はまるで弟のように感じたものだった。
少年と話していると、色々と驚かされることが多かった。
見た目から、少年は小学2~3年生位かと思っていたのだが、実際には小学5年生だったこと。
少年が「兄さん。もうすぐ雨が降るから、すぐに帰った方が良いよ」と言うと、その時どんなに晴天であっても後で必ず雨が降ること。
まるで占い師のように、俺の怪我を言い当て、それが原因で部活を辞めて少し腐っている事をズバリ的中させたこと等々。
元から少し不思議な雰囲気を持った少年だったが、ここまで来ると俺は素直に感嘆してしまった。
その事を少年に伝えると、少年は照れたような顔をして「別に、ただ何となく分るんだ」とはにかむのだった。

少年が居なくなったのは、それからさらに一週間。初めて遭遇した時から一カ月ほど経った頃だった。
それまで俺が団地を訪れると、いつも同じ場所で空を見上げていたはずの少年が忽然と姿を消してしまったのだ。
時期的にはまだ夏休み。「引っ越しでもしてしまったのかな?」と思い、せっかく仲良くなった弟のような少年がいなくなった寂しさと、一言も言わずに行ってしまったことに対する不満があったのだが、その日の夜から、俺は悪夢にうなされることとなる。

俺は狭い箱の中に閉じ込められていて、息苦しくて、喉が渇いて、お腹が空いて、身体が痛くて動かせない。
どうにかしてここから出ようとしても、体を動かす事はおろか声すら出ない。
気付いてしまえば、瞬きすら出来ないのだ。
箱の外は綺麗な世界があると分っているのに、俺は動くことが出来ず、箱の中の真っ暗な闇にただ怯え、いっそのこと発狂してしまえば楽になれるのにと思うのに、苦しくて、苦しくて、苦し、くて苦しく、て苦、しくて苦しくて、苦しく、てくるし、くて苦し、くてく、るしくて、苦しくて。

まるで呪いのように、ありったけの罵詈雑言を心の中で言い尽くしたころ、俺の心が弱ったのを見計らったかのように箱が沈むのだ。
地面なのか水なのか、もっと深い所へ箱ごと俺が沈んでいく――――。


と、ここで絶叫と共に目を覚ますのだ。
子どものように寝小便を垂らし、全身から気持ち悪い汗をかいて、赤ん坊のように号泣している。
俺の声に飛び起きて来た両親は息子のそんな様子を見て、「狂ってしまった」と思ったそうだ。

そんなことが連日続き、両親は俺を精神・心療内科のある県外の大学病院に連れて行った。
大きな機械で脳波測定をしたり、様々な問診をした結果、俺は特に問題なしとの診断を受けた。
両親はてんかんを疑っていたようだが、俺にその気はなく、とりあえず夜驚症用の薬と、症状が続くようであればまた受診してほしいとの旨の言葉を貰って俺は自宅に帰ることとなった。
つまり、医者にも原因はよくわからないというのが結論だった。
落胆と不安から帰りの車内は重苦しい空気に包まれていた。
それでも、一日中様々な機械に通され疲れの溜まっていた俺は、いつの間にか眠りについていた。

そこで、俺はまたあの夢を見た。真っ暗な箱の中に閉じ込められている夢だ。
「(また、この夢か)」諦めにも似た心境でぐっと恐怖を堪えていると、いつもとは違う事が起きた。
ゴン ゴン、と箱の外から音が聞こえてくるのだ。まるで、この箱の中にいる俺を助けてくれるかのように。
俺は必死に「助けて!!」と叫ぼうとするが、声は出ない。
やがて、そのゴン ゴンという音も小さくなり、「(あぁ、やっぱり誰も助けてくれなかった)」と思った矢先に、箱の天井がゆっくりと開いた。

目を開くと母親が俺の体を揺さぶっていた。

「あ、やっと起きた。ずいぶん長い事寝ていたわね。家に着いたから早く車から出なさい。」

県外の病院から自宅に戻るまでの数時間。俺はずっと眠っていたらしい。

寝ぼけたまま、母親の指示に従って家に入る。
ジュースでも飲んで眠気を払おうと、冷蔵庫からサイダーを取り出していると、先にリビングに入ってTVを見ていた父親が「酷い事をする親もいるものだなぁ」とつぶやいたのが聞こえた。
何故か、そのつぶやきが異常なほど気になって、冷蔵庫を開けたままリビングに飛び込むと、案の定TV画面には見覚えのある団地が写されていた。
無機質なアナウンサーの声が頭の中で反響し、ぐらぐらと足元がおぼつかなくなる。
それに気付いた父親が俺を慌てて支えると、そのニュース番組は山中からブルーシートで隠した何かを運び出すシーンに移り変わった。

「遺体は死後一週間ほど経過しており、○○容疑者の供述通り△△市の山中から発見されました。
少年の遺体は大型のクーラーボックスに入れられたまま埋められており、警察は○○容疑者の内縁の夫である□□容疑者も事件に何らかの関与をしていたとの見解を強め捜査を続けています。また、少年の体には生前に受けたとされる打撲や擦過傷が数多く残されており、警察は日常的に虐待や少年に対する暴力があったとして取り調べを強化しています」

父親の支えがなければ、俺は間違いなくその場に倒れ込んでいただろう。

少年の死を受け入れることが出来ず、仮にも少年から兄と呼んでもらっていたくせに、虐待を見抜けなかった自分の無力さを笑う事すら出来なかった。
考えてみれば簡単な事だったのだ、あの年頃の少年がいつも同じ場所でおにぎりを食べているはずがない。
少年がいつも外にいたのは、少年の自宅には母親の他に血のつながらない男がいたからだ。
長袖を着ていたのは虐待の傷痕を隠すため。
体格が同じ年代の子どもと比べて小さいのも、幼いころから満足な食事を与えられていなかったせいだ。
だから、俺が差し出したお惣菜にはかぶりつくように反応したし、殴られる心配がないから俺に会うと嬉しそうに駆け寄ってきてくれていたのだ。

あの夢についてもそうだ。
少年は俺に助けを求めていたのだろう。
元から少年は普通ではない力を持っていた。その少年が、死の間際親しくしていた俺に助けを求めて、あんな夢を見せたとしてもなんら不思議ではないだろう。
彼は人懐っこい少年だった。死んでしまった後も、自分を俺に見つけて欲しくてあんな夢を見せたに違いない。
どんなに辛く、悲しく、悔しい事だっただろう。少年の事を思うと流れる涙を止めることが出来なかった。

あれから数年。
あのニュース以降、例の夢を見ることはなくなり、俺は彼のような子どもを虐待から守る職についた。
当時は何も知らない子どもだったが、今では少しだけ大人になれたと思っている。
再び彼のような犠牲者を出さないためにも、俺は彼に誓って虐待から子ども達を救ってやりたいと思っている。

近年の不況・法令の強化に伴い、虐待件数は増加の一途を辿っている。
そのほとんどはネグレクトを代表とするものであるが、そのネグレクトがその他の虐待に結びつくことが非常に多い。
だから、これを読んでくれた人・見てくれた人、少しでいいから周りに様子のおかしな子どもがいないか注意して見てくれないだろうか。
そして、もし様子のおかしな子どもがいたら、地域の児童相談所でも保健所でも市役所でもいいから相談して下さい。
匿名でも勘違いでもかまいません。
彼のような犠牲者をこれ以上出さないためにも、どうかお願いします。

封印

○県○市から車で小一時間程の距離にある山の中に廃病院がある。
取り壊し作業の途中で放置されたままで、危ないから近づくなと親から言われていた。
興味はあったが自転車で行くにも距離はあるし、山の中という事もあり行ったことはないまま俺は引っ越した。

中学のクラス会があり、俺は久しぶりに○市に戻ってきた。
特に仲の良かった友人A、B、Cと昔話に華を咲かせているといつしか廃病院の話になった。
俺が引っ越した後も放置されたままになっているそうだ。
誰かの提案でこれから行ってみようということになった。
一番近所のAが車を出すことになり、懐中電灯、非常食のうまい棒、塩、はぐれた時の為の笛を人数分用意して俺たちは廃病院に向かった。

途中、調子の悪くなったナビのせいで車ごと崖から落ちそうになったり、トンネルの中なのに雨が降ってたりしたがなんとか廃病院に辿り着いた。
廃病院は思っていたよりもずっと小さかった。
3階建てで広さは25m程。
小学校にあるプールの大きさくらいだろうか。
心霊スポットにありがちな落書きが壁にびっしりと書いてある。
暴走族の仕業だろうか?
難しげな漢字で意味はわからない。

建物の周りに張ってあるフェンス代わりと思われるロープを潜り、護身用に落ちていた鉄パイプを拾って俺たちは中に入った。
人の気配はなく、暴走族もホームレスもいないようだ。
病院の中は何もなかったが、さすがに俺たちの口数は減っていった。

病院の1階を進みながら建築関係の仕事をしているBがぶつぶつとつぶやいた。
この程度の大きさの建物なら取り壊しにそれほど金がかからない。
取り壊し途中で放置されてる意味がわからない、と。
実際、窓ガラスは割れていたが建物自体は工事をしていた跡すらない。

