一人で焼肉屋

俺は・・・・作家か何か・・・孤独なクリエイターが、原稿を上げたので遅い夕食を一人で食べにきましたという演技というか妄想をしながら、独り焼肉をアルコールで流し込みます。

楽しそうな若者達の嬌声を聞きつつ、小難しそうな顔をして手帳で予定を確認するフリをしたりしてますが、実際は手帳に挟んである「東京地下鉄全図」を見て、「こんな駅名があったんだぁ・・・・」と、一人でビックリしてます。
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迷い小ガモ

昨日の話。
コンビニでバイトしてるんだが、迷い小ガモが店の前でよたよたしてたんだ。
お客さんが連れてきて、どうすんべと小一時間。
とりあえずシンクに水はって泳がせてみた。
超アイドル、お前今この瞬間まさにアイドル、なんてったってアイドル。
お客さん大喜び。
怒られてもにこにこしてた私キモス。
店長も怒りながらほっぺたプルプルしてた。
なぜなら小ガモがシンクから顔だけ出してこっちを見ていたからだ。

すごいなごんだ。
小ガモはさっき飼い主の元に届けてきた。
ばいばい小ガモ。
ちょっと泣いた。

クソゲー

アメリカの同人ゲー

水遁の術で水に入れるようになるが水場が無い。

ハヤブサの術を使うと自分で投げた手裏剣に追い付いてダメージを受けるほど速く動ける。速すぎて制御不可能。

雑魚ボス関わらず痺れ団子を食って動かなくなる。設置すれば一目散に団子めがけて走ってくるので重要アイテム。

分身の術は自分の周りに半透明の忍者が二人増え、本体の動きをトレースするが敵は本体しか狙わないので意味が無い。攻撃判定もない。

例え話

友人が公園でギターの野外演奏をしたときの話です。
演奏を終えて、おひねり入れの紙コップの中身を財布に入れ、荷物をまとめて駅に向かって歩き出した時、公園住人(ホームレス)のおじさんが近づいてきて言いました。
「近くに女が住んでいて、会いにいきたいけど小銭がなくて。電車賃かしてくれない?」
電車賃貸して、というのはお金をせびりたいときの常套句で、もちろん返してもらえることはないのですが、友人もそれを知っているので無視するだろうと思っていたら、
「いくらいるの?」「240円?」とか会話しながら、財布からおひねりでもらった小銭を数えて渡してあげました。

それから友人がおもむろにおじさんの肩に手をおいて、「女には気をつけなさいね」
「それからね、あなたは今はそういう生活をしているけど、いつまでもそういう人生じゃないからね。日本刀を作るところ、見たことある? 熱い火で焼かれて、冷たい水に入れられて、また焼かれて、繰り返しますね。でも最後に立派な刀になる。あなたも、いろいろあるだろうけど、最後にはよくなる」

そして、じゃあね、といって立ち去りました。おじさんは、ポカーンとその場に立って見送っていましたが、やがて走り寄ってきて、「いい話を聞きました。そんな話をはじめて聞きました。ありがとうございました。ありがとうございました・・・・」
おじさん、なみだ目でした。
ちなみに友人は外国人です。外国人から日本刀の作り方で説教されるとは、おじさんもめずらしい体験したと思います。

死ぬ前の願望

俺、死ぬ前に小学生の頃を、一日でいいから、またやってみたい。
わいわい授業受けて、体育で外で遊んで、学校終わったら夕方までまた遊ぶんだ。
空き地に夕焼け、金木犀の香りの中家に帰ると、家族が「おかえり~」と迎えてくれてTV見ながら談笑して、お母さんが晩御飯作ってくれる。(ホントありがたいよな)
お風呂に入って上がったらみんな映画に夢中になってて、子供なのにさもわかってるように見入ってみたり。
でも、全部見終える前に眠くなって、お部屋に戻って布団に入る。
みんなのいる部屋の光が名残惜しいけど、そのうち意識がなくなって…そして、死にたい。

死ねばよかったのに

ある有名な心霊スポットへ、深夜に車で行ってみたんですって。
トンネルを抜けると、そこが有名な心霊スポット。
と、そこに目の前にふっと女の人の白い影が。
あ! と思って、慌ててブレーキを踏んで、降りてみたところ、そこに人影はなく、目の前は崖。なんでもガードレールが壊れていて、ブレーキを踏んでなかったら落ちてしまっていたかもしれないということです。
「あの幽霊は助けてくれたんだ」
そう思って、そこで手を合わせ、お祈りして帰路についたそうです。
トンネルを引き返す途中、ふとミラーを見ると、後部座席に、先ほど、目の前を横切った女の人の姿が……。その女の人は、こう呟いたそうです。
「死ねばよかったのに」







「いや、でもホント助かったよ。ありがと」
「ば……ばかっ、あんたなんか死んじゃえばよかったのよ!」
「お礼しないとな。また来週きてもいいかな」
「ダ、ダメっ! また落ちそうになったら危なあわゎ///」
翌週、なんか弁当用意して待っててくれました。
作りすぎただけで、決して僕のために用意したんじゃないそうです

ばぁばの挨拶

こんばんは
あ、おはようかいな?
時間が時間やで、どっちか分からへんけどな
起きてたん?
喉がゼロゼロしてるん?
あぁ、また発作してるんかいな
しんどいなぁ
腕に管までつけて…そら痛いやろなぁ…

あんな、行くトコができてん
もぉじき行かなあかんねん
せやから来たんや
時間ないから率直に言うで?
あんたの喘息、ばぁばに渡しぃや
持ってったるわ
ばぁばは小さいから全部は無理やけど、半分もらったる
ばぁばが神サンなった時に残りももらいに来るから、しんどいやろけど、それまではあんたも我慢しといてなぁ
神サンの勉強頑張るからなぁ

あ、そろそろ時間やわ
ばぁばが全部もらいに来るまで、あんたは元気に生きてなさいや?
もらいに来るまで、あんたはこっちに来たらあかんよ?
ばぁばとの約束やで~
ほんじゃ行って来るで♪
またなぁ(゚ω゚)ノシ

…ていう夢を子供の頃に見ました
喘息発作起こして入院してる時でした

「さくらばぁば」は14歳の老猫で、いつも私の遊び相手をしてくれてました
発作が収まるまで部屋に来ず、廊下にじーっと座ってる猫でした

ばぁばの夢を見た数日後、私は退院しました
帰宅したら父に「さくらが死んだよ」と告げられて、ばぁばがわざわざ挨拶に来てくれたんだと悟って大泣きしました
それからは入院する程の発作が起きなくなりました
ばぁばが半分持ってってくれたんだと思います

2年前から、喘息発作が起きなくなりました
ばぁばが神サンになった瞬間だったのかも知れない…

みんなは猫又になるぐらい長生きして下さい

子供の頃に信じてた事

父に、「サンタクロースは凄い奴なんだ」と教えられた。
世界中からサンタクロースになりたい人が集まって、5年間訓練をする。
小太りになる為に好き嫌いをせずモリモリ食べ続けたり、おもちゃの入った大きな袋を担ぐ為に毎日筋トレに励んだり、髭の手入れをしたり。
相棒のトナカイは、トナカイが小さな頃からサンタ自身が大切に育てる…と。
そして5年間修行を終えた後、サンタ界の一番偉い人が合格者を発表する。
5年間、サンタクロースになる為に必死に修行したのに合格するのは1割に満たない。
合格者は勿論嬉しいが、5年も共に過ごしたライバル達の気持ちを思うと素直に喜べない。
だから、この「サンタ訓練を頑張ったけど合格出来なかった人」には特典がある。
その特典は、大人なのに25日の朝に枕元にサンタクロースからのプレゼントがある事。
プレゼントと共にサンタ訓練の卒業証書が置かれている事。

この話を幼稚園~小学校3年くらいまで信じてた。
聞く度に感動して「サンタさんは凄い!」と感心していた私。  
小学校1年の時は枕元に「さんたさん そつぎょうおめでとう」という手紙を置いてたらしいorz
それを見て「お父さん大爆笑しながら「あと何年騙されるかなー」って言ってたよ」と母に教えられた。
そんな父は幼稚園の園長さん、もしかして園児達にも同じ話をしてるんじゃ…とちょっと心配。

婚姻届

いらっしゃいませ~(・∀・)
はい♪婚姻届ですね、おめでとうございまーすヽ(´∀`)ノ
できちゃった婚ですかー、ありがちですね(´ー`)
離婚届ご一緒にいかがですか?
たいていのお客様が一年以内に破局なさいますので今のうちに書いておくと・・・は?いらない、そうですか
ではご主人は低学歴のようですし自己破産の申請書は・・・いらない?、そうですか
旦那様か奥様は浮気症ですか?
おすすめの探偵と弁護士の・・・いらない? わかりました(・∀・)、( ゚д゚)<結婚レギュラー1
ただいまキャンペーン中となっておりまして、お子様のDNA検査割引券を旦那様のためにおつけしますね
あぁ奥様、破かないで(゚д゚)

今日カレー?

ある日の夫
野菜スープを作ってたら
「今日カレー?」と聞いてきた

またある日の夫
付け合せにするジャガイモを切っていたら
「今日カレー?」と聞いてきた

別のある日の夫
そうめんを茹でるため大鍋を取り出すと
「今日カレー?」と聞いてきた

昨日の夫
玉ねぎの皮を剥いていると
「今日カレー?」と聞いてきた

今日の夫
私が「今日こそカレーだよ」と言うと
(*゚∀゚*) って顔して出勤した

定年退職

先日、会社の清掃係の人が定年で退職したんだ。
通称いーさん(仮名)。いーさんは少しだけゆっくりな人。
若い頃からずっと清掃係をしていた。

仕事熱心だし、いつもにこにこしてて、みんなに愛されてた。
いーさんはお店で食事したりすることがとても苦手なので、その日の昼休み、天気がよかったから会社の前庭で、
私ら管理部署の有志が集まってお弁当での送別会をした。

そしたら、その話を聞きつけた他部署の人がどんどん集まって、よそで食事をすませた人も飲み物もって集まってすごいにぎやかになった。

そして、私らがこっそり呼んでおいた、いーさんのお母さん(80才すんげー元気)と二人並んでの、花束贈呈。
いーさんもお母さんも、私らも泣いて、でもすごくいい送別会ができたよ。
騒ぎをききつけた社長まで来たのにはびっくりだったけど。

いーさんがいなくなってから、会社のキレイ度がイマイチだよ。
いーさんのローリングサンダー廊下磨きがもう見られないのが残念だよ。

夢遊病

五つ上の姉は幼少の頃から夢遊病で夜中や明け方に家中を歩き回ったり、時には外へ出たりする事もあった。

俺が小学校卒業した日の深夜に両親が大騒ぎしてた。
親父が車で外へ行き、お袋は近所に居る叔父夫婦へ電話してた。
熟睡してた俺も起こされたが、姉がまた居なくなったってパニくってた。
「ど~せすぐ見つかるよ~」と半狂乱になってるお袋を残して部屋に戻り、ベッドに入って寝直そうと伸びをしながら天井見たら、姉貴が天井に貼りついてた。

「あ?・・・」訳がわからずそれ以上言葉も出ないまま、天井にヤモリみたいに貼りついてる姉貴を凝視してた。
姉貴は首を有り得ない角度に回すと俺を見た。
見たというか、瞼は開いていたが黒目がまったくなく白目だけだった。
で、「ニタァ~」と笑った。

多分失神したんだろうけど、翌朝親父に叩き起こされた。
姉貴は家のすぐ裏にあるマンションの駐車場で見つかった。
警察の話では、そのマンションの屋上の給水タンクに登って身を投げたらしい。

親父は泣きながら怒り狂ってた。お袋は放心状態。
姉貴の遺体を見たのは両親と祖父と叔父だけで葬式の間、1度も棺桶の小窓が開けられる事は無かった。
後に叔父から聞いた話だと姉が発見された時、体はうつ伏せで倒れていたが顔は空を睨んでいたそうだ。

三面鏡

祖母の家の古いドレッサーというか、デかい三面鏡に顔を挟んで遊んでたら、いくつも映ってる自分の顔の中に一つだけ知らないおばさんが無表情でまざってた事があった。
あれは怖かったなあ…

道連れ

男の人が会社帰りに駅のホームを歩いていると、自分の少し前を歩いている女性が様子がおかしいことに気がついた。

女性はうつらうつらと歩きたまにフラフラしている。
男性はあの人具合悪いのかなー、危ないなー、線路に落ちたりしないだろうなと思っていたら、案の定その女性が倒れる様に線路へ落ちてしまった。

帰宅時刻だったため女性の周りにはあっという間に人だかりができて線路で倒れている女性に向けて、みんな大丈夫かーと声をかけている。

しばらくすると女性がむっくりと起き上がった。
良かった、意識があるみたいだ。

手に掴まって昇ってこい!男の人を含め数人の男性がホームの上から女性に手を差し伸べた。

しかし女性は顔を伏せて突っ立ったままで反応がない。
そうこうしているうちに電車の発車ベルが鳴り始めた。

おい!何してるんや、早く昇ってこい!危ないぞ!

男性達や周囲の乗客が呼びかけると、女性はすっと顔を上げ、女性に手を差し伸べている男達の顔をじーーっと見始めた。


駅のホームはこの騒ぎに騒然としていたが、女性は相変わらず手を伸ばす男性達の顔を見渡すばかりで動こうとしない。

電車がすぐそこまで迫ってきた時、女性が一人の男の顔をじっと見て、ポツリと呟いた。

「アンタでええわ・・・。」

その瞬間、女性はその男性の手をぐっと握って線路へ引きずりおろし、女性と男性は電車に巻き込まれてしまった。

呼び寄せる

よくある話だが。
もう十数年前、山を歩くのが好きだったので仲間と近くの山をよく歩いた。
そんなある時、偶然にも、木にぶら下がった人生の果てる姿を見つけた。
蛆がこぼれ、見た事もないような大きな昆虫が体内から湧き出ていた。
数人の仲間を残して近くの交番まで届けに行った。
往復で30分ほどその場を離れただけだった。

時刻は夕方に近付いてはいたけど、まだ暗いとまではいかない夕暮れ程度だった。警察官と一緒に現場に戻ると、仲間の女の子が泣き男子までもが震えていた。俺は何度か見ていたので怖いとは思わなかったが彼等には恐怖だったのかもと思ったが、俺が出発の時には
「大丈夫!少し離れてるからw」と笑っていたのに。
発見当時の事を数人の警察官に分かれて聞かれた我々は暗くなる前にと、警察官の誘導で麓の駅まで送ってもらった。

明るい駅に着いてやれやれと思っていると、一緒に警官を呼びに行った仲間が
「あいつらおかしくない?」と聞いてくる。ふと見ると、残した男女三人がまだ何かに怯えるように小刻みに震えている。その様子から、今はまだ何も聞ける状態じゃないと感じて、そのまま家まで帰ることになった。
後日、その日の事を仲間の男子に聞く事ができた。

あの日、俺達が警官を呼びに行った後、本当に少し離れた場所で彼等はその木を遠巻きに見ていたらしい。女の子を挟むように座って遺骸に背を向けて座っていると、どこからか足音が聞こえたのだという。
カサ、カサ、カサ、カサ。こちらに向かって歩いてくる。
それがどこから歩いてくるのか全員がすぐに解った。

一人の男子が意を決して振り返ると、現場はそのままだった。
でも、何か変だった。気のせいだろうと安心して座っているとカサ、カサ、カサ、カサ。また足音がするのだという。
また振り返ると、また何事とも無い。でも何かおかしい。

何がおかしいのかよく解らなかったのだが、はっきりとは見ないようにしていたその木の方に恐る恐る目をやると、その理由が解った。
近付いている。さっきの違和感はこれだった。最初に座った位置よりかなり近付いている。確実にその木の方向に向かって。

それを黙っていようと思い、他の仲間に声をかけようとした時
「近付いてるよね?」女の子が気づいたようだ。「気のせいだよ。」
そうは言ったものの、やはり近付いているのは確かだと思えたので
「やっぱり立って待ってよう。」と言って立ち上がると、女の子が卒倒して倒れた。

確かに少し離れた位置に居たはずなのに、立ち上がった場所のすぐ後ろの木にそれがぶら下がっていたのだ。気を失いそうになるのをこらえて女の子を抱き、その場から少し離れて女の子を起こしたところに俺達が戻ったのだという。
女の子はその後しばらくは入院するほど衰弱し、どうにか回復して学校に戻った。

長い間、寂しい山の中でたった一人で居たのだ。人が自分を見てるのが解り、無視するように背を向けているのだから、自分から近付くか、呼び寄せるのか。
ただ恐怖心からそういう幻覚に襲われたのか。それは定かではないが、そういう事もたまに起こるのが山という場所なのかも知れない。

地下道

大抵の人はそうだと思うのだが、俺は通勤にはいつも同じ道を通っている。
その見慣れたいつもの道で、2年前に体験した話しを在りのままにここに書こうと思う。

その日、俺は会社を出て帰路に付いた。
時間は夜の8時過ぎくらいだったろうか。
いつものように地下道を通ってその先にある駐輪場へ行くのだが、長い地下道を歩いていると、少し先に人影が見えた。

この地下道はあまり人通りが多くないのだが、それでも人は通るしそれだけなら特に珍しいことは無い。
ただ、そいつは明らかに普通とは違っていた。

見た目はどこにでもいそうなただの女子高生。
だが、様子が明らかに変だ。
壁を向いて少し俯きながら、ストラップだらけの携帯を弄っている。
そして、時々何かブツブツと独り言を喋っている。

うわ…これなんかヤバイ人なんじゃないか?

俺は直感的にそう思った。
他にも何人か通行人がいるのだが、皆そいつの事をガン無視している所を見ると、皆そう思っているのだろう。

俺は他の人達と同じように、とにかく気付かない振りをしてそいつの横を通り過ぎた。
そいつを通り過ぎてどれくらい歩いた時だろうか、俺の携帯にメールが着信した。

何気にポケットから携帯を取り出し差出人を見ると、見た事の無いアドレスだ。俺は怪訝に思いながら本文を見た。

「何で無視すんの?」

書かれていたのはたったこれだけ。
意味が解らず「はぁ?」と思った俺は、どうせチェーンメールの類なんだろうと思い、そのまま携帯をポケットに戻そうとした。
するとまたメールが来た。アドレスはさっきと同じ。

「シカトしてんじゃねーよ、こっち見ろよ」

これだけしか書かれていない。
この時になって俺はふとある疑念を感じた

メールしてきてるの、さっきのやつか…?
いやいや、ありえねーだろ、あんなやつ俺は知らねーぞ、なんであいつが俺のメルアドしってるんだよ、おかしいだろ…
でも、じゃあこのメールはなんだ?ただの偶然か?そっちの方が不自然じゃないか?

俺は心の中で自問自答した。
そして、「ありえない」そう思いながら後ろを振り向いた。
うわ…

予感は的中していた。
さっきの女子高生が携帯片手にこっちを向いている。
薄暗い地下道の蛍光灯に照らされ、少し俯いているので顔や表情などはわからないが…

そして、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
一瞬ひるんだ俺だが、ふと冷静になった。

色々ありえない状況だけど、相手はただの女子高生だろ?
こっちが強く注意すればいいだけだろ、アドレスの件もちょっと問い詰めてやろう…

そう思った俺だが、近付いてくるやつを見て全力で逃げ出した。
ある事に気付いたからだ。

まず、今まで気付かなかったがやつは右手に携帯を、左手に血糊ベッタリの大きなコンクリート片を握り締めている。
そしてそれ以上に異様なのがそいつの喋り方だ。

まるで音声の逆回転のように変な抑揚の声でブツブツと何かを喋りながら、足元はゆっくり歩いているはずなのに、凄い速度でこちらに向かってくる。
明らかに脚の動きと実際の速度が合っていない。

俺は一瞬で血の気が引いた。

なんだあれは…
おかしいだろ、ありえないだろ、ありえない…ありえない…ありえない…

俺はパニックになりながら、全力で地下道の出口へと駆け出した。
階段を駆け上がり、もう少しで出口というとき、俺はふと後ろを振り向いた。

すると、目の前にやつの顔があった。
さっきも書いたように、顔も服装もどこにでもいそうな普通の女子高生だ。
だが、やつの顔は明らかに狂気と言える表情だった、言葉ではまるで説明できないが…

俺が一瞬ひるむと、やつは俺に向かって血まみれのコンクリート片を振り下ろしてきた。

「うわあああああああああああああああああ」

俺は叫び声を上げながら地下道の外へと倒れこんだ。

地面に倒れこみ腕と背中に強い衝撃を受けた俺は、暫らく起き上がれなかった。
が、次に来るはずの致命傷になるであろうコンクリート片の一撃がこない。

えっ?あれ?どうなんてんだ…

ふと俺が目を開けて見上げると、そこには何もいなかった。
数人の人が「大丈夫ですか?」と手を差し伸べてくる。

俺は呆然として辺りを見回したが、やつはいない。
起き上がらせてもらい、まだ混乱している俺はふと地下道の方を見下ろした。

階段の一番下でやつがこちらを見上げている…
俺は「あの…そこの…」と声にならない声でやつのいるほうを周囲の人に指差したが、どうやら誰もやつがみえていないらしく、「大丈夫ですか?救急車
呼びますか?」と心配された。

俺は混乱し更に周囲の空気が痛々しく感じ、「大丈夫です、大丈夫ですから!」
と言いながらその場を逃げ出した。

翌日、俺は会社を休んで朝一で携帯を買い替えメルアドも変更した。
そして、あの日から今まで二度とあの地下道は通っていない。

空き家の子供

高校の頃の話。

高校2年の夏休み、俺は部活の合宿で某県の山奥にある合宿所に行く事になった。
現地はかなり良い場所で、周囲には500m~700mほど離れた場所に観光地のホテルやコンビニなどがあるだけで他には何も無いけれど、なんか俺達は凄くわくわくして、はしゃいでいたのを覚えている。

その日の夜の事。
暇をもてあました俺達は、顧問の先生の許可を貰いコンビニまで買出しに行く事にした。
わいわい騒ぎながら10人ほどで外にでて歩き始めると、昼間はそちらのほうに行かなかったので気付かなかったが、合宿所の裏手に家らしき建物があるのが解った。

その建物には明かりが点いていなかった。
多分空き家か民家っぽいけど、別荘か何かなんだろうと思われた。
友人が調子の乗って「あとで探検行かね?」と言い出したが、あまり遅くなると顧問の先生にドヤされるし、ひとまず買い出し終わってから合宿所内で、今後のことは考えようという話になった。

コンビニで買出しをし合宿所に戻る途中、後輩の1人が変なことを言い出した。
例の建物の玄関が少し開いていて、そこから子供がこちらを覗き込んでいたという。
俺達は「そんなベタな手にひっかからねーよ!」と後輩をおちょくったが、後輩が真顔で「マジで見たんだって!」というので、ちょっと気味が悪くなってしまい家が見えるところまで確認に戻ったが、ドアは閉じていて人の気配も無く特に異常は無かった。
俺達は後輩をおちょくりながら合宿所へと戻った。

合宿所へ戻り、2階の廊下から外を眺めると、例の家の1階部分が木の間から僅かに見えた。
俺が友人と「あそこに見えるのそうだよな?」なんて話をしていると、家のドアが僅かに開き、暗くて良く解らないが子供らしい人影が頭だけをドアから出して
こちらを覗きこんでいる。

「…え?」

俺と友人は同時のその光景を目撃し沈黙した。
その後最初に口を開いたのは友人だった。

「おい…あれって…」

友人はかなり動揺しながらそういった。
俺も恐怖というよりあまりにも唐突の事で思考が停止してしまっていて。

「子供…こっち見てるよな?」

としか返せない。

その時、後ろの部屋から笑い声が聞こえてきた。
俺と友人はその声にびっくりし、ハッ!と我に返った。

そして、俺は「これやばくね?ばっちり見えてるよな?」というと、友人が
「おれちょっと携帯持ってきて写真撮る」と自分の部屋へと走っていった。
すると、騒ぎを聞きつけてなんだなんだと合宿所にいる生徒(他校の生徒もいたので総勢60人くらいが合宿所にいたのだが、そのうちの半分くらい、30人ほど)が2階の廊下に集まりだした。

子供らしき人影はまだドアから顔のみを覗かせてこちらを見上げているように見える。
廊下は大騒ぎになり、とうとう顧問の先生たちも何の騒ぎだとやってきた。
第一発見者の俺と友人が事情を話していると、窓から外を見ている生徒の何人かが「あ!」と声をあげ、かろうじて聞き取れる音で

パタン…

とドアの閉じる音がした。
顧問の先生たちが外を見る頃にはドアは閉じられ人影もなくなっており、何事も無い林と明かりもついていない家らしき建物が見えるだけだった。

当然先生たちは信じてくれなかったが、ノリの良い若い先生2人が一応確認しに行ってくれることになり、合宿所の裏手へと回った。
俺達が窓から様子を見ていると、懐中電灯を持った2人が現れ、家の玄関のところで何かやっている。
どうやらドアが開くか調べているようだがあかないようだった。
その後「誰かいますか~?」と声をかけたりしていたのだが、反応がないらしく5分ほどで戻ってきた。

その後、何人かが携帯で撮影した画像も証拠として出したのだが、所詮は携帯の画質、真っ暗な画像が映っているだけで何の証拠にもならない。
俺達は先生達に「さっさと寝ろ」とまくし立てられて自分達に割り当てられた部屋へと戻った。

その夜、なんか中途半端でモヤモヤして寝れない俺達がこれから確認に行くか、それとも昼間行くかを話し合っていると、部屋の窓が

ドンドン!

と叩かれた。
窓の外に人影も見える。
俺達はさっきのこともありビビりまくっていると、外から「おーい、あけてくれ!」
と声が聞こえてきた。

カーテンをあけると、そこには昼間仲良くなった他校の生徒5人がいた。
奴等はどうも窓の外にある20cmくらいの幅のでっぱりを伝って俺達の部屋までやってきたらしい。

5人を部屋の中に入れると、どうも奴等も俺達と同じ話をしていたらしく、これから例の家に行く事にしたので俺達を誘いに来たらしい。
俺達もそれで決心が付いたので、これから肝試し?に行く事になった。

メンツは、うちの学校からは
俺、A也、B太
他校からは
C広、D幸、E介

他のやつは何だかんだと理由をつけて結局来なかった。

俺達は5人が通ってきた窓の出っ張りを伝い外にでると、先生に見付からないように一端道路に出て、そこから大回りに問題の家へと向かった。
一応、家の周りは合宿所の2階廊下から丸見えなので、残ったやつ何人かが異常があれば、廊下から懐中電灯で合図してくれるという計画になっていた。

家の前につくと流石に不気味だった。
遠目には解らなかったのだが、壁には苔が生えているしあちこちに蔦も絡まっている、しかも外から見える窓は全て板が打ち付けられていて、だいぶ長い事放置された場所のようだ。

最初C広とA也とB太が家の周りを確認しに行ったのだが、俺が開かない事は解っていたが何気にドアノブを回すと、すんなりとドアが開いてしまった。
急いで3人を呼び戻し、俺達は中へと入る事にした。

中に入ると夏場という事もあり、室内の湿気が凄くかび臭い。
家の中を探索してみると、埃っぽくカビ臭くはあるのだが、室内は荒らされた様子も無く、家具も何も無いのでやたら広く感じた。

1階を探索していると、E介が「2階から笑い声しね?」と言い出した。
俺達は耳を澄ましてみたが、笑い声は聞こえない。
E介に気のせいじゃないか?といったのだが、E介は気になるらしく見に行きたいと言い出した。
しかし、まだ1階の探索も終っていないので、仕方なく3人ずつのグループに分けて、片方はそのまま1階を、もう片方は2階を探索する事にした。
グループわけは簡単で、同じ学校の俺とA也とB太がそのまま1階を、別の学校のC広とD幸とE介が2階を探索する事にして、何かあったら階段のところで落ち合う事にして別れた。

暫らく探索していると、2階から突然

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

と場違いに明るい笑い声が聞こえてきた。

そしてすぐに「おいE介?どうした?おい!」とC広とD幸の狼狽した声が聞こえてきた。
俺達が大慌てで2階に上がると、一番奥の部屋に3人はいた。
笑い声の主はE介で、窓のほうを向いてまだ