特に興味をひかれるものはなく、俺たちは2階に上がった。
2階を進みながらAが「そうか」と口を開いた。
「解体作業中で危ないってのは、ここに近づけさせない為の口実か」
「あ、俺も親からそう言われてた」と、俺。
手術室でもあれば盛り上がったのかもしれないが、本当に何もなく、病院だったのかどうかも怪しく思えてきた。
「なんで親はあんな嘘までついてここにこさせなかったんだろうな」とC。
拍子抜けしながら俺たちは3階に上がる。

3階にも特になにもない。
全ての部屋を見て回ったが何事もなく、建物の端まで来た。
「あれ?」とBがまたぶつぶつとつぶやく。
「3階だけ広さが違う 奥にもう一部屋あるはず」
「さすが建築関係」とA。
「マジ?隠し部屋?」と俺。
だがその入り口を探すまでもなく、行き止まりの壁が薄いべニア板だと気付いた。
軽く叩いてみると明らかに壁ではなく、奥に空間があるのがわかる。
「どうする?」とA。
「さすがに壊すのはなぁ~」と俺。
「なんかいろいろおかしいし」とB。
「でもどうせ取り壊すんだし・・・」とC。
鉄パイプで小突いていると、あっけなくべニア板が奥へ倒れた。

その先は明らかに雰囲気が違った。
空気が一気に濁ったのがわかる。
壁に病院の外壁にあったものと同じような落書きがびっしりとされていた。
やはり難しくて読めない。

奥にあったのは椅子が一脚。
その下には黒い染みがひろがっていて周りに千切れたロープ。
「なんだここ?」とおどけてAが言ったが異様な雰囲気に呑まれ声が上ずってる。
「なんか、ヤバくね?」とB。
「もう出ようぜ」と俺。
誰からともなく自然に早足になり、いつの間にか全力疾走。
途中「待ってよ~」とCの声が聞こえたが、我先にともつれるように走り、何度か転びつつも建物の外に出た。

フェンス代わりのロープを潜り、車まで辿り着くとCが口を開いた。
「封印なんだ」
「え?」と俺、A、B。
「あの壁の文字とロープは封印なんだよ」とCが続ける。
「俺が必死に止めたのにお前たちは聞かずに中に入っちゃって・・・俺は怖くてどうしても中に入れなかったんだ。でも無事に戻ってよかったよ」
「え?入らなかったって・・・」顔を見合わせる俺とA、B。
とにかくここから離れようと車に乗ろうとすると、病院から笛の音が聞こえてきた。
俺の首から下げてた笛が無くなっていた。

交通事故

大学生の頃に体験した話。
ある日、中学の時の友人からメールがあった。
内容は、同級生が自動車事故を起こした。
仲が良かった数人で見舞金を出すことになったが、おまえも協力しないか?ということだった。
部活で三年間一緒だった友人の不幸、黙って見過ごすわけにはいかないと、すぐに承諾する旨電話した。

「まだYの意識が回復しないんだ」
事故から一週間経って昏睡状態にあるらしく、本人とは面会謝絶とのことだった。
「新聞にも出たし、テレビでニュースになったほどの大事故でさ、助手席にいた彼女は即死だったみたいだ」
Yの運転する車が突然対向車線に乗り出し、大型トラックと正面衝突したという話に耳を疑った。
自分の知っているYは責任感の強い真面目な男で、そんなミスをするようなタイプではないと思った。

とはいえ高校も別々で疎遠になっていたし、こちらが地元を離れた一年くらいは一度も会っていなかった。
「俺は高校卒業して大学でちょくちょく会うようになったけど、おまえはどうかなと思ってさ」そう友人は気兼ねしたらしいが、人の生き死にに係わること。
明日はわが身という思いで、すぐ友人に送金した。

それから半月ほどして「どうやら意識は回復した、骨折や鞭打ちのリハビリも始められそうだ」との連絡があった。
その二ヵ月後「まだ人と会える精神状態じゃないらしい。健康の為にも、早く立ち直って欲しい」とのことだった。
そして一月後の夏休み、僕は帰省した。

見舞金を出した友人らとの飲み会も、Yの話でしんみりしたものになった。
そこそこ酒が回り、Yと一度だけ面会したというSが急に切り出した。
「ここだけの話、絶対に誰にも言わないでくれ。俺も未だに信じられないんだ」
と深刻な顔つきになった。
みなが疑問に思っていた事故の原因について、Sは眉をひそめて話し出した。
「夜の十一時、小雨混じりの天気だったけど、交差点もない見晴らしのいい四車線道路。車はオヤジさんの軽セダン。みんな居眠り運転だと思ってるよな。ていうか、それ以外ありえないよな」Sは周囲を気にする素振りで、ふっと個室の入り口を見た。
「Yもまだショックから立ち直っていないし、彼女を死なせた事実を認めたくないのかもしれない」そう断りを入れると、信じられない話を始めた。

「Yが言うには、運転してる最中、バックミラーに人の顔が映ったそうだ」
二人だけのドライブ。誰もいないはずの後部座席に人の顔がある。
人間がいるのではなく、人の顔がある。
「それが消えたり現れたりしたそうだ」
Yの不安を察知した彼女が振り返ったが、後部座席には何も見えなかったらしい。ただ、床に転がってる「何か」を確認しようとして、シートベルトを外し、上半身を捩ったそうだ。

「その瞬間、彼女は悲鳴を上げた。Yも気を取られて一瞬彼女を見た。反射的にブレーキを踏もうと前方に目をやると、即道左側に女性の姿があり、動揺してハンドルを反対車線側に切った。そして、正面衝突だよ」

沈黙を破るように、友人がSに訊ねた。
「じゃあ車を止めようとした場所に、たまたま女性がいたってことか。そこって歩道じゃなくて、道路?」
Yはどう答えていいか悩んでいるかのように間をあけた。
「Sはまだ混乱してる。あと、誰かのせいにしたいのかもしれない。だから話半分で聞いてくれ。あと、この場にいる以外、誰にも言うなよ。俺もわけが分からないんだ」

つまり、その女性が横断歩道のない道路を渡ろうとして、それを避ける為に事故が起きたという解釈ができた。
Yの前方不注意は問われるが、居眠り運転ではなかったことが証明されることになる。
「その徘徊老人ぽい女性はどうなった?」誰かがそう問いかけた時のSの顔は今でも覚えている。本当に混乱して、苦しそうな表情だった。
「Yの奴、頭がなかったって言うんだよ。スカートは履いてたけど、首から上はなかったそうだ」

今日久しぶりに事故のあった国道を車で通った。
誰かが手向けたプラスチック製の菊の花が、数年前と同じく、枯れないままそこにあった。

Yは他県で仕事をしてる。
まだ結婚はしてない。
大学も辞めて、地元には一度も戻ってない。

後日談はないし、居眠り運転の事故となった。

耳垢をとらぬ習慣

ネパールでの話。
1歳の女の子が耳の異常を訴えて来院した。
両耳とも耳垢塞栓になっており、まずは耳垢を摘出することになった。

ネパール人医師が耳鏡器で覗きながら耳垢を取り除いていくと、何と鼓膜付近でうごめくものがあるという。つまんで取り出してみると、ふっくらと肥えた約1センチのウジ虫であった。

医師はさらに見つけたようで、次々に取り出してくる。
結局,片側から6匹ものウジ虫が出てきたのだった。
おそらくハエが潜り込み、産卵したのであろう。

そして、耳垢を栄養にして成長したのだと推察された。
また、外耳道もウジ虫の活動によってその構造はかなり崩れていた。

心霊スポットと異界の境界線

未だに信じられない話があるんだが、聞いてくれるか?

二年ぐらい前の冬の話だ。曖昧なのは、実はどこまで現実だったのかオレもわからない所があるんだ。
まぁ大学が終わった後…もう、夜に近い時間、ブックオフなんぞで立ち読みをしていたオレに電話が来た。
埼玉の方の大学に行った友達…仮にKとしておこう。
Kは突然「今から明日丸一日かかる可能性あるが空いてるか。もし空きなら一生の頼みがある」
とKがいつになく真剣な口調で言うものだからなんなのか聞いてみた。

ここからしばらくはこのKの話だ。
二週間ほど前の事、大学の先輩やら男女三人ずつで、先輩の部屋でダベったり飲む奴は飲んでいたらしい。
その時に女の子の一人が「群馬の方に廃病院あって、そこだとマジ出るらしいよー」とか言ってたそうだ。
先輩方五人は車で、Kもしぶしぶバイクでついていった。

山ん中に佇む廃病院は不気味で、Kはこの時点で嫌になり「帰る」と言ったがそこは大学生。
ノリ悪いだなんだ、と結局Kは車を見張ることで落ち着いた。
合図は先輩方が上の方から懐中電灯を振り回す、とのこと。

ところが、いつまで経っても合図が無い。
Kは遅いな、と思い携帯で時間を見る。だが、その携帯電話。アンテナは圏外、おまけに時刻表示がありえない事になっていたそうだ。(71:18とか)