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

と大声で笑っている。
そしてその横にC広とD幸がいて、真っ青な顔でE介を揺さぶったり、頬を引っ叩いたりしていた。
俺達もただ事では無いと、3人のところに行って前に回りこんでE介の顔を見たとき、俺は今自分たちが置かれている状況の深刻さに初めて気が付いた。
E介はほんとにおかしそうに笑い声を上げているのだが、顔は無表情でしかも目からは大粒の涙を流している、それに何か臭いとおもったらどうやら失禁しているらしい。

E介はまるで俺達の事が見えていないかのように、泣きながら笑い続けている。
俺達が狼狽してE介に呼びかけていると、その場で一番冷静だったB太が

「とりあえずE介このままにしておけないし、合宿所まで運ぼう」

と言ってきた。

そして、俺達はE介の手足と肩を持ち外へと運び出そうと1階までE介を運んだ。
が、そこで問題が起きた。
ドアを開けようとしたB太が声を震わせながら大声で

「ドア開かねーよ!」

と言ってきた。
俺達はE介を廊下に降ろし、みんなでドアを開けようとしたのだが、さっきは簡単に開いたのに今はびくともせず、6人の中で一番体格の良いA也がドアにタックルしてみたのだがそれでもまるで開く気配が無い。

俺達は軽くパニックになり顔を見合わせていると、2階から微かに

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

と、まるで抑揚の無い機械的な声というか音というかが聞こえてきた。
E介はまだ床に寝転がされたまま笑っている。
とにかく外に出ないといけない、そう考えた俺は、1階のリビングがガラスのサッシのみで割れば出れそうな事を思い出し、4人にそれを伝えるとリビングへと向かう事にした。
その時、ふと俺は階段の上を見て絶句した。

階段の踊り場の少し上のところから子供の顔が覗きこんでいる。
月明かりが逆光になっていて表情とかは何も解らないが、顔のサイズや髪型からさっきの子供と分かった。
相変わらず

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という声も聞こえてくる、どうやら声の主はこの子供らしい。
しかし何かがおかしい、違和感がある。
俺はすぐに違和感の正体に気が付いた。

子供は階段の手すりからかなり身を乗り出しているはずなのだが、なぜか頭しか見えない。
あれだけ乗り出せば肩辺りは見えても良いはずなのだが…
俺がそんな事を考えながら階段の上を凝視していると、C広が

「おい何してんだ、早く出ようぜ、ここやべーよ!」

と俺の腕を掴んでリビングへと引っ張った。
俺には一瞬の事に見えたが、どうも残りの4人がE介をリビングへ運び込み窓ガラスを割り、打ち付けてある板を壊すまで、ずっと俺は上の子供を凝視していたらしい。

俺は何がなんだか解らず、とりあえず逃げなければいけないと皆でE介を担いで外へと出た。
外へ出ても相変わらず

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という声は家の中から聞こえてくる。
俺達はE介を担ぎ、D幸が合宿所へ先生たちを呼びに行った。

その後、E介は救急車で運ばれた。
俺達は先生方に散々説教をされ、こんな事件があったので合宿はその日で中止となった。
帰宅準備をしていた昼頃、十台くらいの数の車が合宿所にやってきた。中から20人ほどのおじさんやおじいさん、あと地元の消防団らしき人が降りて顧問の先生たちと何か話しをすると、合宿所の裏に回り例の家の周りにロープのようなものを貼り柵?のようなものを作り始めた。

俺達は何事なのかと聞いてみたが、顧問の先生たちは何も教えてくれず、そのままバスで地元へと帰った。
E介は2日ほど入院していたが、その後どこか別の場所へ運ばれ、4日後には何事もなかったように帰ってきた。
後から事情を聞いてみると、E介には家に入ったところから昨日までの記憶が何もなかったらしい。

E介が帰ってきた日の夜、俺が自分の部屋で寝転がってメールしていると、一瞬

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

というあの声が聞こえた気がした。
びっくりして起き上がりカーテンを開けて外を見たりしたが、いつもの景色で何も無い、俺は「気のせいかな?」と起き上がったついでに1階に飲み物を取りに行くことにした。

俺の家はL字型になっていて、自室は車庫の上に乗っかるような形になっている。
冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し2階へ上がると、丁度階段を上がったところの窓のカーテンの隙間から僅かに自室の屋根の部分が少し見えた、すると屋根の上に何かがいる…
この前あんな事があったばかりなだけに、ビビりまくった俺が窓からカーテンを少し開けて外の様子を覗くと、屋根の上に和服を着た子供が、両手を膝の上に揃えて正座しているのが見えた。

それだけでもかなり異様な光景なのだが、それだけではなかった。
子供は体を少し前屈みにして下を覗きこむような姿勢なのだが、首のあるはずの部分から細長い真っ直ぐの棒のようなものが1mほど伸びていて、その先にある頭が俺の部屋の窓を覗き込んでいた。

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という声も窓越しにわずかに聞こえてくる。
俺はあまりの出来事に声も出せず、そのまま後ずさりすると1階へ下りた。
寝ている親を起そうかとも思ったが、これで起してあれがもういなかったらそれこそ恥ずかしい…
その時なぜかそう思った俺は、そのまま1階のリビングで徹夜した。
たしか朝4時過ぎまで「ホホホ…」という声は聞こえていたと思う。
翌朝、恐る恐る部屋に戻ってみたがあれはいなくなっており、室内にも特に変わった部分は無かった。

その日の昼頃、自宅の電話に顧問の先生から電話があった。
この前の件で話があるからすぐに来いという。
昨晩のこともあった俺は、嫌な予感がして大急ぎで学校へと向かう事にした。

学校へ到着すると、生徒会などで使っている会議室に呼ばれた。
会議室に入ると、A也、B太、それにC広とD幸までいる、更にうちの学校とC広たちの学校の顧問の先生たち、それと見た事の無いおじさんたちも数人いた。

まず顧問の先生のうち1人が話し始めた。
要約すると、E介にまた同じ症状だでたらしく、とある場所に運ばれたらしい、そして、俺達に「昨夜おかしな事はなかったか?」と聞いてきた。
俺はすぐさま「昨夜のあれ」を思い出し、

「あのー、深夜になんか変なのが俺の部屋を覗き込んでるのが見えて…」

と事情を話した。

A也、B太、C広、D幸には特に異常はなかったらしい。
するとC広が

「そういやお前(俺)さ、あの家の中で階段の上眺めながらボーっとしてたよな?あれ関係あるんじゃないか?」

と言い出した。

そういえば…

俺はあのときの事を思い出し、皆に「あの時さ、変な笑い声みたいなのと、なんか子供の姿見たよな?」と聞いてみた。
しかしみんなは、声はずっと聞こえていたけど、子供の姿は最初のドアのところで見ただけで、家の中では見ていないという。

俺達がそんなやり取りをしていると、さっきまで黙っていたおじさんが事件の詳細を話し始めた。
非常に長い話だったので要約すると。

俺達がであったのは、「ひょうせ」と呼ばれるものらしい。
これはあの土地特有の妖怪のようなもので、滅多に姿を見せないが、稀に妊婦や不妊の家の屋根に現れて笑い声をあげるらしい、そうすると妊婦は安産し不妊の夫婦には子供が産まれるという、非常に縁起の良いものだそうな。
ただし、理由は全く解らないが、数十年に一度なぜか子供を襲い、憑り殺してしまうという厄介な存在でもあった。

ちなみにあの家は全くいわくも何もなく、ただ「ひょうせ」が偶然現れただけの場所なのだが、「ひょうせ」が子供を憑り殺そうとした場合、それに対する対抗策があり、「ひょうせ」が最初に現れた場所に結界を作り封じ込め、簡易的な祠を造って奉ることで殺されるのを防ぐ事ができるらしい。
合宿所から帰る直前、俺達が見たのはその封じ込め作業だったわけだ。

おじさんは続けて。
ただ今回は何かおかしいのだという。
普通祠をつくって奉ればそれで終るはずなのだが、今回はどういうわけだが逃げられてしまってE介がまた被害に会い、しかも俺のところにまで現れている。
それに、そもそも現れるだけでも珍しい「ひょうせ」が自分達の村とその周辺以外に現れるというのも全く前例がないうえに、「ひょうせ」が前回子供を襲ったのは20年ほど前で「早すぎる」のだそうな。

ただ、おかしいおかしいといっても現実に起きてしまっているのだから仕方が無い。
俺達は学校で村から来たお坊さんに簡易的な祈祷をしてもらい、お札を貰って君たちはこれで大丈夫だろう、と言われ帰された。
ちなみにE介に関しては、暫らくお寺で預かって様子を見て、その間にもう一度祠を建てて「ひょうせ」を奉ってみるとの事だった。

学校から帰された俺達は、各々迎えに来ていた親に連れられて帰る予定だったのだが、話し合ってひとまず学校から一番近い俺の家に全員で泊まることにした。
安全と言われていてもやはり不安だし、全員でいたほうが少しは心細く無いと思ったからだった。

その夜、俺達が部屋でゲームしていると

コン…コン…コン…コン…

と窓を規則的に叩く音がした。

さっき説明した通り、俺の部屋は車庫の上にあり壁もほぼ垂直なので、よじ登って窓を叩くなどまずできない。
しかも、その窓は昨晩例の子供が覗き込んでいた窓だ…

状況が状況だけに全員が顔をこわばらせていると、B太が強がって
「なんだよ、流石に誰かの悪戯か風のせいだろ?」
とカーテンを開けようとした。
俺は大慌てでB太に事情を話しカーテンをあけるのを踏みとどまらせた。

窓を叩く音はまだ続いている。
D幸が
「やっぱ正体確認したほうがよくね?解らないままのほうが余計こえーよ…」
と言ってきた。
確かに何かその通りな気がした、なんだか解らないものが一晩中窓を叩いている状況なんてとても耐えられそうに無い。
俺達は階段のところまで移動し、カーテンを少し開けて隙間から俺の部屋を見てみた。

いた…
昨日のあれが、やはり昨日と同じように首をらしき棒を伸ばし、窓から俺の部屋を覗き込んでいる。そして、時々

コン…コン…

と頭を窓にぶつけている。

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という例の抑揚の無い笑い声のようなものも聞こえてきた。

音の正体はこれだった。
異様な光景だった、そして、昨日は気付かなかったが、あれは子供と言うより和服を着た人形のようだった。
頭が窓にぶつかる音も、人間の頭と言うより中身が空洞の人形のような音だ。
C広が
「ひょうせって今日もう一度封じ込めたんじゃねーのかよ…」
と呟いた。

その時、俺の親父が騒ぎに気付いて
「お前ら何やってるんだ?」
と階段を上がってきた。
その時、その声にびっくりしたA也が思わず腕を窓にぶつけて

ドン!

と大きな音を立ててしまった。

"それ”の棒の先にある頭だけがカクンッという感じでこっちを向いた。
俺達は顔をはっきりと見た。

"それ”はおかっぱ頭で笑顔の人形だった。ただし、ただの人形ではない。
顔は人形特有の真っ白な肌なのだが、笑顔のはずの目は中身が真っ黒で目玉らしきものが見えない、口も同じで、唇らしきものもなくそこにはやはりぽっかりと真っ暗な三日月状の穴のようなものがある。
それでも、目や口の曲線で「にっこり」と言う感じの笑顔なのが解るのが余計に不気味だった。

親父が
「だからお前ら何やってるんだ?」
と窓のところに来てカーテンを全開にすると、それはサッ!と屋根の影に隠れて見えなくなった。
が、親父にも一瞬「何かがそこにいた」のは解ったらしい。
親父は大慌てで1階に降りると、携帯でどこかに電話をし始めた。
どうやら昼間祈祷をしてくれたおぼうさんやおじさん達の連絡先を聞いていたらしく、そこと顧問の先生のところに電話しているらしい。

その後、影に隠れたきり"それ”は二度と姿を現さなかった。

朝になり、昨日のおじさんたちや顧問の先生などが俺の家に来た。
とりあえず異常事態ということで、全員を合宿所近くにあるお寺まで連れて行くという。
みんなの親たちも俺の家に来たのだが、おじさんが
「被害が更に拡大するといけないから親御さんは来ないほうがいい」と言うことで、行くのは俺達だけになった。
俺達は着の身着のまま車に乗せられ出発した。

昼前にお寺に到着した。
お寺に入ると、ジャージ姿でゲッソリとした感じのE介が俺達を出迎えた。
E介によると、あれから色々あったがなんとか今のところは助かっているらしい。
本堂に入ると、お坊さんと昨日のおじさんが昨晩の出来事を詳しく教えてほしいと言ってきた。

俺達が順番に状況を話していると、人形の姿の説明のところでおじさんが
「ちょと待った、人形?首が長い?何の話をしているんだ?」
と驚いた顔で言ってきた。
そして、俺達が昨日見た人形の姿を改めて説明すると、お坊さんと
「いや、これはひょうせじゃないぞ、どうなってるんだ?」
「おかしいと思ったんだ、色々辻褄が合わない」
と、2人で話し合い始めた。

そして、暫らく話し合った後俺達に状況を説明してくれた。
結論から言えばひょうせに憑りつかれていたというのは全くの勘違いで、どうも俺達に付き纏っているものの正体は全く別の何からしい。

俺は
「今更それはねーだろ…」
と思った。
おじさんが続けた。
最初状況を聞いたとき

・子供のような姿
・笑い声
・生徒がおかしくなって笑いながら泣いている
・村の近く

と言う状況から「ひょうせ」だと思ったらしいが、どうも今詳しく話を聞いてみると、ひょうせのしわざと症状は似ているが、姿形がまるで伝承や過去の目撃証言と違うらしい。
そもそもひょうせというのは、子供くらいの姿をした毛むくじゃらの猿のような姿で、服も着ていないしおかっぱ頭でもないし、当然首も伸びたりもしないようだ。
笑い声も俺達の聞いた抑揚の無い機械的なものではなく、笑い声といっても猿の鳴き声に近いとの事だった。

俺達は途方に暮れてしまった。
ぶっちゃけこの寺に来れば全部解決すると思い込んでいたのに、今更
「なんだかわからない」ではどうしたらいいのか…
室内が重苦しい雰囲気になり、皆しばらく沈黙していると、お坊さんがこう言ってきた。
「とりあえず何か良くないものがいるのは間違いない、少し離れたところにこういう事に詳しい住職がいるので、その人を応援に呼んでくる、暫らく皆座敷で待っていてほしい」
そういうと、車に乗りどこかへ行ってしまった。
俺達は座敷に通され呆然としていた。
おじさんはしきりにどこかへ電話をし、かなりもめているように見えた。