俺は高校時代、オカルトとかにもハマっていた為、俺からそんな話を聞いていたKはここがやばいと思った。
しかし懐中電灯は先輩方が持って行ってしまっている上、もしここで突入しても一人。
入れ違いの可能性もあれば、一人で救出できるかも危うい。
そこへ先輩から電話がかかってきた。ここで重要なのは圏外であるはずなのに、だ。
(Kは実際圏外だったことを確認していた)
「悪い、先帰っててくれ」「どうして?」「いやぁー。車の鍵落として…」
先輩の極普通の声にKは安堵して、バイクに乗って帰る。

ところが、二日後。
その五人を大学で見かけず、また連絡も取れてない事に気づく。
Kはやばいと思った。しかし、自分一人ではどうすることも出来ない。

ここからが本編だ。

そこでKは霊感ある奴、カメラ持ち、運転手に廃墟マニアと色々な所から助っ人を頼んだ。
俺とKを含めて総勢七名。
内訳は俺、Kのほか、
A=女性。霊感たくさん。睨み合いで勝った事があるらしい。
B=ビデオカメラ持ち。C=運転手。
D=廃墟マニア。E=女の子。霊感そこそこ。怖がり。守護神の持ち主。
まぁ、全員元々知り合いとかじゃないのでお互いに挨拶とかしながら車はKの先導で進み、気がついたら現場に到着。その時点で全員その異様さに気づいた。
なんていうか、異様なんだよね。
夜なんだけど、ただの夜じゃないっていうか。
でも、Kが必死に行こうとするので止めるわけにも行かず、事前に決めた役割分担を果たした。

突入班が俺、K、A。
入り口でロープを張ってビデオカメラで撮影する命綱兼撮影班がBとC。
DとEは車に残ってた。

車から出る時に、Eが俺たち突入組に手製っぽいぬいぐるみくれたんだよ。シーサーの。
これがまさか守護神様になってくれるとは思わなかった。

中に入った瞬間は見かけほど怖くないのかなって思った。
周りを取り巻く空気は異様だけど、中はそうでもないなって。病院だった場所だから不気味ではあるけど。

ロープを握って、とにかく一階を探そうって感じで懐中電灯を振りながら歩く。
俺はただいるかなーって感じで、特に見えたりはしなかったな。その時は。
でもAはずっと怖そうな顔してた。車載ってる時は澄まし顔だったのにな。
最初の入り口…エントランスかロビーかどっちかわかんないけど開けた場所で命綱組待機。
そこから受付を通って、奥の廊下へ進んで……一つ一つ部屋を見たけど、おかしそうなところは…

あったよ、1つだけ。
診察室だと思うんだけど、そこだけなんか空気が白く見えるんだ。最初埃かなって思って。
この時、写真撮っとこうと思って携帯見たら…圏外+時刻がおかしい。アレ?
オレの脳裏を神隠しっていう言葉がよぎった瞬間。

そうそう、診察室の中を撮影しようと携帯のカメラを向けた時だ。
バッテリーが二本残っていた筈の携帯が、フリーズしたんだ。
よく心霊スポットでカメラのシャッターを押せないとかよくあるけど、まさか携帯で起こるとはね。
携帯が圏外やら変な表示の時点で、そこがすでにおかしな場所であることだったんだけど。

そしたら……信じられないかも知れないがまさにその瞬間、命綱役が持ってたカメラも動かなくなった。
Bの悲鳴が聞こえてきて、慌てて引き返した。
しかしKは無情にも俺に告げる。
「この場所でロープ持ってて」一人で行けと?
診察室前に残された俺はもう一度中を観察する事にした。
なんで診察室かなって思ったのはあの丸い椅子とカーテンが転がってたからなんだけど。
不気味で、白っぽく見える、なんかいるけど何も見えない。
俺が診察室に背を向けて廊下を向いた時、診察室からガタっと音がした。
ふっと振り向くと、俺の横を人影が通り過ぎてった。いや、人影じゃないんだ。人だったんだよ。

幽霊はよく色々な服装してるっていうけど……それでも普通のギャルっぽい服装した幽霊いるか普通?
そいつは俺の横を通り過ぎると、廊下の奥の階段へ、上へと上がっていった。
Kの先輩方は上を目指していた、という。

俺は一人だが上に行く事にした。
AもKも入り口から戻ってこない。ついでに俺はAみたいに霊に強くも無い。
だがEが渡してくれた守護神シーサー様がいる、と念じて階段を上がる。

二階は結構DQNが入ってたのか、落書きが多かったよ。
……一階はガラスは割れて荒れていたけど落書きは殆ど無かったのにな。
そのギャルっぽい人影を追いかけたはいいが、どこに消えたのか皆目つかない。
また一つ一つ虱潰しに、と思ったんだけど…。
ロープが切れていたんだ。階段の途中で。気づいたのはその時。
でもここで逃げたらKへの義理が立たないと思って前へと進んだ。
直後、離れた部屋で何かが崩れる音が聞こえた。同じ二階のフロアだ。
そして……信じられないものを見た。
その崩れた音がした当たりの部屋から人影が一人飛び出してきた。
懐中電灯持ってる、男。でもその後ろを何か得体の知れないものが追いかけてる。
たくさん。人なのかもわからない。
人影は、いいや、その男はその部屋の真正面の部屋に逃げ込んだんだけど、得体の知れないものもそれに入る。
後は悲鳴。

さすがに急行した。
でも信じられるか?誰もいなかったんだぜ、その部屋。入ったはずなのに。
そして何より真新しい足跡があるんだよ。

そこに人間が確かにいたのに、いない。異常な携帯やカメラ。
記憶の糸を便りに、階段を駆け降りて入り口まで引き返した。
そしたらそこには誰もいない。ロープとカメラだけ放置されたまま。
え、俺置き去り…と焦った瞬間にKとAが戻ってきた。

A「早く車に戻って!」
俺「みんなもういる?」
A「いいから早く!」

言われるがままに車に戻る。皆がくがく震えてた。
何でも最初、俺とKとAが診察室でカメラ向けてた時、BとCは俺たちが進んだ方とは違う廊下にカメラを向けていた。
そしてその時、赤いジャケットを来た男がこっちに向かってきたそうだ。
驚いて一瞬カメラを離した瞬間、男は消えていた。
ちなみにこの赤いジャケットの男は、どうやらKの先輩の一人らしい。その時赤ジャケだとKが言ってた。

そしてDとE。
車で待っている間、数回地震に襲われたという。当たり前だがその時地震は起こってない。
地震が途切れた、次はバンバンバン!と何かを叩く音。
相当な恐怖だったという。手がかりは見つからず、なんだかよくわからない事件ばかり。

そしてAとKはBとCの話を聞いた後、俺を放置してそっち方面の廊下に行ったらしい。
ただ、その時にKは1つだけ収穫があったそうな。
赤ジャケ先輩の携帯だ。
そして俺が見たギャルと逃げ込み男も、どうやら先輩方で間違いないとKは言っていた。

オカルト板の住民なら知っているかも知れないが、ピクニックアットハンギングロックの話を知っているか?
その時、俺の脳裏にその話が出てきたんだ。女子生徒と女教師が行方不明になった話。
女子生徒が女教師に遭遇した時、いくら声かけても届かない、見えない壁があるようだって奴。

俺はKに「俺たちだけでこれ以上やると二重遭難の可能性あるからやめとけ」と言った。
その言葉に全員が賛成していたよ。
まぁ、ハンギングロックみたいに二度と戻れなくなる可能性もある、ともね。
Kもその話を知っていたから納得してくれた。赤ジャケ先輩の携帯が見つかっただけでも、とクルマで現場を離れた。

その時、Kが赤ジャケ先輩の携帯を見ていたんだが、思わずぎょっとしたようだったよ。
何を見たのか教えてくれなかった。見ちゃいけないものだったのかも知れない。

この話の怖い所は後日、Kとその話をした時、いくつもの食い違いが出てきたんだ。
・Kは俺たちが総勢四人だった。(俺は七人だったはずだが…おかけになった電話番号はのコンボが続いた)
・Kが拾った携帯は赤ジャケ先輩、Bが見たのはギャルさんの方だとKは言い張っている
つまりこの食い違いって……もしかして、もしかしてなんだけど。

俺があそこから出てきた時、違う次元の方に出てきちゃった可能性があるんだよな。
家に帰ってきた時、持ってない筈の漫画が出てきたとかなら信じられるか?

まぁ、変な話ですまん。だが未だにおかしな話だなと思っているんだ。

オツキサン

もう、夏真っ盛りだね。
この時期になると、昔のことを思い出す。

俺の地元には大小の山の中に、ひときわ小さな山がある。本当に小さな山だ。
でもなぜか、大人と一緒であろうと、子供はこの山に登ってはいけないということを聞かされていた。

理由を親や先生に聞いても教えてくれないし、他にも色んな山があるのに、その山だけ子供は立ち入り禁止になってたし、何より周りに神社が密集しているのも、何か気になっていた。

神社は、小さくて無人のところがほとんどだけど神主さんが住んでるところが1か所ある。
神主さんの敷地に干してあった干し柿取って食べたのはいい思い出w
そのこと神主さんは知ってたみたいだが、それはまた別の話ね。

まぁ干し柿取って食べたってことからも分かるかもしれないけど、小学生の時分、俺はなかなかの悪ガキだった。
ダメだダメだと言われるほど、何としても入りたくなるのは人間の悪いところ。
俺は、友達を連れてその山に入ることにした。
連れて行った友達は2人。

A=地元から離れた今も、結構遊ぶ。面倒見が良くていい奴
B=ビビリ。いじめてたわけじゃないけど、連れまわしてた気がする。

夏休みにこの3人で、山に入ろう!ってことになったんだ。
Aは俺と一緒に調子に乗ってたし、Bもビビリだけど好奇心はあったみたいで快諾した。何だかんだで、みんな山に入りたかったのかな。

そして、決行の日。
親には朝から、プールに行ってくるって抜け出してきて集合した。
もちろん、バッグに水着やタオルが入っているわけも無く、中身は邪魔になるからできるだけ空にしておいた。
Aも同じ感じだったけど、Bは水泳の授業の時と同じ中身だった。

いざ出発しようとしたがここで問題が発生。
山に続いてる道は、神主さんの住んでる神社の方から繋がっていて(その道は頂上まで行ってるかどうかは分からないらしいけど)ずっと一本道で、反対側の無人の神社の方に出る道になってる。とBから聞いた。
Bはビビリだったから、親が「この子は山には行かないだろう」と考えて、子供には教えない、山の道の詳細を教えていたのだと思う。

それを聞いて、俺たちは考えた。
子供は出入り禁止だから、当然見つかる可能性のある、神主さんの住んでる神社の方の道からは行けない。
進めそうになければ引き返せばいいし、人に見つかる可能性を極力減らすことが大事…
俺たちは、無人の神社の方の道を目指し、遠回りして進んで行った。

道と言っても舗装もされてない、獣道より幾分マシだってレベルということに気付いたのは、現地に着いてからだった。
俺らは周りに人が見ていないかを確認し、こっそりと山に登って行った。

山の道は大人一人が歩ける程度で、小学生の俺たちからしたら、進むのに全然問題は無い広さだった。
← 俺 A B
という隊形で道を進んでいく。
ふと、道の横の木を見るとクワガタを発見!
子供にとってクワガタはカッコよさの象徴、夏休みの主役たる絶対的な存在であることは間違いない。

しかしあいにく、俺たちが持ってきているのは空のプールセットのみ(1名中身有り)だったので、バッグにクワガタを入れるのも可哀そうな気がして、「明日は虫カゴ持ってくっが」と話しながら奥に進んで行った。なぜか進むにつれて、Bがときどき変な声を出していたし、Aを急かしていたが、Bはビビリなので、俺たちは、いつものことと大して気にせずに、頂上を目指して歩を進めていた。

山に入るときに小さく見えていた入道雲が、山に近づいてきたころだったか、俺たちは道が下り始めたことに気付いた。
このまま進めば、例の神主さんの神社に出る。
大したものも無かったな、と思い、二人に、もと来た道を戻ろうかと声を掛けた。
Aはそれに同意したが、何故かBは「進む」と言い始めた。
このまま進んだら、ほぼ確実に誰かに見つかるし、見つかったら大人から滅茶苦茶に怒られるのは確実なので、俺とAは大反対した。
それでもBは「進む」と言葉を曲げず、そのうち震え始めた。

不審に思ったAが理由を聞くと、Bは「視線を感じる」「音がする」と言う。
話をまとめると、誰かついてきてるとのこと。
俺やAはまったく気が付かなかったけど、Bは自分の後ろの方に誰かいると思ったそうだ。
そして、元来た道を帰るとなると、その「誰か」に向かって進まなければならない。それは怖いとのこと。

俺たちはそれに全く気付かず、気のせいだろうと説得したけどBがどうしても怖がるので、俺が先頭に立って、元来た道を戻ろうとした。
第一、大人なら大声をあげながら捕まえに来るだろう。
もう、道は神主さんの住む神社へと下り始めているから、引き返して頂上に着くまではまた登りだ。

引き返そうとすると、少し先の道に影が見えた。
まずい!大人たちに見つかった!と思って身構えたが、様子が違う。
ゆっくり近づいてくるのは分かるが、少しずつ距離が近くなり、良く見ると人では無い。
黒い影が、しかも1つではなく3つも、こっちに近づいてくる!
影が何か喋っているが、離れているので聞き取れない。

俺は完璧に固まってしまった。
AとBは少しして、人では無いことに気づき、叫び声を上げて逃げだすまで俺はフリーズしていたが、
2人が逃げ出すのにつられて、道を駆け下り始めた。

途中、Bが転んでバッグを落としたが、俺はBを抱え起こしたがバッグを取るまでの余裕までは無かった。
ふと後ろを見ると、必死に走っているにも関わらず、影との距離があんまり離れていないことに気付いたので、さらに必死になって道を下った。
そのまま麓まで下り、境内の掃き掃除をしていたであろう神主さんが、呆気にとられてこっちを見ているのが分かったので、すぐに神主さんに泣きつき、黒い影の事を話したら凄い剣幕で3人とも怒られ、本堂に入るように言われた。

お祓いに使う時のあのモサモサで色々やられたり、詔みたいなのを聞かされたりして、暫くの間、本堂から出られなかった。

そのあともちろん、親には叩かれるし、説教されるし泣かれるし、夏休み中であるにもかかわらず、学校に行って先生から説教されるし、俺とAは神主さんから「良いと言うまで山に近づくな」と言われるし、色々と周りに迷惑を掛けたことが分かった。

しかしBだけは、今後はこの山だけでなく、近くの神社にも近づくなと言われていた。
俺とAは神社まで出禁にはならなかったため、次の日にもお祓いに行ったときに聞いたんだけど、内容はこんな感じだった。

何百年か前、突然この近辺に得体のしれないものが現れた。
土地神なのかどうかさえわからないが、神主さんでも今もって正体は分からない。
見た目は俺たちが見たような黒い影。
そいつは山を登り始めると後ろから時々ついてきて、その人と変わらない速度でついてくるけど、そいつに追いつかれると祟り殺されてしまう、ということだった。
後ろから付いてくるから、大人内ではオツキサンと呼ばれてるそうだ。

つまり、オツキサンがいる山を山登り中になまじ休憩していると、オツキサンに追いつかれて祟り殺されるってことだ。

この話にはまだ続きがあり、オツキサンは、元はもっと大きい山にいたらしいが、いつのまにか今の山に来ていた。
大きい山にいたときは少なからず被害が出ていたが、今の山に来てからは、標高が低いことから、人が途中で休憩することもあまりないため、被害が出なかった
しかし、それを知らずにこの山で遊んでいた小さい子供が突然死んでしまったため(理由は不明だがおそらく…)、他の山にオツキサンが移動して、これ以上被害が拡大しないためにも、この山からオツキサンを動けなくするように、周りを神社で取り囲んだ、というわけだ。

そして子供が立ち入り禁止になっている理由は、山が一本道とはいえ体力のない子供は、途中で休まざるを得ず、その結果オツキサンに追いつかれる可能性があったこと。あとは単純に、前の例で子供が死んでしまったため、らしい。

俺とAがその山に近づくな、と言われた理由は、オツキサンは普段は何もしゃべらず、ただ後ろからついてくるだけのものらしいが、俺が何か喋っているのを聞いた、ということは、視覚だけでなく聴覚による接触もあるため、通常の遭遇者よりも強い「縁」が出来てしまったこと、このままではオツキサンの寄り代になる可能性が高く、またその山に入った後に別の山に行くと、最悪そっちの山にオツキサンが移動してしまう可能性がある、とのことだった。

そして、何より俺たちの中で、オツキサンと最も強い縁で結ばれたのはBだ。
Bの落としたバッグは、Bを抱え起こすときに、確かに俺たちの後ろに転がっていたのを俺は見たのに、結局見つかることはなかった。

今は、時々しか地元に帰ることは無いし、そのことを話すとAもBも笑い話になるが、結局その影の正体は分からないままだった。
そして、俺たち3人の中で一番のビビリBは、あの一件以来、山恐怖症になるかと思いきや、現在大学に進学した今は登山部に入部している。
お前、他の山に影を持って行ってるんじゃないか?