夕方になり、お坊さんが別のお坊さんを連れて戻ってきた。
お坊さんが戻ってくると同時に、さっきのおじさんが携帯を片手に
「えらい事になった!」
とお坊さんのところに走り寄って来た。

話を聞いていると、どうも村の子供が1人E介と同じ症状でいるところを発見されたらしく、これからこっちへ連れてくるという。
この寺のお坊さんが俺達に
「とりあえず後で話をするから、ひとまず君たちはさっきの座敷で待っていてくれ」
というと、大慌てで2人で本堂の方へと歩いていった。

それから15分程すると、ワゴン車がやってきた。
車の中からはE介のときと同じようにけたたましい笑い声がする。
車の扉が開き、中から数人の大人と笑い声を上げる以外身動き一つしない中学生くらいの子供が運び出され、本堂へと連れて行かれた。

暫らく本堂の中から

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

という笑い声とお経を読む音が聞こえていたが、それも10分くらいで収まり静かになった。
それから更に15分ほどすると、お坊さん2人が俺達のいる座敷に入ってきて、色々と説明し始めた。
さっきの子供のほうは、消耗が激しいので本堂に布団を敷いてそのまま寝かせているらしい。

応援でやって来たお坊さんによると、どうも話を聞いた感じやさっきの子供の様子から見て、幽霊や妖怪のようなものが原因ではなく、何かしらの呪物が原因ではないかという。
特に根拠があるわけではないけれど、感覚的にそう感じるらしい。

そして、呪物の類だとすると、と前置きし。
恐らく祈祷で呪物と君たちの「縁」を切ってしまえば、なんとかなるのではないかと、そして、できればその人形も供養してしまいたいとのことだった。

とりあえずそういう話でまとまったという事で、俺達もそれで解決できるなら早くしてほしいと、話がまとまた。
と、その前に俺はずっと我慢していたのだがトイレに行きたくなった。
事情を話し、「でも一人じゃなぁ…」と思っていると、他のやつも全員我慢していたらしく、結局6人で連れションすることになった。

トイレからの帰り道、本堂へ続く廊下を歩いていると、どこからか

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という例の抑揚の無い声が聞こえてきた。
場所は解らないが、あれがすぐ近くにいるようだ…
C広が
「近くにいるよな…」
というと
A也が
「かなり近いぞ、やばくね?」
と返した。

たしかにかなり近い、でも姿は見えない。
すると最後尾にいたE介とD幸が
「やばい、早く本堂に逃げろ!」
と窓の上のほうを指差しながら叫んだ。

俺達が指差した方向へ振り向くと、それはいた…
前と同じように屋根から頭だけを突き出し

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

と笑いながら、例の真っ黒な目と口の顔をこちらに向けながらニコニコと笑っている。俺たちは全力で逃げ出した。

本堂に着くと、お坊さん2人とさっきのおじさんが待っていた、
今になって気付いたのだが、おじさんはどうもこの村の村長さんらしい。
俺達が事情を話すと、お坊さん達はすぐさま俺達を座らせ、お経を読み始めた。

暫らくお経を読んでいると、本堂の天井のほうから

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という例の笑い声と

コツ…コツ…

という俺の部屋で聞いたあの音が聞こえてきた。
俺達はビビりまくって身を寄せ合っていた。
暫らくすると声が聞こえなくなった、俺が

「終ったか?」

言い切らないうちに、今度は本堂の横の庭のほうから

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という声が聞こえ始めた。
そして、薄暗くなり始めた本堂の障子に、夕日に照らされたあの人形の頭が映し出された。
頭はユラユラ揺れながら相変わらずあんぽ不気味な笑い声で笑っている。

その時、俺は恐怖心と不安感と連日の寝不足でもう耐えられなくなって、ちょっとおかしくなっていたんだと思う。
人形の影を見て、恐怖心よりもその姿にイラつきはじめた。
ユラユラ揺れている姿を見ると、とにかくなんだか良く解らないがムカついてきて、とうとう我慢できなくなった。

俺はお坊さん達がお経を読んでいる横の鉄の燭台を掴むと、蝋燭も刺さったまま引き抜き、周りが制止するのも振り切り障子を開けた。
目の前にあの人形の顔があった。

一瞬俺は恐怖心に襲われたが、怒りとイラつきが勝ってそのまま燭台をぶら下がっている人形の頭目掛け

「ふざけんなーーーーーーーーーー!」

と叫びながら振り下ろした。

バキッ!

という音がして燭台の先端が人形の顔にめり込み、そのまま人形は地面に落下した。
俺は裸足のまま庭に下りると、更に燭台を振りかぶり人形に打ち下ろした。
すると、なにか頭の中に妙な感覚が芽生え始めた。
人形はそれでもなお

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

と無機質に笑っている。
俺はおかしくも無いのに笑いたくなり、なきたくも無いのに目からボロボロと涙が零れ落ちてくる。
明らかにE介たちと同じ状況になりつつあるのだが、それでも俺は燭台を振りかぶり人形に打ち下ろすのをやめなかった。
あとから話を聞くと、俺はゲラゲラと笑いながら無表情でボロボロと涙を流していたらしい。

暫らくそんな状態が続いていると、どうも燭台に残っていた蝋燭の火が人形の服に燃え移ったらしく、人形が煙を上げて燃え始めた。
友人たちによると、人形の

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という笑い声と、俺の絶叫が交じり合い、薄暗くなり始めた周囲の雰囲気と合わさって、異様な状況だったという。

それでも俺は笑い泣きしながら殴り続けていると、どこを殴ったのかよくわからないが

メキッ!

という鈍い音がした。
その途端、俺の中の妙な感情が消えた。
消えたというか、急にシラケてしまったといえば良いのだろうか、とにかく人形に対するイラつきも、笑いたいという気持ちも泣きたいという気持ちも急に無くなってしまった。

俺はその場にヘタり込み、友人たちやおじさんが
「…大丈夫か?」
と心配そうに近付いてきた。
人形はもう笑ってもいないし動きもしないが、燃えたままでは不味いので友人たちとおじさんが砂を掛けて消していた。

理由は解らないが、俺は何故か全て解決したような、そんな良い気分になっていた。
この騒ぎの中、お坊さん2人はずっとお経を読み続けていたらしい。
人形(もう殆ど残骸に近かったが…)の事は明日詳しく調べる事になり、箱に入れてお札を貼り、本堂に安置する事になった。
俺達はお坊さんの好意でそのままお寺に泊まることにした。

翌朝。
俺達は本堂に呼ばれた。
どうやらお経のお陰なのか、俺がぶち切れたのが原因なのか、理由ははっきりしないが、どうも一応解決はしたらしい。
そして、人形はこのままこのお寺で供養する事になったのだが、結局この人形が何なのか、その辺りは謎のままだった。

ただ、燃え残った人形の胴体に、焼け焦げ消えかかった文字で
「寛保二年」という記述と、完全に燃えて文字数しかわからない作者の名前6文字、それとはっきりとは解らないので残っている文字の痕跡からの推測だが、「渦人形」という単語が読み取れた。
お坊さんが言うには、とにかく正体は不明だが何らかの呪物である事は間違いないらしい。
燃え残った残骸に頭と動を繋ぐ棒の部分があったのだが、そこにびっしりと何か呪術的な模様が書かれていた痕跡があるのが確認できたとの事だった。

その後、今に至るまで俺も含め当時のメンバーには知る限り、何も起こっていない。
お寺のお坊さんからは、人形の正体が分かったら連絡をくれるという話だったが、あれから数年経つが未だその連絡も来ない。

嫌いなおばちゃん

実家が愛媛の松山なんですけど、当時小学生だった僕のめちゃくちゃ近所に福田和子が住んでいました。
田舎だったんで、家の外で壁に向かってボールを投げて遊んでいると、うるさいとゲンコツを食らわされた事もあります。
それを知った母親が怒って注意しに言ったらしいけど、逆に怒鳴り返されたらしい。
母親とはすごく仲が悪かったらしいし、僕も大嫌いなおばちゃんだった。

それなのに家の親父は学校の先生なんですけど、よく福田和子に飲みに誘われたりしてたらしい。
当然断ってたらしいけど。
それからすぐ松山であの事件が起こりました。
今思うと少し怖い。

武器

中3の途中から今までは受験勉強が忙しくて中断したが、俺は小学生からその中3の間まで、先生から多くのことを学んだ。
オカルトに興味が無かった俺も、その間に先生が凄い量の知識を持っているのは分かってきた。
そして、多くの術的な道具も所持してるんじゃないか、と気になってきた。
陰陽師の話なんかではさ、悪い霊と戦う為の武器とか定番だよね。
あれだけ多くの知識量を蓄えているなら、武器の一つや二つも持っていて不思議じゃないよね。

それで俺は勉強の合間に、先生は何か凄い武器を持って無いの?と聞いてみた。
今思えば、子供にしても俺は、馬鹿な事を聞いたものだ。
先生は笑い、武器というと、どんな武器のことかな、と聞き返してきた。
悪い術者や霊と戦う為の武器、と俺は答えたと思う。
その時の先生は、何とも言えない表情をしてた。
そして暫らく考え込んだ後、有ることは有るよ、と教えてくれた。
けれども、それは絶対に見せられないし、どんな物かは教えられない、と。

そもそも呪術的な武器とは何かと聞かれた場合、普通の日本人はなんて答えるかな?
陰陽師の話を読んでいるならば、符なんて連想するんじゃないかな。
他には清めた水だったり、塩だったり。
しかし実際の武器は、そんな生易しいものじゃないよ、と言っていた。

以前、先生が台湾に行った時、道士が祭壇にある物を飾っていたのを見た。
それは何ですか、と先生が聞くと、これは我々道士の武器だと説明してくれた。
どのような形状かは、ここで書けない。
ただ、それは非常に強力で、使うと付近の霊を全て粉々にしてしまう、と。
だから使用する時、もし近くに式神を使役しているならば注意しなくてはならない。
敵味方など関係無く、辺りの霊を全て蹴散らしてしまうから。

また、とある国で造られている呪術の剣も非常に力が強い、と教えてくれた。
製法からして、非常に怖い。
最初に、その刃を造るための鉄を、墓場へ長い間、埋めておく段階から始まる。
墓場というのは陰の気が非常に強いからね。
原材料となる鉄に、その陰の気を長い間かけて染み込ませておくんだ。

しかも、その製作中に、その刀身に特殊な呪術を施して行く。
その国では、このような道具を作る術者が数多い。
そして、この剣は製作者の術者の力量が並でも強力になってしまう。
ましては高度な術者ならば、非常に強力な剣になるんだ、と。
神であっても低位ならば、恐れさせることも可能だ、とね。
更に、もし式神を使役している術者が所持する場合になると、その式神をも恐れさせるため、お前達に剣を向けない、と最初に安心させる必要がある、と。

だから先生は言ったんだ。
術者はいざという時のために、強力な武器を持つ必要がある。
けれども同時に、武器を持つ行為自体が非常に危険であるのを自覚せねばならない、と。
例えば、そんな武器を所持して外出する場合、行き先に注意する必要がある。

特に心霊スポットなんかは行かない方が良いね、と。
そんな強力な武器を見せびらかして歩いたら、霊に喧嘩を売るような物だから。
その地に棲む霊達に対する挑発に他ならないんだと、先生は言っていた。
所持者本人にその気は無くても、と。
霊が霊を呼び、強大な力になって、自分に向かってくる場合だって有りうるから。

そして、絶対にしてはいけないのが、荒神を祭る場所への所持。
例を挙げると、日本なら平将門公を祭る場所へ持ち込んだら、大変な目に遭う、と。
その所持行為は、宣戦布告とみなされてもおかしくない。
しかも神様というのは、傍に多くの者達が控えているからね。
平将門公ならば、多くの兵の霊を引き従えているだろう。
しかも一人一人が、長い間に力を蓄えた一騎当千の強者だと。
術者が個人で使役する式神とは、比べ物にならない程の力を蓄えている、と。
そんな荒神に仕える多くの霊達が、無礼者に対して一斉に攻撃を仕掛けてくる。
そうなったら、どうにもならないね、と。

だから強力な武器というのは、同時に非常に危険なんだよ、と先生は教えてくれた。
時には所持しているだけが、とても怖いくらいにね、と。

しかし面白いのが、強い武器であれば強い武器であるほど、使う頻度は下がるという事実。
道士の方々も、前述した以上に強力な武器を、数多く所持している。
けれども、そんな武器を本気で使用する機会など、滅多に無いね。
一生使うことも無いまま、終わってしまうのが殆どじゃないだろうか。
日本の警察官と一緒だよ、と先生は説明した。
勤務中に備品の拳銃を発砲せず、定年退職する人達が殆どじゃないかな。
酔っ払いや喧嘩を止める場合に、警棒を使う程度じゃないかな、と。

そして先生は、もしかして何か呪術的な武器が欲しいの?と聞いてきた。
俺が、うん、欲しいと素直に答えると、先生は男の子らしいね、と笑った。
じゃあ、だからこそしっかり勉強しなくてはいけないよ、と。
武器を使うには、冥律という基礎をしっかり身に着けねばならない。
これは様々な術式と同じなんだ。
人間社会だって武器の扱いを取り締まる、銃刀法があるよね。
同じように、冥律を犯さないよう、武器の携帯に注意せねばならない、と。

しかしね、仮にそんなものを持ったとしても、あまり変わらないよ、と言った。
先生自身が若い頃、強い武器を初めて手に入れた時は、とても心躍ったそうだ。
これで自分も術者の仲間入りだ、とね。
たとえどんな敵が現れても、今の自分なら負けることは無い、とか。
しかし、しばらく所持して分かったんだが、使う機会なんて無いんだね。
先生自身、別に敵対する術者がいるわけでも無いし。
強力な敵に出会う機会があるわけでも無いし。
現に入手してから、今まで殆ど使ったこと無いんだよね、と。

だから強力な呪術武器になるほど、埃が溜まりやすくて掃除が面倒なんだ、と先生は笑っていた。

呪術

先生の所で占いの勉強を始めてから、暫らくした頃だと思う。

占いの勉強と言っても、脱線して雑談することが多かった。
その話の流れで、俺は学校にムカつく奴がいる、みたいなことを口にした。
誰だって、学校や会社に腹の立つ奴はいるよね。
そんなことを愚痴ってたんだ。
それで俺は冗談半分で、先生は呪いの掛け方を知ってるの?と聞いた。
さてね、と先生が、はぐらかした覚えがある。