冷静な対応

ウチの母は、昔自治会長をしてた時危ない事があったらしい。

行事の準備の為遅くまで独りで事務所に残ってたら、近所のじいさんが来たんだと。
じいさんはすごく酔ってて、エライ剣幕で行政への不満をぶちまけ始めたそうだ。

下手に刺激したらマズイかも、と思った母は、適度にヨイショを挟みつつ話を聞いた。

じいさんは段々機嫌が良くなり、帰る間際に笑顔で
「今日はあんたを刺してやろうと思って来たけど、もういいや」
と隠し持ってた出刃包丁を見せてきたそうな…。

母ちゃんナイス判断だったと今でも思う。

混雑

俺が小学生の頃、近所に百年近く続く小さな銭湯があった。
まあ老舗とはいえ時代の流れか、客入りはそれほど良くなかった。
俺の爺さんはたいそうお気に入りで、その銭湯に通うのが楽しみの一つだった。
何の前触れもなくポックリと死んだが、その前日も通っていたくらいだ。

ある週末の夜、親父に銭湯に連れて行ってもらった。
服を脱いで勢いよく浴室の扉を引くと、驚いた。
いつもは閑古鳥が鳴いているこの銭湯が、どういうわけか満員だった。
浴槽は芋洗いだし、洗い場も一つも席が空いていない。
後からきた親父も驚いていた。
「これじゃあ入れないなあ、ちょっと待つか」
といい、親父は自分にはビール、俺にはアイスを買ってくれて、脱衣室で待つことにした。
風呂前にアイスを買ってくれるなんて、いつもとは順番が逆で、俺はなんだかおもしろかった。
しばらく待ったが、出てくる客は誰もいなかった。
親父に様子を見てくるよう言われ、再度扉を開けると、また驚いた。
さっきまであれだけ混雑していた風呂場だったのに、客は2~3人しかいなかった。
さっきは確かにぎゅうぎゅうだった、それに出てきた客はいなかったぞ?
親父も驚いていたが、あまり細かいことを気にしない人で、
何事もなかったかのように、ひとしきり風呂を楽しんだ。

銭湯から変えるとき、番台のそばの貼り紙に気がついた。
なんと今月で店を閉めるという内容だった。
しかも今月というとあと1週間しかないではないか。
はたと気がついた。
子供ながらにも、先ほどの不可解な混雑の理由がわかった気がした。
閉店を惜しんだ遠い昔からの「常連」が、大挙して押し寄せてきたのではないか。
親父も同じことを考えていたようで、
「爺さんもきっと来ていたんだろうなあ、○○(俺の名前)も一緒なんだし、挨拶くらいしてくれても良かったよな」
とつぶやき、それ以後は黙ったままで俺と手をつないで帰路へついた。
銭湯には閉店の日も親父と行ったが、その日も相変わらず空いていた。
銭湯が混んでいるのを見たのはあれが最初で最後のことだった。

ストリートチルドレン

詳細についてはあまり記せないことも多いんだが、思うところありこちらに書いておきます。最近、コネをたどってもう少し当時のこの一件のこと詳しく分かるかもという状況なんだが、やばい話でもあるのでもしかすると他所に話したり公開するのもこれが最後かも。

長文で失礼。

自分の友人のYという男がおり、ドキュメント映像で結構有名な賞ももらったことのある人物で、いろいろな事件に首を突っ込んでる男が居た。

Yは、今から20年くらいまえに、某ヨーロッパの国に取材に行っておりその国は当時、大きな民衆暴動などが起きて、革命で政権が転覆した国だった。
当然、大きく体制が変わってて、その実情を収めようってことでビデオを回していた。

実際、経済が安定せず政情も不安定な状況が続き、結構な数の子どもたちが路上生活を余儀なくされてるような状況だったらしい。

取材クルーは、監督のYと、もともと漫画編集者をやってた構成や企画人のX、スチル写真の心得がありその国の血が父方の方から入ってるクオーターのZの三人(Zは完全ではないが、十分な日常会話は可能で、日本語とのバイリンガルはすごく貴重だったらしい)。
基本的にフリーの連中だけで集ったクルーチームで、取材はそうしたストリートチルドレンを追う形で進んでた。

で、その取材中、泊まってたホテルの近くで3人が歩いてたら、姉妹らしき女の子が二人近寄って来る。みすぼらしい格好の女の子で、Zが通訳に入ると、自分たちを買ってほしいという交渉をして来た。姉の方が8歳くらいで、妹の方はまだ4、5歳くらいだったとのこと。

この国はかなり貧しい国だが、基本的に女性が奇麗なことで評判の国なこともあって、この浮浪児の姉妹も白人のブロンドでかなり美少女だったらしい。
買う男が居るのは無理ないと、Yも思ったらしい。
テーマもストリートの子どもだったし、美幼女の売春婦という時点でジャーナリストとしては分かりやすく衝撃的な取材ができる。
Xが金の関係でチーム中一番発言権が強く、とりあえず二人に少しお金をあげるから取材をという約束でその姉妹をホテルに泊めて取材することにした。

ホテルのフロントに金を渡してからホテルに招き入れて、姉妹に色々と取材をして、どういう暮らしをしてるのか、売春はいつから始めたのかとか、色々聞き出していく。
姉妹が買春しはじめたのは二ヶ月程前からで、おかげで食事にありつけていること。
客は、外国人が多いことなど、色々と聞き出した。

これは企画自体は真面目なドキュメントなんだが、まずかったのはこのクルーの3人ともがやや小児性愛の傾向があり、子供とのセックスに興味があり、特に金の関係で発言権の強かったXにその傾向が非常に顕著だったこと。

誘惑に駆られ、三人は本当に買春をすることにした。
Yからこの話を聞かされた時は流石に最初引いたけど、こっちもだんだん興奮させられて、色々聞きました。

あんまり酷いんで詳しくは書きませんが、シャワーを浴びさせた後、完全に姉妹をおもちゃにして楽しんだとのこと。
XとZは特に目が大きくて美人の姉の方を気に入り代わる代わるセックス、Yはその横で5歳の妹の方に色々いたずらしたらしい。
もちろん、二人を買っていたずらしたことは三人の絶対の秘密にした。

翌日、Xの提案で、さらに少女たちに金を渡し、ストリートに立ってどんな男が買いにくるのかを遠巻きに撮影していた。姉妹のことを、町中にまぎれて二人から離れて撮影していると、かなり裕福そうなみなりの白人の中年男とそのボディーガードらしき男が二人近づいて来て、少女に色々話している。

XとZはどうも、その男のうちの一人にこちらに到着してすぐ会っているらしく(Yは遅れて現地入りしてる)、Xに聞くと、地元の保守系の地方議会関係の有力者で、この企画を進行していく上での現地アドバイスをもらった一人とのこと。

中年男が二人を連れて歩きだしたので、XがZを連れて後から追いついて話を聞くと、やはり気まずい雰囲気。地元の有力者が、子供を買ったらそりゃまずいのは当然だが。
その場での話は一方的に打ち切られ、男たちは昨日三人が買ったその姉妹を自動車に乗せて、どこぞへ走り去ってしまった。

ホテルに戻り、Xが、少し目線をかえてより児童買春のほうに企画内容を変えよう、その方が注目されるからとY、Zに説明してるとき電話が入った。(ちなみに、Yはこの時からXの路線変更に反発し、買春がバレるのを非常に恐れ始めたという)

姉妹を連れ去った例の有力者の男からで、「取材をやめろ」という脅迫だった。

政情不安の著しく、異常な犯罪率の国なんで、地元有力者からの脅しはシャレにならんということでXも最初は折れたようにみえたが、欲深い性格のため電話口のZを介して、粘るよう指示した。
けれど、電話口の雰囲気で、おそらく自分たちが既に客としてそこに連れられていった姉妹を買ったことが知られてる口調だというので、すぐに三人は保身のため、取材打ち切りに同意してしまった。

腐敗しまくっているが、地元の有力者で議員でもあり、要求に従えばマフィア程の無茶はしないだろうというXの読みもあった。

その夜に再び代理の男から電話があり、三人をその有力者某氏の自宅に招待する旨の電話だった。

帰り支度に入っていた三人はもちろん警戒し、「バラさ無い限り命の保証はする」
と男が言うので、三人は一計して「招待に応じる」と答えて場をつなぐ形で落ち合う場所を確認し、当然のようにその約束をすっぽかして翌日すぐに、逃げるように東京行きの飛行機に乗った。

三人は、固く秘密を誓って元の生活に戻った。
帰国から2年程してXから電話があり、その日の夕方にX、ZとYの三人で約束し、Xの借りている自宅マンションに二年ぶりに集まった。

Xはその後も某国での一件から調査をすすめていたようで、ヨーロッパの児童誘拐やポルノ製造、愛好者グループ等についてかなり精通するようになっていて、あわよくばもう一度本格取材をということで予備的に再び現地入りしたらしい。

けれど、ポーランド経由で某国に再び入る途中の取材で現地のチャイルドポルの愛好家から見せられたフィルムの中で、衝撃的な体験をしたらしい。
デッキに入れて再生すると、幾度かダビングを繰り返して劣化しているが、映っているのは間違いなくあの某国で三人が取材してから犯した浮浪児の姉妹の姉のほうである。
ただ、身なりはずっと小ぎれいになっており、白いドレスを着てぬいぐるみを抱え、高級そうなオークの椅子に腰掛けて撮影者に語りかけている。

シーンが変わって、その少女は裸にされており、顔を隠した男のペニスを口に加えさせられフェラチオを強要されているシーン、
続いてシーンが変わると、今度は裸にされた姉妹の妹の方がベッドに両手を縛られて泣き叫んでいるシーン。
男のペニスが妹の膣にめりこんでいるシーンがそれに続く。

その次のシーンで唐突に、既に息を引き取った様子でぴくりとも動かぬ姉妹が、魔法陣のような模様が描かれた黒い布の上にうつぶせに並べられており、ここでビデオは突如終了。

雑な編集のものだが、Xは呼吸が止まりそうな程驚いたらしい。
あの姉妹が映っていて、しかも殺されている。
さらにXが現地入りして確かめたところ、例の有力者はマフィアに狙われて大分前に殺されており、Xは正直これで
自分の犯罪は誰も立証できなくなったとほっとしたとのこと。
ZとYも話を聞かされ気分が悪くなったが、ほっとしたのは事実だと言う。