出会ってから、今年で7年目になる。
その間、今まで先生は人を呪うな、とは一言も戒めなかった。
その代わりに人を呪い殺したらどうなるか、例の冥律を絡めて教えてくれた。
人を呪わば穴二つ、の諺は決して偽りではない、と。
他者を呪って害した場合、どうなるか考えた上で決めなさい、とね。

じゃあ、俺はなぜ呪いが、呪術なんて物が存在するのか、その時に聞いたんだね。
人を不幸にし、自分も不幸にしてしまう呪術なんて、無い方が良いに決まってる。
けれども実際は、それを後世に伝えているじゃない、と。
すると、それは違うよ、と先生は言った。

例えば術式というのはね、陰陽五行説が深く関わってくる、と。
これらを勉強していると、自然に呪いの仕組みも分かってくるそうだ。
君だって、勉強してれば、いつかは分かってくる、と。
例えば呪術に精通している道士の方々も、望んでそれを勉強したわけじゃない。
道士だって全員が聖人君子じゃないし、中には使う人もいるけどね。
そして道士も含めて占術、風水、易学などを極めようとしてる人達は大勢いる。
そんな人達もまた、呪術の仕組みに当然気付いているだろう。
大抵の人は極めようとする道に専念して、呪術に縁が無い人生だけどね、と先生は笑った。

なら、呪いを極めようとする人は居ないの?と俺は聞いた。
先生は難しい表情を浮かべたと思う。
そして、居ない事は無いね、と答えた。
但し、この道の学問は実践をして、初めて身につく。
占術は実際に人を見て鑑定し、風水も実際に地形を見て鑑定、といった感じにね。
そうやって、自分のスキルを高めて行くんだ。
だから、呪術もまた人を呪って始めて身につくんだよ、と。

しかし、呪術は冥律に叛くことに他ならない。
人を呪えば呪うほど、術者自身の寿命が削られていくと思って貰っていい。
何かの道を究めようとすれば、多くの時間が必要だ。
だから呪術の道は、他と違って極めるのが非常に困難だね、と。
そのような事情により、呪術を極めんとする人は短命だ。
普通の人は、決して手を出さない。

しかしだね、と先生は重たくなった口を開いてくれた。
若い頃、とある国で呪術を極めた者が2人いたという噂を耳にした。
そこはとても呪術が盛んな国でね。
貧しい人達が身を立てるため、呪術に走ってしまうんだ、と。
それこそ、大勢の術者が呪術に身を捧げ、志半ばで潰えていくのに。

そして先生は言った。
今まで自分は占術を極めた、いわゆる達人と呼ばれる方々とお会いしてきた。
そのような方々は、一種の悟りを開いており、普通の人間とは違って見えたね、と。
自分も先生のこと、普通の人間と思えないんだけどね。
じゃあ、呪術を極めた人は、どんな存在になると思う?と聞いてきた。
呪術に長けているというレベルではない。
呪術を極め、人間としての一線を越えてしまった者が2人いたんだ、と。

これも日本では無い国で起こった本当の話。
その国の農村を訪れた先生は、ある老人から話を聞いた。
自分が子供の頃、同年代の子供達が血を吸われて死んでいる事件が起こった。
朝になって親が気付いたら、子供が干乾びて死んでいたという。
その翌日にも一人、また次の日にも、と事件は立て続けに起こった。
家族達は泣き叫ぶが、誰が犯人なのかなど全く見当もつかない。

すると年寄りの一人が、村の周りの山や森をくまなく探索するよう命じた。
これは呪術の一種であり、術者は近くの暗い場所に潜んでいる、と。
そして山狩りが始まり、程なくして洞窟に男が一人隠れているのが見つかった。
男は洞窟の中で奇妙な儀式をおこなっていたという。
子供を殺したのはこの男に違いない、と村人達から殴り殺された。

年寄りが言うには、この男は呪術を極める最終段階に入っていたと。
この呪術大成の為に49日間暗闇にて、毎晩子供の生き血を吸う呪術を続けなければならない。
しかし途中で見つかってしまい、結局は怒りを買った人々から復讐されて終わる。
では、この49日間の呪術を成し遂げたらどうなるか?
殆どの者達は失敗したが、最低でも2人は成功したと記録には残されているそうだ。
ここまで来た術者は、もう人間とは呼べない存在だね、と先生は教えてくれた。
何なのと聞く俺に対し、魔人だね、と答えてくれた。

魔人なんて言葉、冗談のように聞こえるが、先生は大真面目だった。
人間以上の力を持つと同時に、寿命が無くなってしまうんじゃないかな、と。
その身体は刃や銃弾を通さず、不死になってしまう、と。
信じられないけど、道教にはタオチャン??という失伝した術式がある。
その中国語、半分忘れてしまったけど、確か、そんな言葉だった。
その術式だと、身体を刃で切りつけられても無傷、軽症で済むと。
呪術を極めた魔人は、この系統の術式を完璧に習得しており、外的な攻撃を受け付けない、と。
この場合は、道教のそれを遥かに越える術式なんだろうね。
そして、いとも容易く人を呪い殺せる、と。
仮に、こんな魔人と敵対してしまったら、どうにもならない。
術式に長けた台湾の道士の方々でさえ難しいだろうね、と。

そしてこの話の締めに、先生は僕に問いかけた。
なぜ、そこまでして、そんな人達は、呪術を極めようとするか分かるかい?と。
占術や呪術は、歴史上の人達を例に見ると、大きな挫折を経験して極める場合が多いんだ。
例えば日本には昔、有名な易学者がいてね、その人も投獄されたりしたんだよ。
だからこそ、悟りを開いたような易を立てることができたかもしれない、と。
何かしらに対する大きな絶望と挫折。
それを経験した人は、才能を越えて術式を極めてしまう場合がある、と。
だから、この呪術を極めて魔人となってしまった人も、
そうするだけの理由、つまりは、そんな人生を歩んできたのではないか、と。
人間を止めても巨大な力が欲しい、という過酷な人生だね。

また、国によっては、日本人では想像もつかない悲惨な生活があるから、と言った。
どれだけ懸命に働いても、勉強しても報われない生活。
その日に食べる物さえこと欠く貧困。
そこまで追い込まれた人達の選択肢は、本当に少ない。
悲惨な環境もまた、魔人を産み出す理由の一つだね。
呪術が発達する国というのは、その国情に問題があるんじゃないかな、と。

そして、自分は平凡な日本人で本当に良かった、と先生は言っていた。

冥律

話を一つ書かせて頂く。
そういえば、どういう話の流れか忘れたが、勉強中に邪法の話題が出たことがある。
人間ってのはさ、とても恐ろしいものだよ、と。
自分の欲望や目的を果たすために、時にはとんでもないことをするからね、と。
前に自分は、先生から世界の一般常識を学んだと書いた。
それを冥界の法律として、これからは冥律と呼ぶよ。
この冥律に叛いた術式こそが邪法なんだね。

例えば、式神という術式の名を聞いた人は多いと思う。
陰陽師が使うので有名な術だね。
色々な呪術があるけどさ、日本ではとても知名度が高いね。
この術ってね、東南アジアでも、けっこうメジャーと言ってた。
国や風土によって、呼び方や形式は変わるけど、本質は同じ。
断っておくけどさ、式神というのは死者の霊を使役する術と考えて貰っていい。
式神を本当の神様と信じ込んでる人は、多いけどね、と。

式神を全て邪法と決め付ける人もいるけど、それは早計だと先生は言ってた。
冥律に従った式神など、むしろ喜ばしい場合だってあると。
けれども、自分の欲望を満たすため、あえて冥律を犯して式神を造り出す者もいる。
こういう連中は、本当に救い難い。
冥律を大きく犯した者がどうなるか、その末路を分かっててやるんだから。

例えばさ、童子の形をしている式神の伝承を、読んだ人は多いと思う。
日本の古い式神の話の中で、ときどき陰陽師が童子の式神を使役してるよね。
あれは元々、子供の霊だったんだ。
昔は今と違って、小さな子供が病気や飢えで死ぬなんて珍しく無かったから。
だから式神の元になる、葬式を出せない子供の霊の確保には困らなかったんだ。

しかも霊というのは、小さな子供ほど、その力が大きくなる。
子供というのは、生命力に溢れてるからね。それは霊になっても同じ。
けどさ、今のこのご時勢、子供が命を落とす事が少なくなった。
たとえ事故や何かで命を落としても、大抵の場合は手厚く葬られる。
式神という術式にとっては難しい時代になったけど、社会的にはとても喜ばしい事だね、と。

しかし、世の中には酷い術者達が存在する。
以前、先生は多くの国へ行き、様々な呪術に会ってきた。
それでとある国にて、高齢の名高い術者にお会いした。
そのお方は、今まで多くの子供達の霊を救ってきたと言っていた。
その国は貧しくてね、よく小さな子供がさらわれるんだ。
さらわれた子供達の中には、式神にするために殺される場合もあるらしい。
式神にするための子供の霊が足りないから、自前で調達するってわけなんだ。
他人の家の子供なら心は痛まないからね。

術式的に、時間と条件が揃って殺したら力の強い式神が産まれる、と先生は言ってた。
その為にさらってきた子供を、そんな風に殺してしまう、と。
そして殺された子供の霊は、強引に式神として縛り付けられてしまう。
死んでしまっても子供達は自由になれず、術者の言いなりになるしかない。
その力を利用されて、欲望を満たす手段として利用される、と。

だから、あの国に観光へ行く時は、子供を連れて行ってはいけない。
親元から離されて殺されるだけではなく、その霊はいつまでも救われないのだから、と。
しかし運良く助け出される式神の子供達もいる。
そんな子供の霊の多くを、その名高い術者が救ってきたんだね。
悪い人達に親元から離され殺された深い悲しみを、そのお方は癒してくれる、と。
そうして癒された子供達は、ようやくあの世へ行くことができる。

そして、こんな非道を繰り返す術者はどうなるか?
それは冥律を犯すことに他ならない、まさしく邪法であると先生は言ってた。
子供達の霊を多く救った名高い術者は、安らかな世界が待ち受けている。
つまり、長寿で居られるんだね、と。

子供達の命を欲望を満たす為に殺した術者には、恐ろしい結末が近づいてくる。
つまり、それだけ冥律を犯した者達は早死にする、と。
先生が言うには、50歳を迎えず死んでしまうそうだ。
それだけの術式を10年、20年と修行して折角身に着けたのに。
後先を考えず、刹那的な快楽を求めてしまうんだ、と。

話の最後、そんな冥律を犯した人達は死後どうなると思う?と先生は聞いてきた。
地獄行きじゃないの、と答えた当時の俺を先生は笑った。
そうだね、閻魔様に堂々と胸を張って会えるよう、正しく生きないとね、と。

師事

今の自分は地元を離れた大学に通っていてね、勉強は中断してる。
色々有って最近は会ってないけど、先生は今も元気だと思うよ。

先生が占いを教えはじめてからさ、何か変だな、と思う時があった。
当然、当時の俺は、占いを教えて貰うなんて初めてだったし。
けどさ、占術に関する有料セミナーとかって、けっこうネットなんかで見かけるよね?
おそらく、あんなセミナーでは絶対教えそうにないことを教えられたんだ。
占いを極めるには、占い以外にも精通しなくてはいけない事がある、とね。
先生は、その辺りの基礎も含めて、俺に教えてたんだ。

例えばさ、人殺しは、してはいけないことだよね。
じゃあ、どうして人殺しをしてはいけないのか、って聞かれたら何て答える?
法律で罰せられるからか、世間から冷たい目で見られるからか?
じゃ、誰にも知られず、証拠も残さなければ良いのか?

そうじゃない、と先生は言った。
人間社会のではない、この世界の法律がある、と。
正確には、この世もあの世も含めた、決まりや法則があるんだね。
その点から、殺人は許されない、非常に罪が重い行為なんだ。
人間社会のみの一般常識でなく、世界全体の一般常識っていうのかな。
この事をよく知らずに占いをしてたら、悪いことが降りかかってくるのに気付かない、と。

しかしさ、現実に日本だって、占いしてる人はたくさんいるよね。
テレビとかにも、たくさん出てくる人がいるし。
すると先生はさ、そんな人達でも知らないうちに、危険な目に遭ってると言った。
それで、ある一定レベル以上の占いだと、特に危険になると話してくれた。

例えば、紫微斗数という占いがあるんだね。
台湾ならともかく、日本でそこまでのレベルに達した人は、一人しか知らない、と。
これはさ、本当に数え切れない程の、場数を踏んだ人だけ到達できる境地だ、と。
そういう人達はさ、ある時、あぁ、命理とはこういう事なのか、と気付くんだ。
その領域に踏み込めた人達は、途端に多くの物が見えてくる。
けれども、それは同時に、非常に危ない事だと言ってた。

以前、先生は、とある人の命運を観に行ったことがあるんだ。
その帰り道、電車に乗ってると、向こうの車両から何かが迫ってくる。
それはさ、先生が鑑定した人に取り憑いていたモノだった。
結局、先生は追いつかれて憑かれてしまった。
それが何度か重なったせいか、先生はあまり顔色が良くなかったんだね。

それで、なぜ追いかけてきたか?
追いかけられないようにするには、どうするか?
その為の一般常識も含めて、俺に学ばせていたんだね。
とある決まりや法則から、追いかけられる理由が分かってくるから。
まぁ、先生の場合は、かなりレベルの高い人に限っての話。

しかし実際は、そこまでのレベルでなくても、ある程度の危険は伴ってくると。。
占いを実行すると、先生ほどじゃないけど、それなりに危険は生じてくる、とね。
だから先生は、占いを勉強して身に付けても、軽々しく使っちゃいけないと言った。

なら、なんで先生は使っちゃいけない占いを、俺にそこまで勉強させたのか?
先生はさ、占いに関しては、とてつもなく内容の濃い勉強を俺にさせた。
例えば紫微斗数の勉強内容も、その辺の日本のセミナー講師が裸足で逃げ出すくらい。

なんせさ、先生は俺に命盤を書かせない方法で学ばせていた。
頭の中だけで、100以上の星の配置をイメージするよう、命令していた。
しかも、その頭の中で星を飛ばせ、と。
流派によってはさ、輝度の低い星は無視するんだが、それでは精度が落ちると言ってた。
ガンプラはくれたけど、小学生に酷い要求をする先生だったよ。