Xの調べでは、おそらくヨーロッパの田舎に今もある、秘密結社まがいの組織にその議員は関係しており、当時は特に政情が混乱していて警察の力が弱いことを背景に、かなりの数の子供を集めて、なんらかの黒魔術儀式に使っていたんではないか、という推測だった。

Xはそのポーランドのマニアに見せてもらった、二人の少女の遺体が映っていたその最後のシーンだけテレビ画面を写真に撮り、日本に持ち帰っていたが、確かにあの時の姉妹に良く似ているらしい。
自分がYからこの話を聞いたのは、もう15年くらい前で、なぜこの話を俺にしたかというと、彼もやはり
「自分たちの犯した犯罪がこれで永久に立証不可能になって、バレる心配が無くなったから」とのこと。

Yも既に数年前に胃ガンで亡くなったため、彼に妻や子もいないこともあり、彼から聞いた話を一部記す。
友達としては良い男だったが、やはり人間としてどうかと思う次第。
XとZはまだ存命のため、これ以上の細部は書けません。
万一見てたら、冷や汗だろうな。

かくれんぼ

印象に残る夏休みの思い出って色々あると思うけど、オレの夏休みの思い出といえばこれだな。


オレが小学二年生の夏休み一日目。
小さい頃からずっと遊び場にしていた近所の神社の境内で、その日も仲のいい友達数人で遊んでたんだよ。
かくれんぼだったか鬼ごっこだったか…とにかくオニから逃げる遊びだったと思う。そんな遊びをキャッキャ言いながら汗だくで遊んでた。
オレもオニから逃げてて隠れ場所を探してていたけど、なかなかこれと思う場所がなくってさ。
神社の敷地内からは外に出ちゃいけない決まりだったし、それほど大きくもない神社だったから隠れ場所は自然と限られるし…

で、もっと見つかりにくそうな場所はないかと神社の本殿の周囲をウロウロしてると、本殿の扉がわずかに開いているを見つけたんだよ。
いつもは本殿の扉は開かないよう南京錠で施錠されてたけど、その日は何故だか南京錠がされていなかった。
オレは最高の隠れ場所を見つけたと思って、すぐに本殿の中に隠れたんだよ。
外はまだ明るかったけど、本殿の中は暗くて蒸し暑くて…それになによりすごくイヤな臭いが充満してたのを覚えてる。
正直あまり長居はしたくなかったけど、こんなところに入れるのは滅多にないことだし、興奮もしてたし我慢した。

本殿の中から扉を少し開けて外の様子を伺っていると、オニの友達が本殿の前でキョロキョロと自分を探す様子が見えた。
その姿がすごくおかしくてクスクス笑いながら覗いてと、その友達と目が合っちゃったんだよね。
すぐに友達は「なんでそんなとこに居るんだよ~www」と笑いながらこっち向かって走ってきた。
オレの方は思いのほか早く見つかってしまって残念ではあったけど、友達の反応が面白くて逃げることもせず友達が扉を開けるのを待ってた。
そして友達が扉の前まで来て勢いよく扉をバン!と開けたんだ。

友達「○○くんww、見ぃ~つけ…………━━━━━━━━━」笑いながらオレの名前を呼んだ。友達の表情が一瞬で変わった。
笑顔は一瞬で消えて目を大きく見開き、口は開けっ放しで…( ゚д゚)ホントにこんな顔してた。
オレを見つけて急に笑顔が消えて固まった友達見て、オレもワケがわからず戸惑っているとあることに気がついたんだよ。

友達はオレを見てない。正確にいうと、顔はオレの方を向いているけどオレを見ているわけじゃなく、オレの後ろ、しかもオレの背丈よりずっと上の方を見てる。
うしろ?…なんだろうと思い振り返る。

天井の梁から垂れたロープに首を吊っている女の人がそこに居た。

一瞬で頭が真っ白に…たぶんオレも友達と同じく( ゚д゚)って顔をしてたと思う。
どのくらいそうしてたかわからないけど、しばらく放心状態で女の人を見上げていると急に後ろでバタバタ!と音がした。我に返って振り向くと、無言のままスゴイ勢い走りながら遠ざかっていく友達の背中が見えた。
その姿を見た直後、全身にすごい鳥肌が立って気がつくと自分も無言のまま外へ駆け出してた。
境内を真っ直ぐ突っ切って鳥居を潜って、石段を五段とばしくらいで降りてった気がする。
友達が近所の家に駆け込むのを見て自分もその家に駆け込んで、家の人に神社で人が死んでることをパニックになりながらもなんとか伝えた。

あとはもうパトカーは来るわ、神主はステテコ姿で走ってくるわで大騒ぎ。
オレが知ってるのはここまでで、その後のことはよくわからない。
新聞なんかで出てたかもしれないけど、子供のオレには分からなかったと思うし、周りの大人もそのことには触れようとしなかった。
首を吊っていた女の人がどこの誰だったかはわからないまま。
今思い出しても怖いけど、不幸中の幸いだったのが女の人が後ろを向いていてくれたこと。
もし顔なんか下から覗き込んで見た日には……きっと頭に焼き付いて忘れられなかったと思うわ…

ターミネーター

昔体験した話なのだが、ある時、彼女に別れ話を切り出した。彼女はうつむいて泣いていたので、慰めようとしたが全く話を聞いてくれず、そいつの家を出た。車のエンジンをかけたとき、さっきの彼女が包丁持って鬼のような形相で走ってくる。
直ぐに走り出したらさ、そいつ、後ろのナンバープレートに包丁刺して、もう片方の手で車にしがみついてきたんだよ。ドリフトを二回したところで、やっと離れてくれた。
その間、叫んだりうなるみたいな声出したりでスゲェー怖かった・・・
で離れたとき、そいつ、U字溝の中に落ちたんだよ。
死んだわけ無いだろうから、直ぐに逃げた。
そのまま実家へ直行。大家さんには手放すと言って、後でマンションの家具を引き取った。
死ぬかと思ったよ・・・あのとき。

ゲーム脳

昔、友達が小遣いはたいて「バベルの塔」というゲームを買った。しかしこのゲーム、激ムズのパズルゲーム。フラッピーの1面もクリアできない友達は一瞬で詰まり、小遣いがこのゲームに吸い取られたのに苛ついたのか店に抗議に行くと言い出した。何故か俺も一緒に付いていった。

店主に向かって「こんなゲーム売るな」と友達。店主は最初丁寧だったが遂にキレて
「返品してやるからカエレ!」と激怒。でも返品できるから良かったな、と言おうとした途端、友人、突然震えながら
「ヘンピンシテヤルカラナヘンピン…タッタタッタッタ」
等と店主の言葉を反復させてる。俺が「どうしたの?」と聞こうとした途端、突然店主に思い切りカセットを投げつけ
「でれっれれれっれーーーーー」
とスーパーマリオの音楽のような鼻歌を大声で怒鳴りながら店のショーウインドウに思い切り蹴り。派手に割れるガラス。その後「こいーんこいーん」などと言いながら、メチャクチャに暴れる友人。

店主は最初ポカーンとしてたが急いで止めようとする。けど友人は中学1年当時170センチ以上で巨漢デブ。店主はふっ飛ばされる。俺も必死で止めるが全然話が通じない。近所の商店街から応援が来て大人3人がかりでやっと止まる。
店中のガラスが割れ、品物は散乱。狭い店だったから尚更被害がひどく見える。友人はガラスで色んなとこ切ったのか血まみれで「フーフー」と唸ってる。その後友人は救急車に乗せられ、警察が来て俺はちょっと事情聴取みたいなのされた。

俺も共犯者かと思って泣きながらガクブルしてたら店主が
「君は何も悪くないからね」
と慰めてくれたのがすごくほっとした。俺じゃないけど友人はあまりの怒り?で店一つぶっ壊してしまった。その後友人はなせか「転校」となって、何処に行ったのかも先生も教えてくれず会うことは出来ない…

後ろ美人

こないだじいちゃんの法事で思い出したから書く。

中学生1年の時、じいちゃんが死んだ。
76歳だったかな?とくに痴呆でも寝たきりでもなく、ギリギリまで元気なじいちゃんだった。
うちの地元は盆地状に広がる小さな田舎町で、じいちゃんちは山を少し登ったとこにある。
俺と両親は町場のほうに新しい家に住んでて、じいちゃんは一人暮らし。
いざ通夜をやるって段になっても、家までの道がよろしくないのでお寺でやることになった。
盆地の真ん中あたりにある、高台の大きなお寺 檀家数も多い、立て直したばかりの寺だった。
じいちゃんの入った棺を本堂の脇にある広い和室へ運び、通夜まで預かってくれることになった。