まぁ、つまり、そこまで勉強させておいて実は使えないんじゃ、げんなりだね。
すると、先生は言ってた。
別に紫微斗数を勉強させるのが、目的じゃないって。
次に八字(ぱーつー)を勉強して貰うけど、それも本当の目的じゃない、と。
これらはみんな、次の段階の為の基礎勉強に過ぎない、と言ってた。
一つ上の段階へ進めば、内容はそれだけ高度になるからって。
今は基礎だけど、その辺の占いの先生以上にはなって貰いたいね、という酷い基礎勉強だった。

ただ、先生は妙なことを言ってた。
仮に紫微斗数と八字を習得したら第1段階終了。
先生は、全部で5段階のカリキュラムが用意してあると言った。
けれども先生自身、4段階を終了して、最後の5段階目の入り口に立ったに過ぎないって。
うん、ようやく5段階へ続く、入り口を見つけたって話してくれた。

20年以上勉強していて、ようやく見つけることができたって。
先生は40になって、初めてそこへ到達した。
そう言って先生は謙遜してたけどさ、これはこれで考えると凄いよ。
先生は才能が有ったからこそ、40過ぎとはいえ、そこに到達できたと思うから。
実際、一生かけても先生のそのレベルまで到達できる人なんて、殆ど居ないと思うよ。
俺が見るに、日本では第1段階も突破できない人が、先生呼ばわりされてる場合もあるからね。

そういえば、その5段階のカリキュラムについて、面白いことも言ってた。
昔の中国に、とてつもない賢人がいたんだよ、と。
その賢人は、僅か10代で4段階まで完全習得したらしいんだ。
先生と同じレベルに、20歳前に到達してたなんて信じられなかったね。
その時代にも頭の良い人は一杯いたけど、その人物は群を抜いてたと思うよ。

けれど本当に、その賢人が凄いのは、それからだったんだ。
なぜなら、その賢人は30歳前に、その5段階目の学問を自分自身で作り上げたんだから。
つまり、先生が最後の目標と目指している段階の、占術の創始者なんだね。
正確にはさ、30歳前に召抱えられたせいで、それ以上進むのが難しかったらしい。
それまで、ひっそりと暮らして学問を続けていたけど、遂に見つかってしまったんだ。。

本人は、自分自身の占術を大成したかったんじゃないかな。
もし召抱えられなければ、更に凄い占術体系を完成させたと思うよ。
けど、猛烈に頭を下げられたんだろうね。
それだけの大賢人なら、何が何でも配下にしたいって気持ちは分かるけど。
あれから賢人と呼ばれる人物は、数多く歴史に登場したけど、全ての人々は、あの大賢人の背中を追いかけてるに過ぎないって、先生は話してたね。

うん、ここまで読んでくれてありがとう。

要塞

以前、俺が先生と慕っていた人の宝部屋の話。

事の始まりは、今から7年前。
怖いってよりは不思議な話なんで、スレ違いかもしれない。
しかも無駄に長くなりそうなんで面倒な人はスルーしてね。

あの頃の俺は、怖い者知らずの小学生だった。
当時、住んでいた土地は山と田んぼが広がるのんびりした所だったよ。
誰も家に鍵をせずに外出するようなさ、そんな大らかな所ね。

けど俺の場合は飛び跳ねててさ、学校の先生によく注意されたし、親にはよく叱られたのを覚えてるよ。
それで当時、俺は同級生2人とつるんで、色々と問題起こしてた。
万引きこそはしなかったものの、色々とイタズラしては怒られてたよ。

それで本題なんだけど、同じ町内に面白い噂のある家が有った。
その家には離れがあってさ、その離れの二階は倉庫になってるんだ。
そして、その二階にはプラモや玩具が、大量に積まれてるって。
当時はガンプラが流行っててさ、一番欲しい時期だったな。

けど買いに行くには、隣街のショッピングセンターまで行くしか無かった。
なんせ、何も無い田舎町だからね。
それで俺達3人、その離れの家へ忍び込んでみようって話になった。
今思い出すとさ、これって立派な犯罪、本当に当時は怖い物なしだな。

当日、俺達は近くにある空き地に自転車を止めて、目的の離れの家に向かった。
距離にして20メートルくらいかな。
さすがに、自転車をその家の前に停めたままは、マズいからね。
その家に近づいてみると、母屋にも離れにも人の気配は無かった。
それで離れの家の方、ドアが一つあったんで素早く開けて中に。
ドアを開けると、すぐ目の前が階段でさ、そのまま俺達3人、昇っていったんだ。

登りきるとさ、目の前は宝の山!
当時、その2階は、まだ何も無い、建築途中の部屋だったんだ。
なんて言うのかな、後で聞いたら、20年前に1階だけ部屋を作ったんだけど、2階はいつか作るってことで、長いこと放置されてた状態
下も壁も、木が剥き出しでさ、埃が溜まってた。
そんな中に、あるわ、あるわ、ガンプラの山!
正確には、ガンプラ以外のゾイドや玩具や古いプラモもたくさん有ったけど興味無いし。

それより、当時流行ってたガンプラを、3人で奪い合ったりしたよ。
つか、人様の物を奪い合うって、あの頃の俺達どうかしてたな。
結局さ、小学生の腕じゃ、そんなにたくさんの物を持てないし。
それでも一人3個くらい、大きな箱(MGクラス)を運び出して貰っていくことにしたんだ。
あんまりたくさん持っていったらマズイしな。

それで品定めしてるとさ、冷静になって思い出すんだが、その二階には他にも色々と有った。
うん、隅っこの方にさ、大きな、なんていうのかな?
本をしまっておく木の入れ物があったんだ。
しかしガンプラ目当ての俺達は、そんなものを軽く無視してた。
5分くらい品定めして、貰っていく物を3個決め、誰にも見つからず運び出したんだ。

だけどさ、さすがにそんな無茶苦茶なことをすれば、バレるわね。
さっきも言ったけど、ガンプラなんて買える店は無いし、
そんなデカい箱を何個も持ち帰ったら、親だって怪しいと思うに決まってる。
案の定、友達の一人の持ち帰ったガンプラが見つかって、追求された。
どう考えても、そんなにお小遣い持ってるわけもないしな。
それで厳しく追求されて、結局俺達3人がやったのがすぐバレた。
俺は親父に思い切り引っぱたかれたよ。

それで俺達3家族揃って、その家にお詫びに行くことになったんだ。
盗み出したガンプラと、菓子折りを持ってね。

それで客間に通されると、40くらいの男の人がやってきた。
とても物静かな感じで、痩せ気味の人だった。
あまり血色のよくない人だったね。
つまり、あのプラモの山は、この人の持ち物だったんだな。
それで俺達3家族全員、その人に向かって頭を下げて謝罪した。
ガンプラと菓子折りを出して、納得いかないのなら親達は全額弁償すると言った。

けどその人はさ、子供のしたことだから構わないと言ってくれた。
勝手に持ち出したのは良くないけど、謝ってくれたのなら気にしないってね。
しかしさ、その代わりにといって、俺達に質問を始めたんだ。
聞いてきたのは生年月日だった。
そして、それだけでなく、どの時間帯に生まれたかまで詳しく聞くんだ。

するとその人はさ、自分の左手の人差し指から小指までの4本を揃えて、掌を見始めたんだ。
その掌の上で、親指を移動して、なんだけど意味通じるかな?
それで1分くらいかな、その人が掌を見終わった後、俺に声をかけてきたんだ。
ガンプラは返さなくていいから、俺だけ明日からここに通いなさいって。
明日から、夕飯を食べたらここに来て、勉強を教えると。
他の2人もガンプラを返さなくていい、今日はもう帰って良いと。

その時は理不尽だと思ったな。
ガンプラ返さなくて良いのは嬉しかったけど、なんで俺だけ?
その人、実は大学院卒でさ、親は学校の勉強を見てくれると期待してた。
俺は俺で、学校の勉強をさせられるのかとうんざりした。
けど、その人は学校の勉強じゃない、中国語を教えると言った。
なぜガンプラを盗んだ俺が、中国語を勉強することになるのか?
俺も親も全く理解できなかったね。

しかし、その人は、嫌なら無理強いはしないと言ってた。
別に勉強に来なくても、ガンプラは返さなくて良いともね。
まぁ、その場は一応OKの返事を出した。
退屈でつまらなかったなら、一回きりで行かなければ良いと思ってね。
親としてもガンプラ貰ったんだから、一度くらいお付き合いしろ、みたいにね。

その次の日、その人の夕飯がすんで7時くらいから勉強が始まった。
中国語の勉強かー、なんて思ってたが、内容は全然違ってた。
その人は、まぁ、これからは先生と呼ぶけど、最初に先生は4×4マスを紙に描いた。

 □□□□
 □□□□
 □□□□
 □□□□

これは何?と俺が聞くと先生は宇宙だよ、と答えた。
左上の3×3の9マスの外周が8個
これは色々な物事の様子が8通りに分けられるとか、ね。
左から3番目の一番下のマスから、時計回りに12進むと右下の角のマスになるよね。
それは1年に12ヶ月あることを示している、と。
少し高度になると、星の飛ばし方とかね。
つまり、これは知ってる人なら知ってるけど、中国の占いの基礎なんだ。
当時の先生は、俺に占いを教えようとしてたんだ。

先生は若い頃、学生時代に色々な場所に行ってたらしかった。
主に占いの勉強の為に偉い先生に会ったり、本を買いに行ったりね。
それでお金を貯めて台湾に行って、達人に教えて貰ったりしてた。
今思えば、先生の占いの腕前は、とてつもなかった。
テレビに出演してるタレント占い師では、足元にも及ばなかったと思う。

命理、風水、家相、易学、全てに精通してた。
例えば家を見るだけで、どんな人達が住んでるか、どんな生活をしているかまで、正確に見抜いていた。
それは台湾で色々な達人の方に手ほどきして貰ったからだと言ってた。
占いという点では、日本は台湾の足元に及ばないのが口癖だった。

しかし先生が得意なのは、占いだけじゃない気配もあったんだ。
なんていうかさ、占いは表の顔、みたいな感じでね。
台湾で学んできたのは、占いだけじゃ無かったような、俺の勘だけど。
それで勉強も含めて、そんな先生の話も面白かったんで、通い続けた。
まぁ、時々、ガンプラをくれるからって下心もあったしね。

それである時、俺は先生に、あの部屋はお宝だらけだね、と言った。
そんなに凄いお宝を見つけたかい、と先生は聞き返した。
あれだけガンプラがあれば最高じゃん、と答えた。
そんな俺に先生は笑ってたんだけどさ、うん、確かにガンプラもお宝だね、と。
先生一人でお宝独り占め良いなぁ、と言うと、それは違うと言われた。
あそこにあるプラモや玩具は、自分の物じゃない、と。
じゃ、誰のかと聞くと、先生は笑って誤魔化してしまった。
普通の泥棒だったら怒るかもしれないけど、子供達だから許してくれた、と。

先生が許してくれたんでしょ、と聞くとそうじゃなかった。
そう言うと先生は、棚から2つの赤い木片を取り出した。
それはポエという物だと教えてくれた。
三日月を不恰好にしたような形の木、うん、下手な説明だな。
それを投げたら、子供達を許すって、結果が出たらしい。
当時の俺には、何のことかさっぱりだった。

多分、君達だから、この家の敷地内に入ってこれたんだ、と言った。
じゃあ、本当の泥棒が来たらどうなるか、と聞いたら、入れないだろう、と。
この家は見た目は普通だけど、実は要塞だからね、と笑っていた。
塀も無ければ鍵もかけない家なのに、と訳が分からなかった。
そんな生半可な対策じゃないよ、と先生は言った。
例えば、この家で最も守りが堅いのは、あの離れ2階と先生の部屋と言った。
特に、あの2階は厳重に守られている、と。
たとえ世界一の泥棒だろうと、あの2階だけは絶対に破られないと先生は言った。
小学生が簡単に入れる2階なのにね。

すると先生は笑い、普通の泥棒が入れば、壁に囲まれると言った。
そして、泥棒はどれだけ壁を越えても越えても壁が続き、閉じ込められる、と。
俺には、何のことだか、さっぱり分からなかった。
確かに離れ2階は広かったけど、それでも普通の家と同じくらいの広さだ。
しかも壁に囲まれるような仕掛けは、どこにも無かった。
はぁ?と、首をかしげる俺に、先生は最初の勉強で教えたろう、と。
あの4×4マスの図が答えだと言った。
ますます訳の分からない俺に、先生は笑いながら言ったんだ。
勉強すれば、君にも分かる日が来るよ、と。

しかし、今思えば不思議な家だったね。
あの地区ってさ、時々、空き巣が発生するんだよ。
大抵の家は何らかの空き巣の被害に遭ったけど、先生の家だけは無かったんだ。
別にボロボロの家だからとか、お化け屋敷とか、じゃなく普通の家なのに。
それに、よく鳥が集まる家だったな。
あの一帯の集落、電線はそこかしこにあるのに、なぜか先生の家近くの電線に集まってる。
それで色んな鳥の巣なんかも、よく作られてた。

んー、長いだけで意味不明で面白くない話だったね。
しかもあんまり不思議じゃないし、当然怖くも無い。
全部、ワープロで打ってから恥ずかしくなってきた、すまない。

「いっちゃん」

都内で結構有名な幼稚園に居たとき、放し飼いしてる動物が殺される事件があってな。
アヒルや矮鶏の首が折られて放置されるとか、かなり異常だったらしい。
異常者の可能性もあるから、父兄によるパトロールが毎日行われたけど捕まらずその後も何体も殺されて警察沙汰にもなった。

しばらくして、放し飼いになってる鳥の雛の首を折ってる犯人が先生に捕まったんだけど、それオレだったらしいんだ。
当時の記憶がほとんど無いから、以下も親から聞いた話なんだが

捕まった時の言動がおかしくて
先生が泣きながら、何でこんなことするの!って叱った時に
「いっちゃんがしろっていったの」 「みんな楽しくなるの」
とかなんとか、意味不明なことを発言してたとのこと。

その「いっちゃん」って誰なの!と問いただされたときに、親や先生を幼稚園の離れに連れて行き、離れ裏の藪を指差して、「その子だよ」と言ったらしい。
もちろん、そこには誰も居らずみんな気味悪がってた。

探検隊ごっこ

二年前に体験した話、この話の中では俺が直接霊を見たって訳でもないから過度の期待はしないでくれ。
ただ俺にとっては「死ぬ」ほど怖かった体験。
時期は冬、大晦日前辺りに実家に帰省した時のこと、当時大学に入学したばっかの俺は久々に家に帰るって事だったから気持ちが高ぶってたかな。
んで帰省してのんびりと過ごしてたら、中学からの悪友から「どっか出かけんか?」という内容の電話がきたんだ。
俺も久しぶりに地元の友達に会えるってことで意気揚々と誘いに乗ったんだ。

メンツとしてはA(リーダー格、霊とは全く縁もゆかりもないような能天気)B(親友、こいつも能天気だが霊感があり様々な経験がある)C(特に普通)俺の4人。
どっか行くといっても相変わらずのド田舎、特に行くところもないから近くの町まで車を一台だして適当に飯食ったり、AV屋をひやかしたり、しょぼいゲーセンに行ったくらいかな。

んで出す車はAとBしか車を所持してなかったから、ジャンケンで車を出すのはBに決まったんだ。
んで、当然のごとくやることがすぐになくなる俺たち、基本みんな無計画ノーフューチャー野郎だから仕方がないと言えば仕方がないw
すると能天気なアホのAがいきなり「あれやろうぜ!」といいだす。
その遊びとは中学時代、周りに山、森、田んぼ位しかなかった俺たちがしていた遊び「藤岡弘探検隊ごっこ」である。

内容としては何もない地元で木の棒を自分達で倒しその方向に山があろうが、川があろうが、民家の庭があろうがひたすら突き進むという内容である。
くだらねーーーw
でも懐かしさにテンションがあがった俺はその遊びに賛同するのであった。
でも車での移動だったから少しルールを変えて助手席に座ってるAと運転席のBが車を走らせて交差点や、別れ道に差しかかったらジャンケンをし、Aが勝ったら右折、Bが勝ったら左折、あいこで直進するといった内容に決まった。

そしていざスタート、初めは同じ場所を何度も回ったり、間違って人ん家の駐車場に入ったりなどグダグダな感じだったけどメンバーみんなの士気は高くAとBは「隊長殿!」、「どうした?!未確認生物でも見つけたのか?!」とか全く下らん会話をしていたかなw
そして1時間くらいこのやりとりをしているうちに俺はだんだんと周りの風景から民家が無くなっていき、外灯も減っていることに気づきはじめた・・。

それからだんだんと道の数は減りジャンケンをする回数も最終的には一本道となり無くなってしまった。
少しずつ景色が高くなる感じ、どうやら山の中に入っているらしく、道も狭く峠道のようになってきた。
それでも俺たちはこの変化に冒険らしくなってきたとテンションがあがってしまうのであった。
ふと外の様子が気になった俺は窓から顔を出すと微かに聴こえる水の音、吸い込まれるような暗闇、どうやら湖?またはダム?に沿って車が走っているのだとわかった。
でもまだ俺たちには恐怖のような感情はなく特に普段通りであった。

だけどその時はいきなり来た。一本道の先に見えた車一台なんとか通れるくらいの外灯も何もないレンガ造りのトンネル。
そのトンネルを見た瞬間、車内はいきなり沈黙に包まれ、俺は死んでもこの中に入りたくないと思った上に、寒気と吐き気に襲われた。
そして車はトンネルの中に入る、その時のAの様子はずっとうつむき、霊感のあるBは必死にハンドルを握り、ただ前だけを真剣に睨み、Cは俺の隣でうずくまっていた。
たかだか10秒程度の出来事であったが俺はとても長い体感時間を感じた。

トンネルを出てBはすぐ「この山今すぐおりるぞ」と少し前までのふざけたノリは捨てて言ってきたのであった。
もちろん俺はそれに賛同しCも賛同、ところがAから返事がなく助手席を見ると眠っているようであった。
それからしばらく山を下っている最中にAは寝言のように「○○(俺の名前)気をつけろよ・・・」といったり、「二度と・・来ちゃダメだ」とボソボソと言葉を発していた。
そしてついに民家の明かりが見え俺たちはなんとか山から出ることに成功した。
すると山から下りた瞬間にAがいきなり目覚め俺たちに言った。

ここからはAの話の内容を箇条書きとします。
・トンネルに入った瞬間、視界がブラックアウト
・風景が夏の情景に変わる※当時は冬であった
・そこに映っていたのは湖にいる男女の様子
・映像は映画のような感じであり、女性メインにカメラが映っていた
・その女性の服は赤い服?ワンピース?
・A個人の感覚としてはとても幸せなオーラ?というか暖かいものを感じたらしい
・コマ送りのように女性がだんだんとズーム、最終的に女性の口がドアップで映り「ニヤァ・・」と口元を歪めた瞬間に意識がもどる。
・俺に気をつけろよなどと言葉をかけた記憶は一切ない

このAの話を聞いた途端、メンバー全員がヤバいことに巻き込まれたことに気づき俺含みみんな動揺が隠しきれなくなったかな。
とりあえず落ち着こうということでコンビニに行き、Bの提案でみんなに塩を少し撒いたんだ、俺は怖くてしょうがなくて携帯を使ってそのトンネルについて調べたんだ。
いくら調べても情報がない・・諦めかけてたらかなり下がった所にその場所の情報があった。
内容を読んでここは地元民だけが知るマイナーなスポットであることが判明、そのトンネルに入るといきなり車が止まって霊に追いかけられるらしい。

そして霊の特徴を読んだ瞬間、全身にいやな寒気が走った。

「赤い服の女」

どうやらAの意識に映った映像の人物と同じらしい・・・・・
このあとみんな各自別れ俺はまた地元を離れ生活している。

特に他のメンツも日常生活に支障はないようである。

ふと今思う、あのトンネルの出口は急カーブ+目の前は崖+下はダムであり、もし初めにジャンケンで運転手がBではなくAであったら・・・

そう思うといまだに寒気がとまらない。

そして無意識になぜAが俺にだけ気をつけろと声をかけたのか・・?
その出来事以降、俺はたまに霊らしきものが見えるようになってしまった。

少し前に生首と目があった。
気にはしないようにしているつもりだけどね

老人の話

今からもう十数年前、私が仕事でアメリカへ行ったときに聞いた話をします。
(具体的な内容は個人が特定されそうなので書けません、ご了承ください)

当時、あるアメリカの企業と日本の企業が共同でとある実験施設を作る計画が立ち上がり、私の会社はそこに大きな機械をいくつも納入する事になったため、私を含め会社の10名ほどが現地の視察や今後の打ち合わせをするために向かう事になった。
場所はアメリカ中部の砂漠地帯、かなりの田舎にある場所で、周囲には寂れた町が一つあるだけだった。

その町に到着して3日ほどしたある日、丁度私と上司が打ち合わせするはずだった人がこちらに来れなくなり、上司から先に帰っていても良いと言われ、私は一足先に宿泊先のモーテルに帰ることにした。
先ほども書いたようにそこは辺鄙なアメリカの田舎町、モーテルにいてもする事が無い私は、暇をもてあまし特にあても無く町中をブラブラする事にした。が、やはり暇で目的もないため、近場にあったお酒の飲めそうなレストランに入る事にした。

そこはどうもレストランというより酒がメインだったようで、時間が早い事もあり自分以外には東洋系の老人が一人いるだけだった。
テーブルにつき食べ物やビールを注文していると、先客の老人が「あなたは日本人か?」と尋ねて来た。
私が「…そうですが」と答えると、老人は「やっぱり、もしお暇でしたら少しお話をしませんか?」
と言ってきた。
私は、断る理由もなく「はい」と答えた。
その時は、私は単に老人のとりとめのない世間話や昔話を聞くだけだと思っていた。

が、実際には違った。
老人の話は非常に重く、恐ろしく、おぞましい、老人の過去にまつわる話だった。
老人は1960年代後半にアメリカへ移住してきた移民一世だった。元は中国のとある省の生まれらしい。
老人はある事件をきっかけになけなしの蓄えを全て賄賂につぎ込んで中国を脱出し、着の身着のままアメリカへと移民してきた人だった。

その事件とは、1966年から中国に吹き荒れた文化大革命に関係するものだった。
文革当時、老人は結婚したばかりの奥さんとまだ小さな子供の3人で小さな靴屋を経営していたらしい。
老人の話によると、文革が起きたといっても都市部で小さな靴屋を経営している老人には当初殆ど影響が無く、町中でプロパガンダの広告や街宣車を見かけても何か遠くで起きている出来事のようにしか感じなかったとか。

しかし、「反革命的」という言葉を聴くようになってから自分の周囲の何かがおかしくなり始めたらしい。
最初は、近所にあったお寺の僧侶が連行されたという話だった。
その僧侶は結局帰ってこなかったという。
僧侶が連行されたのを皮切りに、近所の教師や医者や金持ち、政府に批判的な人などが次々と「連行」されていなくなり始めた、そして、ついにはそれらとは全く関係の無い一般人も次々と「連行」され始めた。

老人には何が起きているのかわからず、ただただ恐ろしく自分達の身にこの不幸が降りかからないよう身を潜めるしかなかったという。
そんなある日、老人は店に来た客からある噂を聞いた、「どうも連行された人達は子供たちに密告された結果らしい、子供たちは自分の親や学校の教師ですら躊躇無く“密告”している」と。

老人には信じられなかった、子供たちの何人かは老人も知っていて親と共に自分の店に靴を買いに来たこともある、そんなごく普通の子供たちが、自分の親や教師を密告している、あまりにも現実離れしていた。
しかし、老人の町にも「紅衛兵」と呼ばれる集団がやってくると老人もその事実を信じざるを得なくなったらしい。

そんなある日、老人が国を捨てる決定的な出来事が起きた。
その日、共産党からの命令で老人はある学校に生徒用の靴を納入しに行く事になった。
老人が荷車に靴を載せて学校に着くと、学校の裏庭から何かを調理する良い臭いがしてきた。臭いが気になった老人は、荷物を係りの人に渡すと何気に裏庭に回ってみたのだという。そして、そこで老人は信じられない光景を目にした。

そこにあったのは、うずたかく積み上げられた死体と、嬉しそうにそれらを解体し調理する子供たちの姿と、無表情に子供たちにあれこれと指示を出す地元の共産党員の姿だった。
死体の中には、老人のよく知っている医者の姿もあったらしい。
(実際にはかなり生々しく、具体的に“調理の様子”が語られたのですが、あまりにも酷い内容なのでカットします)

老人はその場を離れると、その場では何事も無かったかのように振る舞い学校から逃げ出した。
そして、人気の無いところに行くと胃液しかでなくなるまで吐き続けた。老人は今でもあの光景を夢に見て夜中に目が覚めるのだという。
その夜、家に帰ると老人はなけなしの蓄えをかき集め、奥さんには殆ど事情も話さず夜逃げの準備をさせ、その日の晩のうちに家族で町から逃げ出した。
その後、老人は仕事のツテや昔アメリカに移民した親戚などを頼り、貨物船の船長に賄賂を渡して密航し、タイ経由でアメリカに移民したのだという。
そして、その後も共産党に怯えながらアメリカの田舎でひっそりと暮らしてきたらしい。

恐ろしい話だった。
文化大革命がかなり酷い事件だったとは知っていたが、ここまでとは知らなかった私は、老人の話をただただ聞くしかできなかった。
老人は最後にこう言った。
「当時人間を解体し食っていた子供たちは今どうなっていると思う?」と。
私が「わからないです」と答えた。すると老人は、その後ある程度外国との手紙のやり取りなどが自由になり、中国に残っている知人などから聞いた話によるとと前置きし、「大半は紅衛兵となりその後地方へ追放されたらしいが、共産党に従順だった子供たちは出世を重ね、今は共産党の幹部になっている」そして、こういう事は当時中国全土で起きていたらしいのだという。

老人は続けた「当時の子供たちは今は40代後半から50代、いずれ共産党の幹部として国を動かす立場になるだろう、人としての第一線を超えてしまったやつらが国を動かす事になるのだ」と。
老人は立ち上がると去り際にこういった「あいつらを信じてはいけない、あいつらは悪魔だ、日本人ならこの事は決して忘れてはいけない」と。

以上、これが当時私が老人から聞いた話の全てです。

シジマノカミ

自分からしたら洒落にならないくらい怖い事があった。
3年くらい前だったか、実家が老朽化したから解体した時に業者から「なんか、床下から出てきたんですが・・・」と、筒状の箱を渡された。
その晩、家族で、なんだろうね?って箱を調べる事になったんだが 奇怪という言葉がお似合いな箱で円の直径は13センチ 長さは22センチ、桐で作られていてメガネケースの様だった。
箱には和紙が貼られていて「シジマノカミ」と書かれていた。

しじま?なんだろう・・・というかこの箱どうやって開けるんだ?
その箱がまったく不可解なのは蓋らしきものがどうすれば開くのか解らない事。
だが蝶番の金具らしきものはあるのだ。
家族で20分くらい話してたら妹が、「これ、ただの溝なんじゃない?」と言った。
全員がえ?っと思って箱の溝に定規を通して見ると確かに4ミリほどで引っかかる。
蓋だとおもった隙間はフェイクの溝だったのだ。

家族全員、開かないわけだ。と諦めちゃってその晩はそれまでにした。

翌日俺は箱を調べるため大学で民俗学とか研究してるAという友達の家まで持ち寄った
Aは箱に興味身心で、手にとってちょっと見ると「これさ、蝶番ばらしていい?」って聞いてきた。
俺は了承すると、机から工具を取り出してガチャガチャばらし始めたんだが、片方の蝶番が外れると穴が開いていた。1ミリの小さい穴が。
俺は「なんだそれ」ってAに聞くと、Aは「たぶん、これが本物の蓋だよ」とドヤ顔で言う。
Aはもう片方の蝶番も外すと、穴に細い六角棒レンチを押しこんだ。
そしたら、カコって乾いた軽い音がして、箱が開いた。

どういう仕組みで開いたのかはちょっと説明しにくいんだが、それよりも驚いたのは中身だった。
赤い木綿布が入っていて、何かが包まれているようだった。
俺とAが恐る恐る開けてみると、包まれていたのは鏡張りの長方形の箱。
「また箱か。」と俺が言うとAは青ざめていた「これただの箱じゃねえわ。」と呟いて手を震わせながら続けた。
「これ・・・棺だよ。」
え!?棺?どういう事だよ?と俺が言う間もなくAは「どうする?開けるか?」と聞いてきた。
俺は開けたらやばいんじゃないか、ひょっとして呪われちまうのか?という怖さと、ここまできたら見ない訳にはいかないという好奇心ですこしたじろいだ。