うちの両親や親戚何人かで一緒に泊まることになり、敷布団とか用意してもらって寛いだ。
料理頼んで昔話して、お酒の入った親戚はもう雑魚寝ムード。
俺はすることないからお寺を探検してた。
本堂の隣の和室ゾーンに台所や物置やトイレがあり、廊下の端に扉を隔てて向こう側が住職さんの居住スペース。
和室まわりのトイレはひとつだけで、こちら側のトイレも使ってかまいません、と住職さんに言われていた。
俺はトイレ使ったついでにちょっと見て回った。
和室からの扉を抜けると同じような廊下が続いてて、左手に住職さんの使うトイレ。
その向かいに本棚が備え付けてある。壁に埋め込まれた、天井まである本棚。
分厚い辞典とか、仏教関係の難しい本に混じって、一部日本庭園の写真集や、京都の寺めぐりの本なんかがある。
そういう俗っぽい本を選んで暇つぶしに立ち読みさせてもらってた。

普段と違う雰囲気で興奮してるのか、寝付けないので長いこと座り込んで読んでた。
夜中回って親戚連中も、住職さんも全員寝てるな、って時間に「シュルシュル」と音がした。
親戚連中が寝てる和室ゾーンの方向から聞こえる、本から顔をあげてふっとそっちを見た。
廊下の途中にある引き戸の扉がすぐ近くにあって、そこの向こうから聞こえる。
その扉はつまみをくるっと回すと鍵がかかる簡易的なもので、防犯用か、あとからつけたもの。
真ん中にマンションとかにある魚眼レンズがついてて、そこから向こう側の灯りが漏れてる。
立派なものではなく、ごくごく簡易的な覗き穴で、どちらからも向こうが見える。
まだ音がシュルシュルしてるから、立ち上がってそこを覗いてみた。

穴からまっすぐ廊下が続いてて、そこの突き当たりに本堂に入る襖がある。
そこに向かって着物を着た女性がゆっくり歩いて行ってる。
親戚はまだみんな普段着だから、誰だか一瞬では分からなかった。
お寺の関係の人か、それとも遅れて到着したじいちゃんの知人か、何とも言えない。
遠ざかっていく背中から、小柄で背の小さな上品なおばさんを連想した。
髪は腰くらいまであって、足首だけを動かして床を舐めるようにするすると歩いている。
それで畳とこすれて「シュルシュル」と言ってたわけだ。
俺が出て行って挨拶したほうがいいのかな、両親は起きてないのかな、と覗いてると女性が立ち止まった。

本堂に入る襖の前で、開けもせずじっと立ち止まった。
覗き穴から見た風景だと、少し丸く歪んでいて奥行きがあり、よく状況が分からない。
腰を曲げて屈みなおし、覗いてみると女性がくるっと振り返り、こっちに向かってまた歩き出した。
その時あれ?と思った。
着物が上の方は茶色っぽく、足元は白い。ちょうどグラデーションっぽい感じで品がいいなと思った。

それが正面から見ると、そのイメージが吹き飛んだ。
着物の胸のあたりがなんだか変な模様なんだ、帯も後ろは白かったのに前は着物と同じ茶色。
髪も腰まである清楚なロングヘアーだと思ったら、前髪は目が隠れるくらいぼさっとした感じ。
廊下は割と明るいからこっちに向かってくるにつれて、段々ディテールがはっきりしてくる。
本堂と自分の見てる扉の中間くらいに女性が来た時に、これは普通の人じゃない、と確信した。
着物の茶色はなにか汚物をまいたみたいに汚れてる状態で、それがお腹くらいまで着物に染み込んでる。
髪はぼさぼさで、寝起きみたいに振り乱してる。
何より唇が真っ白で、着物の袂から覗く両手が冗談じゃなく青い。死体が歩いてるのかとマジで思った。

その女性が速度を変えず「シュルシュル」とこっちに向かってくる。
どうしよう、逃げるべきか誰か呼ぶべきか、それほど長い時間でもないのに恐ろしいくらい脳がフル回転した。
でも不思議とこの扉を開けてどうこう、って選択肢は絶対選ばない、と決めた。
女性が近づいてきて前髪の間から視線が分かるかな、くらいの距離で俺は顔を上げた。
よく考えたら向こうからもこっちが見えるのだ。まして扉を開けられたら無防備な状態。
気配を悟られないように、そっと指で穴を塞いで、引き戸を開かないように押さえつけた。
頼むから開けないでくれ、俺は絶対ここを動かないぞ、と息を止めた。
女性の足音が止まって、扉の前で立ち止まってる気配が伝わってくる。
いま覗き込んでたら嫌だな、と穴を塞いでる左手の人差し指に意識を持って行った途端、右手にぐっと力が入った。

女性が扉に手をかけたっぽい。
やべえ、と思って力をいれなおし、ぐっと扉を押さえつける。
女性は扉を開けようと力をいれてくる。開ける、開けない、の押し問答をひたすら続けてると、扉から音がする。
バサ、とかザラ、とか扉に何か当たってる。そろそろ右手だけで抑えるのもキツいので覗き穴から左手を離し、両手で押さえると覗き穴で黒いものがチラチラと見える。髪が扉に当たってるんだ、と思った。
女性が頭を振り回しながら扉を開けようと食らいついてる。それで髪が扉に当たってバサバサと音を立ててる。
冗談じゃねえ、絶対開けるもんかと声が出そうなくらい扉を押さえつけた。

体感時間では15分か30分くらいだったけど、前のめりに扉を押さえてると後ろから声をかけられた。
住職さんが「開きませんか?」と様子を見に来た。
寝てたはずなのに衣をきちんと着てて、手にはタオルを何枚か抱えてる。
扉押さえたまま「あえ?」とか訳の分からん返事をしたら住職さんはすっと扉に近づいて引いた。
慌てて俺が扉から離れると、誰もいない電気の点きっぱなしの廊下が続いてた。
「鍵が壊れてるのかな、立て付けは悪くないのだけれど」とか住職さんが言いながら、和室側のトイレにタオルを交換に行った。
俺は呆然と立ち尽くして廊下を眺めるけど、鳥の声がチュンチュンしてて あれ、もう朝だったのかと思った。

起きていた親戚に聞いても、夜中は誰も来なかったと言われた。
お寺の奥さんは髪が肩より短いし、ましてや綺麗な色白の人。
あれは誰だったんだろ、やっぱり人間じゃないのかな、と一日中ぐるぐる考えてた。
通夜が終わって、一旦住んでる家に戻り、明日の準備を済ませて親戚とご飯を食べた。
お寺にいるじいちゃんのほうには、じいちゃんの兄弟が行ってくれてて、交代で泊まるらしい。
全然寝てないから食事もそこそこに、自分の布団で寝ようと思ったら、じいちゃんの弟が酒飲みながらぼそっと語った。

「あいつは昔からよくモテて、色んなところで女を作っては泣かせてた。先に逝った奥さんも苦労してた。
若い頃に遠くで作った女がここに押しかけてきて、修羅場になったことがある。
結局山の中で自殺して、身元が見つからんからこっちで墓作って埋めたんだ」とか言ってた。
それ聞いてなんとなく「じいちゃん死んでからも大変だな」と気が重くなった。

10年くらい前の地元での話。

自衛隊の日常

これは俺が体験した話だ。
今から遡ること数年前の4月、俺は自衛隊に入った。
教育期間中は暴言、殴る蹴るは当たり前、官舎に怒声が響かない日はなかった。
特に、NとSという上官にはよくしばかれ、毎日必ず誰かはこの2人に殴られていたと思う。
俺の同期に、運動が出来なくて物覚えが悪い奴がいた。
当然、NとSの格好の目標となった訳だが、仮に名前を佐々木としよう。
佐々木とは同じ班で同じ部屋だったのでそれなりに仲良くしていた。

5月の半ばの事だった。
銃を持って走っている時に佐々木が吐き気を催してうずくまった。
Nは佐々木の胸ぐらを掴むと、顔面をぶん殴って倒れた佐々木の腹を数回蹴り飛ばした。
よくある光景だ。
だから、止めようとする人は一人もいない。
ここではSやNのような上官が「法律」なのだ。
彼らに口出しすれば今度は自分たちが佐々木のようになるのは目に見えていた。

その夜に、たまたま事務室の前を通りがかった時に佐々木の泣き声が聞こえた。
「おら、立てやてめぇ!」…Sの声だ。
「お前、もう1回泣き言ほざいたら顔面に蹴りを入れるからな」…これは別の上官の声。
「俺はな、別にお前がどうなろうと知ったこっちゃ無い。ここでくたばってもどうでもいい。お前よりもお前の銃のほうが心配だな」…Nだ。
S「死ね!」

…別に珍しい光景ではない。ここではよくある日常の光景だ。
それから、佐々木は段々ノイローゼ気味になり、5月の下旬に佐々木は自衛隊を辞めた。
「僕は道具じゃなくて人間なんだ。殴られれば痛いと思い、貶されれば傷つく。
『あの人達』はなんとも思わなかっただろうな。ただ怒鳴って殴って蹴っていればよかったんだから。
けれど、僕はもう限界だった、何もかもが嫌になったんだ。
日本を守りたいと思って入ったのに…殴られるために入ったんじゃないんだ。この数カ月で僕は自衛隊というものにほとほと幻滅した」
佐々木は最後、涙を浮かべながら俺にそう言って官舎を出ていった。