「・・・・あけよう。」と俺が言うと少しの間沈黙が続いて「わかった。」とAが言った。
異様な雰囲気の中、小さな棺を開ける・・・  すると大量の髪の毛らしきものが入っていた。
箱に書いてあったシジマノ神ってのは「シジマ」という人の髪という事だろうか?
だったらなんでこんな厳重にしてあるんだろうか?
色んな事を語り合ったがどれも憶測を出る事はなかった。
「ちょっと調べるからこれ、預かっていいか?」とAが神妙に言ってきた。おれは快諾してその日は帰った。

それからしばらくして、Aから電話があった。
「これちょっとヤバいのかもしんねぇわ。」
俺はそれからAが話す事を固唾を飲んで聞く。
Aが言うにはシジマノカミとはシジマという人の髪ではなくシジマの神という事らしい。
シジマとはネットで調べれば出てくるが、口を閉じて黙ってるという意味。
つまり口を開かぬ神。そんな神がいるのか、いたらどこで祭られているのか、箱が発見されたのは四国だが、四国の歴史を調べてもなかなかシジマノ神などというモノは出てこないらしい。
俺は口を閉じて黙っているという響きに、容易に開かない箱を連想させた。

Aが話を続ける。

「俺一人ではちょっとお手上げだわ 明日、知り合いの神社の神主さんに見てもらうように頼んだからお前も付いてきてくれ」と頼まれる。
ここまで来たんだ 行くしかない。

翌日、Aと共にAの知り合いの神社へ向かった。
神主さんは箱を見ると顔を渋らせて「うーん・・・こりゃあ・・」と呟く。
これなんだかわかりませんか?と俺が恐る恐る尋ねると、神主さんは、
「いやぁ・・・ワシはわからんけんど・・こりゃあ、封印されとるがぁやな。」
と、土佐弁で話し始めた。
「この箱はな、たぶん物部(ものべ)の陰陽師のもんやないやろうか。ワシの仮説やけど、この中に入っちょったがは 妖怪の類で人間やない。なんでおんしの家にあったかは解らん。けんど、おんしゃあらは悪いもんの封印を解いたのかもしれん。」

俺たちは身体の震えが止まらなかった。
Aが「どうしたらいいんですか?」と神主さんに詰め寄ると、「知らん」と一蹴された。
そして、「気は進まんが、ワシが預かっちゃろう。なんか分かったら知らせる。」と言い、箱は神主さんに保管されることとなった。

数日してからAに連絡が届く事になる。
Aからの話によると、シジマノカミはその昔、土佐の山にいた化物で、巨大な貝に毛が生えた容姿だったそうだ。
台風の時期になると暴れ出すため、当時の物部村に伝わる陰陽道「いざなぎ流」に封印されたそうだ。

それがどうして実家にあったのか、その経緯は分からない。

あれから数年経つが、俺とAに何も悪い事は起っていない。

神主さんはつづけてこう言ったそうだ。
「シジマノ神は山の奥深くに帰ったと思う。この変わり果てた現代でなにか悪さをするとも到底思えないが・・・」

あの箱は今でも神主さんが管理している。

動画撮影

数年前まで恐怖画像・動画まとめサイトみたいなのやってた人です。
特定勘弁なw

でまあそんなサイトやってると、自分たちオリジナルのマジな動画撮りたくなるじゃないですか。
え?ならない?ですよねー。
まあ相方がアウトドア派なので、そういう活動もちょぼちょぼやってたんです。
有名心霊スポットでカメラ回したりね。
しかし世の中そんなに甘くない。

確かにオーブみたいなのとか変な音がするとか程度のは撮れた。
でもサイトに載せるほどでもなかった。
つかネットにある強烈な恐怖動画ってほとんどCGじゃねえのって思ったほど、いえ今でも思います。
でもね、そんなへっぽこ素人撮影隊でも、一つぐらいはマジな話があるんですよ。
もう何年も経ったし解禁かな、というわけで書かせてもらいます。

撮影隊は、大体相方とおれと不良社会人の二人でわいわいやってた。
不良社会人の一人S君は自称だけど霊感あり。
その日は有名スポットではなく、サイトの掲示板で「結構やばい」と噂になってる場所で撮影することに。
書き込みでは霊を見たとか書いてあり、「あんなにはっきり見えたのははじめて」などと書いていたので、ビデオ撮影しやすいかな、なんて単純な理由だった。

車で数時間かかるので休日の朝出発。
昼飯食ったりしてついたのは夕方。霊感のあるS君は怖がっていたが、いつものことなのでスルー。
適当に周囲の雑木林を撮影。
そこで最初のトラブル発生。ビデオカメラ壊れる。

よくあること。ではないが想定内なので予備のビデオカメラを出す。
一応保存してあった動画を確認して一堂びびる。
壊れた方のカメラで取っていたような映像が、なぜか別のこのカメラに保存されている。
怖いというより手品を見せられた気分だった。

でもこれをアップしても誰も怖がらないだろ。映ってるのはただの雑木林の風景なんだから。
どうしようかと言っていると、車の中からS君が「カメラ直ったよ」と言ってきた。
別に彼にそんな技術はないのだが、「いじってたら直った」とのこと。
カメラ二台もって再アタック。

で、八時くらいだったと思う。田舎の八時は真っ暗だ。明かりも近くにないし、全員懐中電灯装備。
映像チェックしてると、相方が妙な声をあげた。
二台のカメラで交互に写していたんだが、一台のカメラでふざけて相方をフレームに入れて映してたんだよ。
だけど相方の姿が映ってない、と。
もしかしたら、ともう一台の方のカメラを見ると、相方が映っている。
相方びびる。

「でもこのカメラ、撮ってたの俺なんだよ」
書き忘れていたが、カメラ二台は別機種。間違えることはない。
ただしまあ、勘違いということはあるだろう。
そこにいた四人が全員まったく同じ勘違いをすることがありえるなら。
誰かがいたずらでメモリーを入れ替えたのかもしれない。誰もそんな余裕はなかったはずだが。

でだな。いつもは役に立たないS君なんだが、相方が映ってない方のカメラを持って、
「こっちで撮った方がいい」
と言い出した。
「このカメラの方が映りそうな気がする」
と。
再度撮影開始。撮影者は相方と不良社会人のS君じゃない方。
しかし空振り。はじめからS君には誰も期待してなかったので、っていうかもう疲れていたので、帰ろうか、という話に。

家に帰って相方んちで映像検証。
S君主導のもと行われた最後の映像を見ようとする。
しかし別の映像が映る。
それは、ツールボックスの上に置かれたカメラが、もう一個のカメラを持って歩いていく映像だった。

また映像が入れ替わっている。誰かがメモリーを入れ替えたのか。
悪寒を感じながらも見続ける。
暗いので服装で誰かと判断できるレベル。
やがて撮影隊二人が帰ってくる。
でもな、人影が三つあるんだよ。たぼたぼのポンチョみたいなのを着た、明らかに俺らの仲間じゃない影が映っている。
相方は最後にと車の周囲を撮影する。
ポンチョは相方のカメラに映りたいかのように近づき、相方の体と重なって、すりぬけようとした瞬間、消えた。
ライトが動いて明るいところが暗くなったかのように。
これはびびるだろ?

で、じゃあその相方が撮っていた映像はどうなっている? って思うじゃん。
つまりツールボックスの上に置いていた方のカメラには、その時何が映っているのか。
早送りする俺の手は震えてた。まじびびってた。
でもな、映像の最後の方は、真っ暗なんだ。
拍子抜けして見ていると、画面の隅の方で何かが動いた気がした。
隅から見たこともない浮浪者みたいな男の顔がアップになった。
そしてレンズを覗くかのように目がアップになり、さらにアップになり。カメラが眼球の中に飲み込まれた。
つまり映像としてはまた真っ暗になった。

いやもう大騒ぎだよ。やったぜと。これで怪奇系サイトのトップに立てるぜと。
でもな。カメラからメモリー抜いてPCにデータを映したら、消えてたんだ。
いや他の映像は残っているんだが、その男の横からの全体映像と、アップの映像が、消えてた。
終了。

後日談。
S君に「それはやばいやばすぎ」と言われたのでお祓いしてもらった。お祓いって高いのな。
で、そういった遊びは二度とやるなと言われて、(サイトは続けてたけど)撮影隊は解散した。
四人はまあ女にふられたりとかはあるが何事もなく暮らしている。相方は結婚しパパになった。
なのでもう時効かな、と思って書いてみました。

いまじょさん

数年前、大学生のころ、同じゼミにに奄美大島出身のやつがいた。
ゼミ合宿の時にそいつと俺と何人かで酒飲みながら怪談なんかを嗜んでいた。
で、奄美大島には有名な「いまじょ」と言う怪談があるのだが、俺はそいつにその「いまじょ」の話をふって見た。

しかし、そいつは、なにそれ?そんな話聞いたことないよ?てな感じだった。
俺は、まあ別に地元の人間だからって必ずしもしってるわけじゃねーのかとか思って、俺が知ってる「いまじょ」の話をその場でした。
ちなみに、これがどういう話かと簡単にいうと。

昔、奄美大島の古仁屋町に金持ちの家で働くヤンチュ(下女のようなもの)に「いまじょ」という娘がいてかなり美人だったという。
その家の主人もいまじょの美しさに惹かれていて、ある日むりやり手篭めにしてそのまま囲いものにしていた。
そのことに嫉妬したその家のおかみは、ある日主人の留守中にいまじょさんを納屋に呼び出してそのまま殺してしまった。
一方的に手篭めにされて、勝手に嫉妬で殺されたいまじょさんは怨霊となりこの男の家を祟り、程なくしてその家に連なるものは全員死に絶えたと言う、そういうお話。

なんか地方の言い伝えによく有るような話です。

で、その合宿の時に旅行いきてーなーとか話してたら、そいつが奄美大島に来るんだったら家に泊めてやるよ的な事を申し出てくれた。
で、そんなこともあってその年の夏休みに俺とそいつと、別の友達ひとりと一緒に奄美大島に遊びにいくことにした。

まあ、ただで泊めてもらうのもなんなので、東京土産に地元の酒(そいつのパパンはお酒好きだと聞いたので)やらなんやら持って行ったらかなり歓迎してもらえて、楽しい離島バカンスをエンジョイ&超エキサイティングしていた。

そんなある晩、そいつのパパンと俺らでお酒なんぞ飲んでる時に、例の「いまじょ」さんの話について聞いてみた。
話し相手の俺らいるせいか、かなりお酒が進んで上機嫌になってるそいつのパパンは快く話してくれた。
まあ、大体上に書いた話のとおりなのだがディテールがかなりエグイ。

その当時のヤンチュと言うのはかなり身分が低く、被差別的な扱いを受けていたと言うこと。
いまじょさんは殺される時に子供を身ごもっていたこと。
おかみはいまじょさんを殺すまでに納屋に数日間幽閉して男衆に輪姦させたり、色々な拷問を加えた末に、最後は女性器に焼いた火箸を差し込んでて殺したと言うこと。
また、いまじょさんはただ単に怨霊と化したわけではなく、いまじょさんの変わり果てた死体を引き取ったいまじょさんの家族が嘆き悲しみ、いまじょさんの死体とおなかの子供を(埋葬せずに)使ってその家に呪いをかけたと言うこと。
呪いが強すぎたせいか、その家の人間だけではなくいまじょさんの一族まで死に絶えたということ。

なんかそういう話を嬉々としてしゃべるパパンの声に起こされたのか、パパンのママン、つまり同じゼミのそいつのグランマが起きてきた。
そしたら、すごい剣幕、方言丸出しでパパンを叱りはじめんの。
パパンは昔東京に住んでた出戻り組みで、俺らと話す時は標準語で話してくれたんだけど、グランマとグランマにおこられてる時のパパンは方言ばりばりで何言ってかわかんなかったよ。

でまあ、聞き出したおれらだし、パパンなんか泣きそうになってるし、グランマにみんなで謝ってとりなしてその日は解散して寝た。
まあ、父親が祖母に怒られて泣きそうになってる様を友人に見られたそいつも泣きそうな顔してたけどね!

で、次の日俺らのせいで怒られちゃってマジサーセン的な事をそいつのパパンのところに言いに言ったら。
年寄り連中はいまじょさんの呪いはマジで信じていて、いまじょさんの話をするといまじょさんが現れて、祟られると思っていると言うことを聞いた。
パパンが子供の頃は、何か変な事件とかがあるといまじょさんのしわざだとか、どこそこの誰かがいまじょさんに祟り殺されたとかそういう話を聞いたこともあるらしい。
そいつが「いまじょ」さんの話を知らなかったのは、話がエグイのと、グランマに怒られるので教えなかったとの事。

ひどいいびきをかく相手

旅人が着いた頃、その町のホテルはどこも満室になっていた。
最後のホテルで彼が支配人に掛け合っている、
「部屋ぐらいどこかにあるんだろう....じゃあ、ベッドだけでもいい。ほんとに疲れ切ってるんだ。どこでもいいんだ」。

「確かにダブルの部屋が一部屋ございます。お客様がお一人お入りなのですが、お話しすれば相部屋に同意してもらえるでしょう。
でも正直申し上げましてして、そのお客様はいびきがひどくて、この一週間ずっと隣の部屋から苦情が出ております。これで本当にお客様によろしいかどうか...」

「それでいいよ。そこに泊めてもらうよ」と、疲れ切った旅人が答えた。

次の日の朝、旅人が晴れ晴れとした表情で下りてきた。
支配人が昨晩の様子を訪ねる。「ぐっすり眠れたよ。」と答える旅人。

驚いた支配人が続けて、「ひどいいびきをかく相手といて、ぐっすり眠れたんですか?」
「ああ、いびきはまったく聞かれなかったからね。」
「一体どうやって...?」

「僕が部屋に入ったとき、彼はもう寝ようとしていたんだ。
だからそばに寄って、『お休み、ハニー♪』って言いながらほっぺたにキスしてやったんだよ。
そしたら、あいつったら飛び起きて、そのまま寝ずに徹夜で、僕を見張ってた、というわけさ」
プロフィール

ナイア

Author:ナイア
どこかで見たことのある話を載せていきます。

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