それから時が流れて8月、俺はまだ教育期間の頃と同じ部隊にいた。
NとSも同じだ。
ある日、2人が俺に言ってきた。
「実はな、教育期間中に辞めた奴らが今どうしているか調べることになったんだ」
「でさ、佐々木の所にも行くからよお前も一緒に来いよ」
上官の頼みならば逆らえるはずはない、俺は一緒に行くことになった。
N「ところでS、佐々木の名前覚えてるか?名字しか覚えてねぇや」
S「知りませんよ、さっきまであんな奴の存在自体忘れていましたからw」
…彼らにしてみれば佐々木はその程度のものでしかなかったのか…
自宅に行くことになり、俺は彼らの会話を聞きながら久しぶりに佐々木へ電話をした。
「ワカッタ。コッチデマッテイルカラ」
以前とは全く違う、抑揚のない機械のような声だが確かに佐々木の声だった。
そのまま3人で彼の家へ向かった。

家へ着き、チャイムを鳴らすと佐々木ではなく別の人が出た。
年の頃は20代前半、落ち着いた雰囲気の女性だ。
佐々木の家族ではなく親戚の方だという。
「あの、〇〇(佐々木の名前)さんはいらっしゃいますか?」
俺がそう聞いた途端、女性は表情を曇らせて言った。
「〇〇の知り合いの方ですか?…どうぞお入り下さい」
奥の和室に案内された俺達は、しばらく言葉を失った。
部屋の西側にあった仏壇…そこに置かれていた真新しい遺影は紛れも無い佐々木のものだったのだ。
しばらくは無言の時間が流れたが、俺は意を決して女性に質問した。
「あの…〇〇さんはどうして亡くなったんですか?」
「自殺です、1週間前にこの家の2階で首を吊ったんです。」
俺は混乱した。
さっき電話に出た人は確かに佐々木だったのに…
聞き間違えでは絶対になかった。

混乱して口の利けなくなった俺に変わってNが話しだした。
自分たちが自衛隊の人間で辞めた佐々木を訪ねに来たことを…
すると、今まで悲しみや困惑のような表情で満たされていた女性の表情が一転して見る見るうちに険しくなっていった。
そして、敵を見るような目で俺たち3人を睨みつけながら言った。
「〇〇は、ちょっと前まではやんちゃというか、陽気なやつでした。いつもマイペースな彼が、ある時を境に急に変わってしまったんです。精神的に不安定で、全く笑わなくなって、喜怒哀楽のうち喜と楽が抜け落ちてしまったようだったと聞いています。
まるで抜け殻のようだったと…
私たち親戚にも会ってくれませんでした。
そして『こんな筈ではなかった…もう嫌だ』とよくうわ言のように言っていたそうです。」

俺たちは何も言えなかった。
更に女性は言葉を続ける。
「先ほど私が言った彼が変わってしまった『ある時』がいつだか分かりますか?自衛隊に入ってからです…
こうなってしまったのは全部あなたたちのせいなんです。
…返して下さい、〇〇を」
俺はここにいることに耐えられなかった。
Sはばつの悪そうな顔をして顔を背け、Nは適当に聞き流している。
お悔やみの言葉を言った後逃げ出すように家を後にした。

帰りの車で俺は何も喋る気になれなかった。
ただ、後ろの2人だけはパチンコや飲み会の話に華を咲かせている。
信じられなかった、もう佐々木の事は眼中に無いのだ。
夜になっても、まだ俺は車のハンドルを握り続けていた。
最後に官舎を出る時に俺を見た佐々木の顔や、家を出る時に最後に見たあの女性の悲しみと怒りが入り交じった表情がフラッシュバックのように脳裏をよぎった。
ぼーっとその事を考えながら運転し続けていた。

そして気がつくと、対向車線へとはみ出して、目の前に対向車が迫っていた。
急にハンドルを切った俺たちの乗った車は、そのまま田んぼへと突っ込んだ。
幸いにも、3人とも大きな怪我はしていないらしく、その場で警察を呼んだ。
警察に電話をし終わった時に不意にメールがあった。
確認してみると佐々木からだ。
全身に鳥肌が立ち、血管が一気に縮み上がったような気がした。
「許さない」メールの内容はそれだけだった。

そのあと、俺はすぐに自衛隊を辞めた。
だが、SとNはまだ続けている。
彼らが教育部隊にいる限り、また佐々木のような目に遭う人が出るのだろうか。
俺はその後、佐々木の1周忌に出ようとしたが断られた。
当然と言えば当然かも知れない。
3周忌も同じだった。
今年もまた8月がやってきた。
許してもらおうとは思わないが、また佐々木の墓参りに行こうと思う。

書いてみるとあんまり怖くなかったね。
ただ、あの時は本当に怖かったんだ。

私用電話

重役が秘書に「君は勤務中の私用電話が多いようだね」と注意をした。
「まあ、私は勤務中に私用電話などした事などありません」
「そうか、なら今後は取引先をダーリンと呼ぶのは止めたまえ」

本能寺

友人IIに借りた日本史のノートによると、織田信長は「本能寺の恋」で明智光秀に破れ、自決したらしい。

名画

「これはルノワールの絵ね。」
「そうでございます、奥様。」

「これはゴッホの絵ね。」
「そうでございます、奥様。」

「これはピカソの絵ね。」
「それは鏡でございます、奥様。」

危険!犬に注意!

とある田舎街の店のドアにこんな張り紙がしてあった。
「危険!犬に注意!」

中に入るとレジの横によぼよぼで大人しそうな老犬が居眠りしたいた。

「なあ店主、注意しなきゃいけない犬ってのはアイツのことかい?」

「ああ、そうだよ。」

「俺にはとても危険だとは思えないな。虫も殺せないような顔して寝てるじゃないか。」

「いいや、注意書きを張る前までは客がみんなあの犬に蹴つまずいちまってたのさ。」

女の幽霊

俺の引っ越した先に、女の幽霊が出た。
はじめはそれなりに驚いたが、俺は気にせずいつも通りの生活をした。
幽霊はそれに驚いたようで、俺に話し掛けてきた。

「私が怖くないんですか?」
「俺は今まで悪いことをせずに生きて来た。警察の世話になったことは一度もない。だからわかる。君はいい人だ」

そう言うと、彼女は突然泣き出してしまった。
若くして不幸にも命を落としてしまった彼女は、寂しくて話し相手がほしかったのだと言う。
こうして俺と彼女の共同生活が始まった。
二人はすぐにお互いが好きになった。
触れ合えなくても、しっかりと心は通じていた。
彼女は俺の正義感が強いところが好きだと言ってくれた。
俺は彼女の笑顔が大好きだった。
しかし彼女との別れは唐突にやってきた。
彼女がこれ以上この世に留まれなくなったのだ。
彼女は消えながら約束してくれた。
「生まれ変わって必ず思い出すから」と。

彼女が消えてしまったあと、俺は人生で一番泣いた。
時間がたっても彼女を忘れられず、俺は彼女を捜す決心をした。
彼女の生まれ変わりかもしれない年頃の幼女に手当たり次第に声をかけまくった。
俺は逮捕された。

変質者

道の真ん中にあきらかにイッちゃってる変質者が突っ立ってて、すれ違う女性ひとりひとり指差し確認をしながら、大きな声で
「おっぱい。おっぱい。」
と言っていて、いやだな、どっか行け、と思いながらとおり過ぎようとしたら、
「・・・おっぱい?」って。
ウォイ!!なんで私だけ疑問型なの?変質者でも貧乳って見抜けるのね。
つうかまじショック。変質者に言われたのがショック。

娘が紅茶をいれてくれた

父親が居間で新聞を読んでいると、よちよち歩きの娘が紅茶のカップに水を入れて運んできた。
父親はその美味しい"紅茶"を飲み、自分の娘の優しい心遣いをほめた。
そうして何杯か紅茶を飲んでいるうちに母親が帰ってきた。

「ごらん!この子が紅茶をいれてきてくれるんだ」
と父親が自分の小さなプリンセスを自慢げに示した。
すると母親は、
「こんなよちよち歩きの子どもが水をくめる場所なんて、トイレしかないって気付かなかったの?」

新郎がホストやってるみたいなの

結婚間近の友人カップル。
この前新婦から電話がかかってきて「新郎がホストやってるみたいなの、私あの人を信じられない」と言ってきたので詳しく聞くと、新婦が結婚式にドリーム満載→新郎が「こっちはホストなんだからゲストの事を云々」と説教→新婦「新郎ってホストなの!真面目な公務員だと思ってたのに」と暴走。
これを聞いて「お前ら職場同じな上に同棲中だろうがw」と大爆笑したら電話ガチャ切りされて着拒された。
別にこっちは構わないんだけど、二次会幹事と連絡とってなくて困るのはそっちだぞと言いたい。

夢をかたちに

TDLのマニュアルは異常だろ

ゴミ拾いしてる従業員さんに
俺「何してるんですかw」
従業員「はい?(ニコニコ)」
俺「もしかして夢の欠片とか拾ってるんじゃwww」
従業員「夢は壊れないから欠片は出ないんですよ(笑顔)」
俺「そうなんですね(笑顔)」
プロフィール

ナイア

Author:ナイア
どこかで見たことのある話を載せていきます。

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